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星降る夜に

2023.03.30 公開 ポスト

第4話 何も言わずに傍にいる優しさもあると思う大石静(脚本家)

テレビ朝日系 火曜21時ドラマ『星降る夜に』の感動を完全収録したシナリオブックがついに発売!
心ときめく大人のピュア・ラブストーリーから、一部試し読みをお届けします。

★人物紹介★

雪宮 鈴(吉高由里子)……産婦人科医。常に冷静に振る舞い、誰かに頼ることが苦手。息抜きに行ったソロキャンプで、10歳下の柊一星と運命の出会いを果たすことに。

柊 一星(北村匠海)……遺品整理士の青年。感情豊かで明るい性格。音のない世界を生きる。手話や筆談などで会話をする。偶然出会った雪宮鈴に一目惚れする。

佐藤 春(千葉雄大)……一星と同じ職場に勤める遺品整理士。親友であり、先輩でもある一星のことを心から尊敬している。

麻呂川 三平(光石 研)……「マロニエ産婦人科医院」の院長。道化した言動も多いが器が大きい男。釣りが好き。

佐々木 深夜(ディーン・フジオカ)……45歳の新米医師。美しい風貌とは裏腹に、衝撃的なヘタレポンコツで、病院中のスタッフから毎日叱られている。

鈴の自宅マンション・LDK

朝。

パジャマ姿の鈴がカーテンを開ける。  いい天気だ。

  「(手話で)青い空……白い雲……」

同・ベランダ

窓を開けベランダに出て、下の道を見る鈴。

歩いて行く人がいる。

  「(手話で)ランドセル……花……鳥……」

同・玄関

出かけて行く鈴。

  「(靴を履きながら)靴……(わからない)」

バス停にいる鈴。

スマホで、手話を調べる。

『靴』

  「ふ~ん(なるほど)……(靴の手話をやってみる)靴」

バスが来る。

  「バス……(腕時計を見る)10分遅れ……」

遺品整理のポラリス事務所・外観

同・中

誰も来ていない事務所の中で、スマホを立てかけ、動画を撮っている一星。

一 星「(スマホに向かって手話で)バス。……バス」

桃野が入って来る。

桃 野「おはようございまーす!(一星にジェスチャーで)おはようございまーす!」

一 星「(桃野に答えず動画で手話)今日は、バスが、10分遅れて来た」

春が入って来る。

  「おはよ(一星の顔を見て、手話で)おはよう」

一 星「(春には答えず、動画で手話)今日は、バスが、10分遅れて来た」

 春 「おやおやおや」

一 星「(春に構わず、手話で)わかった? じゃね(と動画を撮り終わり、鈴に送信して切る。春に手話で)何?」

  「(手話で)幸せそうだね」

一 星「(手話で)こうやって、春にも教えただろ?」

  「(手話で)なつかしいな~」

桃 野「一星さん、俺も1つ覚えたんです! 見て下さい。(手話と声で)桃野」

一星・春「(拍手)お~」

桃 野「うへへ。もう1つ。(手話と声で)岩田」

岩 田「(いつのまにかいて)おはよう。呼んだ?」

バスの中

スマホを見ている鈴。

  「(手話と声で)今日はバスが10分遅れて来た」

メッセージアプリで『ありがとう』のスタンプを一星に送信。

マロニエ産婦人科医院・スタッフ控室

鈴がいるところに、深夜が入って来る。

深 夜「おはようございます」

  「おはようございます」

深 夜「(鈴に背を向けている)」

  「(手話で)医者、1年目」

深 夜「(振り返り)何かおっしゃいました?」

  「別に」

深 夜「あ、すみません」

  「……言った」

深 夜「え?」

  「(手話と声で)医者1年目」

深 夜「先生、手話できるんですか!」

  「ぜんぜん、入門コース入りたて」

深 夜「昔、妻と手話のドラマにはまったことありました」

  「奥さんと……」

鈴の回想

鈴の脳裏にフラッシュバックする深夜の話。

3話より、深夜の自宅アパートで。

深 夜「10年前、妻と子どもを亡くしまして……」

  「……!」

 

