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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

2023.05.05 公開 ポスト

「マスゴミ」と呼ばれて…でも、ニュースがなければ「なかったこと」になっていた武器になる教養30min.編集部

「メディア不信」が叫ばれ、ときに「マスゴミ」と叩かれもする、日本のマスメディア。しかし、ニュースがなければ「なかったこと」になっていた不正やトラブルは山ほど存在します。記者はどのようにして権力に迫るのか? そして、私たちは民主主義の「運営者」として、どう情報と向き合えばよいのか? 新刊『事実はどこにあるのか 民主主義を運営するためのニュースの見方』を発表した、ジャーナリストの澤康臣さんに解説していただきました。

*   *   *

報道とSNSの決定的な違い

── この本の第一章では、「ニュースがなければ『なかったこと』になっていた」というタイトルで、ここ数年で起きた4つのニュースを取り上げていますね。

(写真:iStock.com/seb_ra)

これらのニュースに共通しているのは、いずれも記者が自分の活動で、独自に探し出してきたものだという点です。ところが、それを知らない人がいっぱいいるんですよ。

たとえば、東京医科大学が女性受験者を一律減点し、合格者を少なくしていた問題のことは、若い世代の人たちもよく知っています。当事者に近いですから。でも、「文部科学省が調べたから明らかになったんじゃないか」とか、「ソーシャルメディアで内部告発があったんじゃないか」と思っている人が多い。

実際は、読売新聞の記者がコツコツ取材して、裏付けをとって、ようやく表に出すことができたスクープなんです。もし記者がニュースにしなければ、まさに「なかったこと」になっていたし、いまも不正は続いていたでしょう。本来、合格していたはずの女性が落ちてしまうという事態が、今年も生まれていたと思うんです。

 

── ただ、もしこれが誤報だったら記者のクビが飛ぶどころか、メディアの存続にも関わってきそうです。

スキャンダルをでっち上げたと言われても、おかしくないですよね。当然、法的なトラブルにまで発展するでしょう。だから、「これは絶対に間違いない」と言えるくらいまで、記者はガチガチに裏をとります。「まあ、大丈夫だろう」くらいで報道する記者はいません。

原稿チェックの過程で、デスクが記者に「ここのところ確認できているの?」「こんなふうに書いて大丈夫なの?」と確認する場面がよくあります。そのとき、若い記者がポロッと「だと思いますけど……」と言ったら、ものすごく怒られます。「そんなもの出せるか!」と。

それが報道の現場です。絶対大丈夫だと、確信をもって言えるものだけがニュースになる。そこがSNSとの大きな違いだと思います。

 

もうひとつ、SNSとの違いは、自分のため、会社のためよりも、読者のため、視聴者のためが先にくるということです。自分の利益のためにとか、誰かに「宣伝してよ」と頼まれたから伝えるのは、報道ではなく「ステマ」です。

権力の濫用や不正といった明らかにすべき問題や、知っておくべき重要な情報を、世の中の人のために伝えるのが報道であり、ジャーナリズムだと考えています。

私たちはみんな「運転席」に座っている

── ただ、私たちのほとんどは、これらの事件によって直接、被害を受けたり迷惑をこうむったりしたわけではありません。「べつに知らなくても困らないよね」という声もあると思うのですが、いかがでしょうか。

(写真:iStock.com/Akarawut Lohacharoenvanich)

大事なポイントですね。東京医科大学の不正入試問題でも、文部科学省がどうにかしてくれるだろう、政府がどうにかしてくれるだろう、だから自分は知らなくてもいい、そんなふうに考える人がいるのはわかります。

でも、本当にそうでしょうか? 世の中はそんなにうまくできていません。「これは問題だ」と声を上げる人がいて、ざわざわしなければ世の中って動かないんです。

世界には、素晴らしい指導者がすべてを正しく決める、だから普通の人は何も知らなくていいし、関わらなくていいと考える国もあります。でも、日本は民主主義の国です。右に行くべきか、左に行くべきかという道を、私たちみんなが決めているんです。

 

バスにたとえるなら、お客さんのシートにただ座っていればいいというわけにはいかないんです。いまこれを聴いてくださっている方も、私も、みんな運転席に座っている。こっちに行ったら危ないとか、間違った方向に進んでいるとか、私たちは言える立場にあるし、言う責任があります。それが、民主主義というものです。

そのためには、市民があらゆる情報を持ったうえで、右へ行くのか、左へ行くのか、山へ行くのか、海へ行くのか、議論しながら決めていく必要があります。

もちろん、情報を知っていなくてもすぐには死にません。でも、いずれはヘンテコな道にバスが行ってしまって、取り返しがつかないことになる可能性だってある。そうならないためには、まずは知ることが大事なんです。

 

── いまおっしゃった部分が、サブタイトルの「民主主義を運営するためのニュースの見方」という言葉につながっているわけですね。

その通りです。こんな長いタイトルが、本の売れ行き上いいのかどうかよくわからないんですけれども、ここには私なりの大切な思いがつまっています。

 

── とくに「運営」という言葉がキーワードですね。

よくイベントで、「運営のみなさん」といった言い方をしますよね。まさに私たちは、その運営の一人なんです。決して、お客さんではありません。その思いをみなさんとシェアしたくて、この本では「運営」という言葉を使っています。

 

※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【前編】澤康臣と語る「『事実はどこにあるのか 民主主義を運営するためのニュースの見方』から学ぶ情報の扱い方・受け取り方」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。

 

 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』はこちら

 

書籍『事実はどこにあるのか 民主主義を運営するためのニュースの見方』はこちら

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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。

『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。

幻冬舎新書新刊の著者をゲストにお招きし、内容をダイジェストでご紹介するとともに、とっておきの執筆秘話や、著者の勉強法・読書法などについてお話しいただきます。

この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。

番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

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武器になる教養30min.編集部

AmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』を制作する編集部です。

『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにした番組です。

番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

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