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いのちの十字路

2025.04.14 公開 ポスト

8050問題、老老介護、認知症、ヤングケアラー…。『いのちの十字路』で描かれる介護の現場。

【再掲】第二章 8050問題 - 認知症の母の介護と仕事の両立に悩む、一人息子。南杏子

吉永小百合さん主演映画『いのちの停車場』の続編小説『いのちの十字路』は、在宅での介護をテーマにした感動の連作長編です。主人公は、映画で松坂桃李さんが演じた、野呂誠二。医師国家試験に合格して金沢の「まほろば診療所」に戻ってきた彼が、さまざまな介護の現場で奮闘します。
8050問題、老老介護、認知症、ヤングケアラー……。文庫化を記念して、本作で綴られる介護の現場のリアルを、登場人物の言葉とともに、ご紹介していきます。

認知症の母の介護と仕事の両立に悩む、一人息子。

「第二章    ゴリの家」
認知症の母(80代)の不眠や妄言に悩まされ、仕事に支障をきたす息子(50代)。

【あらすじ】
「まほろば診療所」を訪れた七栄さんと哲也さん親子。トラックドライバーをしている哲也さんは、認知症の母からの頻繁な電話や不眠の対応で仕事が手に付かない。なんとか介護施設に入れられるよう、野呂たちも協力するのだが、介護認定は1でグレードとしては低い。七栄さんが、がんとして施設に入ることを拒否する中で、哲也さんの苛立ちは増してゆく。そして、ついに“事件”が起きてしまい……。

息子・哲也
「ただ私としては、おふくろが、もうちょっと眠ってくれれば助かります。夜中にトイレで何度も起こされますので。薬でも使って……」
「なあ母ちゃん、頼んから施設に行ってや。このままやと、二人ともダメになってしまうがいね……」

白石先生
「大事なことを確認しなきゃって思うのは、正常な心の動きです。でも七栄さんは、短期の記憶が障害されている。そのせいで常に不安に駆られ、何度も確かめてしまう状態になっている。七栄さんにとって息子さんとの電話は命綱だから、つながらないとさらに不安になって、ますますかけてしまうでしょうね。お金についても、自分の生活を守るもの、命にかかわるものという意識が働くから、誰にとっても不安と結びつきやすい。いつでも預金通帳のありかを確認したくなるのも、そのためね」

仙川先生
「まあ、その息子も追い詰められているんだろうね。これからの生活費をどうするか。自分のキャリアはどうなるのか。介護者は介護者で、やり場のない大きな不安を抱え、何かに救いを求めているものだよ」

白石先生
「七栄さんを守るために、そして介護者である息子さんを守るために。介護者がつぶれてしまわないように支えることは、そのまま患者さんを守ることでもあるのだから」

関連書籍

南杏子『いのちの十字路』

医師国家試験に合格した野呂は、金沢のまほろば診療所に戻ってきた。娘の手を借りず一人で人生を全うしたい老母。母の介護と仕事 の両立に苦しむ一人息子。妻の認知症を受け入れられない夫。体が不自由な母の世話をする中二女子。……それぞれの家庭の事情に寄 り添おうと奮闘する野呂は、実は、ヤングケアラーという辛い過去を封印していた。

南杏子『いのちの停車場』

東京の救命救急センターで働いていた、六十二歳の医師・咲和子は、故郷の金沢に戻り「まほろば診療所」で訪問診療医になる。命を送る現場は戸惑う事ばかりだが、老老介護、四肢麻痺のIT社長、小児癌の少女......様々な涙や喜びを通して在宅医療を学んでいく。一方、家庭では、脳卒中後疼痛に苦しむ父親から積極的安楽死を強く望まれ......。

南杏子『いのちの波止場』

吉永小百合さん主演映画『いのちの停車場』シリーズ最終話。主人公は映画で広瀬すずさんが演じた看護師・麻世。 これで安心して死ねるよ。 ありがとう、ありがとう。 余命わずかな人たちの役に立ちたい――“熱血看護師”麻世が「緩和ケア科」で学び、最後に受け取ったものは。 震災前の能登半島の美しい風景と共に、様々な旅立ちを綴る感動長編。 患者さんの苦痛を取り、嫌だと思うだろうことをしない。 それが最後にできる最高の仕事。 まほろば診療所の看護師・麻世は、能登半島の穴水にある病院の看護実習で「ターミナルケア」について学ぶ。激しい痛みがあるのに、どうしてもモルヒネを使いたくないという老婦人。認知症と癌を患い余命少ない父に無理やり胃ろうつけさせようする息子。そして麻世が研修の最後に涙と感謝と共に送るのは、恩師・仙川先生だった――。

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いのちの十字路

吉永小百合主演映画『いのちの停車場』原作続編!

老老介護、ヤングケアラー、8050問題……。介護の現場で奮闘する若き医師とその仲間たち。

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南杏子

1961年徳島県生まれ。日本女子大学卒。出版社勤務を経て、東海大学医学部に学士編入。卒業後、都内の大学病院老年内科などで勤務したのち、スイスへ転居。スイス医療福祉互助会顧問医などを勤める。帰国後、都内の高齢者中心の病院に内科医として勤務。

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