深 夜「何だか現実だと思えなくて、涙も出なくって」

  「……」

マロニエ産婦人科医院・スタッフ控室

  「奥さんと見た手話のドラマって、トヨエツの?」

深 夜「ええ、あれ見て、僕らも手話を覚えようって、挑戦したんですけど、2人とも、すぐ挫折しちゃって」

  「そっか」

深 夜「今も覚えてるのは(手話と声で)ありがとう、と自分の名前くらいです。(手話と声で)佐々木深夜」

  「……!(やりつつ)佐々木!」

深 夜「佐々木小次郎の佐々木です」

  「佐々木。佐々木!」

深 夜「(手話の話で、いつになく弾ける鈴を、かわいいと思う)……(手話と声で)午前、午後、深夜です」

  「(手話と声で)わたしの名前は雪・宮・鈴」

深 夜「(声と手話で)雪宮鈴」

いきなりチャーリーが入って来る。

チャーリー「イェイイェイウォウウォウ。今、先生達、踊ってたすか?」

鈴・深夜「は?」

チャーリー「(奇妙な真似)こんなこんな~」

深 夜「手話で、雪宮先生の名前を教えてもらってたんです」

チャーリー「え~テンアゲ! じゃ、チャーリーはどうやんすか? 添寝士は?」

犬山、蜂須賀、伊達が入って来る。

犬 山「正憲! 昨夜どこ行ってたんだ!」

チャーリー「本名で呼ぶな。働いてたんだよ、オールナイトで、鶴子」

犬 山「とっとと帰って、シャワーして寝ろ、クソ息子」

蜂須賀「一晩でどんだけ稼いだん、チャーリー」

チャーリー「 添寝一晩8時間コースで8万円」

一 同「……!」

チャーリー「で、 差し入れ買って来たからさ、みんなに、揚げたてコロッケだよん」

蜂須賀「8万稼いでコロッケかよ」

伊 達「わたしずっと聞きたかったんですけど、添寝士って、ホントにホントに並んで寝るだけなんですか?」

チャーリー「ウェイ。添寝士は孤独な現代人の心を癒すエンジェル。ひとりで寝るのが寂しい人のライフセーバー」

蜂須賀「わかるけど、お前とは寝ない」

  「需要があるんだ、そんなに」

チャーリー「オールナイトはそんなにないす、2 時間コースが定番っす」

深 夜「チャーリー君は、特殊な才能があるんですね」

チャーリー「 男の方もOKですよ、先生、一度お試ししませんか?」

深 夜「へ……!」

犬 山「黙れ、バカ息子!」

チャーリー「(流して)鶴子元レディースだから、すぐカッカすんだよね」

一 同「レディース!」

チャーリー「え、 知らんかった? ピンクエンペラー」

蜂須賀「ピンクエンペラーって何」

と、麻呂川が入って来る。

麻呂川「佐々木先生、スクラブが逆だよ、イェイ」

深 夜「は……!(と慌てて着直そうとする)」

犬 山「(急に切り替え深夜に)今日、外来混んでますんで、早目に開始して下さい!?」

深 夜「はい、すぐ行きます」

蜂須賀「師長ピンクエンペラーって何すか」

犬 山「(無視して)コロッケは後、仕事仕事、院長も病棟回診ですよ」

麻呂川「あそうなの? コロッケって何?」

犬 山「それは後!」

麻呂川「あそうなの?」

みんな犬山に押し出されて行き、鈴とチャーリーだけになる。

チャーリー「(コロッケを差し出し)1個食べない? 先生」

  「昼になったら冷めちゃうもんね」

蜂須賀「(戻って来てチャーリーに)え、師長レディースなん? 怖いんだが」

チャーリー「わかりみ深し」

鈴、コロッケをかじりながらスマホを出し、一星にメッセージを送る。

『添寝士って手話、どうやるの?』

駐車場~ポラリスのトラックの中

トラックの前、出発直前の一星と春。

  「やべ。(手話で)忘れ物」

春、事務所に戻る。

一星だけトラックに乗り込むと、スマホに鈴からメッセージ『添寝士って手話、どうやるの?』

一 星「……?」

一星が返信『何それ?』

鈴『人に添寝してあげる仕事。添寝士』

星『鈴、添寝が必要なの?』

鈴『いや、師長の息子が添寝士なんだけど、手話でどうやるのかなって思っただけ』

一星『後で動画送る』

『週末のデート、忘れんなよ』

『(ビシッみたいなスタンプ)』

一 星「……」

いそいそトラックに乗り込んで来る春。

そんな一星を見て。

  「……?」

一 星「(スマホで『添寝士』について調べる)」

『添寝サービス、料金相場は2時間2万円程度』

一 星「……!」

マロニエ産婦人科医院・外来診察室

患者(佐藤うた、実は春の妻)と話している深夜。

診察室には蜂須賀もいる。

うたは、キリリとしたスーツに身を包んだ、いかにも仕事ができそうな雰囲気の女性。

深 夜「妊娠6週目ですね。おめでとうございます!」

う た「……」

深 夜「予定日は今年の9月29日になりますね」

う た「そうですか(メモする)」

深 夜「これからつわりが出てくると思うんですよね。そういう場合は、食事を冷たくするとよいですよ。気持ち悪いからって食べないと、赤ちゃんにも栄養が行かないので。ね」

う た「はい」

深 夜「次回の診察は2週間後になります。けど何かあったら、いつでも電話して相談して下さいね」

う た「……」

深 夜「(うたの顔を見て)あの……何かご不安なこと、ありますか?」

う た「……いえいえ大丈夫です。ありがとうございました(と立つ)」

深 夜「あっ……どうぞお大事に!」

同・受付~待合室

浮かない顔で帰って行くうた。

春の妻とは知らないが、待合室を通りかかった鈴は、うたの浮かない表情がひっかかる。

  「…………」

同・屋上

昼休み。ベンチで食事をしている鈴。やって来る深夜。多めの食事をまた買って来ている。

  「……佐々木先生、1個ちょうだい」

深 夜「あ……どうぞ……(鈴の気遣いがわかり)……ありがとうございます」

  「ん?」

深 夜「……」

  「……」

深 夜「あの。午前中の患者さんに、妊娠を告げても、ニコリともしない人がいて……」

  「あー。まぁ喜ばしい妊娠ばかりじゃないしね」

深 夜「不倫の末の妊娠とか、経済的事情とかですかね……おめでとうって言ってしまって、気まずい雰囲気になりまして」

  「そういう事情は、医者には関係ないから」

深 夜「……」

  「わたし達がやるべきことは、妊婦さんの体調を的確に診断すること」

深 夜「は……」

 鈴 「産むも産まないも、生き方の選択は本人の自由だからさ」

深 夜「………そうですね………」

*   *   *

―ー妊娠が発覚するも、浮かない表情のうた。そこに隠された悩みとは……。続きは本誌にてお楽しみください。

関連書籍

大石静『星降る夜に シナリオブック』

テレビ朝日火曜よる9時放送のドラマ『星降る夜に』のシナリオブック。 感情を忘れて孤独に生きる産婦人科医と、音のない世界で自由に生きる遺品整理士。 対照的な2人が織りなす大人のピュア・ラブストーリー。

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星降る夜に

テレビ朝日火曜よる9時放送のドラマ『星降る夜に』のシナリオブック。

感情を忘れて孤独に生きる産婦人科医と、音のない世界で自由に生きる遺品整理士。

対照的な2人が織りなす大人のピュア・ラブストーリー。

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大石静 脚本家

東京生まれ。脚本家。1997年にNHK連続TV小説『ふたりっ子』で向田邦子賞と橋田賞を受賞。脚本作品に大河ドラマ『功名が辻』『セカンドバージン』『家売るオンナ』『大恋愛~僕を忘れる君と』『和田家の男たち』など多数。

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