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世界一簡単なフランス語の本

2023.03.23 公開 ツイート

誰もが知ってるフランス語「カフェオレ」で前置詞を学ぶ 中条省平

フランス語の教師をはじめておよそ30年になる中条省平さん。フランス語に挫折してしまったあなたのために、「フランス語の大体が頭に入り、フランス語を恐れる気持ちが消える」ことを目指して書かれた『世界一簡単なフランス語の本』から、フランス語のはじめの一歩をご紹介します。

*   *   *

フランス語の代表的な前置詞 à と de

フランス語の前置詞のなかでいちばん頻繁に使うものは、à(ア)de(ドゥ)です。

à は、英語の at(もしくは in) や to のように「~で」や「~へ」という場所を表す前置詞です。à Paris といえば、「パリで」と「パリへ」の両方の可能性を持ちますが、どちらの意味かは文脈によって分かります。

また、すでに前章でやったように、à には、名詞の前に付いて間接目的を作る非常に重大な役割もあります。Je donne de l'eau à une rose. (私は水をバラにあげる)という154ページに出てきた文章では、à une rose という部分が à の働きによって、「バラに」という間接目的になっているわけです。

(写真:iStock.com/cream_ph)

もうひとつの de という前置詞は、英語でいえば、of や from のように「~の」や「~から」の意味を持っています。de Paris といえば、「パリの」という意味と、「パリから」という意味になります。

 

この à と de という前置詞は、あまりにも頻繁に使われるので、あとに定冠詞が来た場合にその定冠詞とくっついて、1つの単語になってしまいます

どういうことかというと、日本人でも知らない人のないフランス語「カフェ・オ・レ」がその例なのです。この言葉はすでに32ページに登場していましたね。綴りは café au lait でした。

ここに含まれる au は、元は à に定冠詞の男性単数形le が付いたものですが、この à+le は自動的に au に変わってしまうのです。つまり、café au lait は、意味的には café+à+ le lait なのです。

この言葉の場合の à は「~が付属した」「~が入っている」という意味です。つまり、le lait=ミルク、à=が入っている、café=コーヒーということになるのです。

前置詞 à と de が定冠詞と組みあわされると短くなる

というわけで、フランス語の定冠詞は、男性形の単数(le)、女性形の単数(la)、男女の複数(les)と3種類あるので、それぞれを à 、de と組みあわせると、こんなふうになります。

à+le → au(オ)

à+la → à la(ア・ラ)

à+les → aux(オ)

de+le → du(デュ)

de+la → de la(ドゥ・ラ)

de+les → des(デ)

このように、à および de と定冠詞が組みあわさってひとつの言葉になる変化のことを「縮約」といいます。

しかし、ご覧のとおり、à la と de la という組みあわせの場合は、縮約が起こりません。つまり、「縮約形」には、à+le の au、à+les の aux、de+le の du、de+les の des という4種類があるわけです。

(写真:iStock.com/encrier)

café au lait に出てきたau のほかの3つの縮約形の実例を見てみましょう。

例えば、印象派の画家モネは、自宅の庭に日本風の橋のかかった池を作り、そこで睡蓮を育てました。そして、この睡蓮のある池を何度も描いていますが、「睡蓮の池」をフランス語で何というでしょうか?

答えは、

Le Bassinバサン aux nymphéasナンフェア

読み方でこれまで出てこなかった綴りは ym だけですね。前に59ページで crayon (クレヨン)という日本語になったフランス語を例に出したとき、「y は基本的に i と同じに発音します」と説明しました。つまり、ym は im と同じ発音。ということは、38ページで、in(im)、un、ain(ein)の発音はすべて「アン」、と申しあげたように、「アン」という発音になるわけです。

bassin は「池」、nymphéas は「睡蓮(複数形)」の意味。aux は à+les で、この場合の à も café au(=à le)lait のときと同じで、「~が付属した」「~が入っている」という意味です。つまり、「睡蓮がある池」ということになります。Le Bassin というように、「池」の最初の文字が大文字になっているのは、これが絵のタイトルだということを表していて、固有名詞扱いされているわけです。

 

次に du という縮約形の文例です。これも印象派からゴッホの有名な絵のタイトルを例にとりましょう。

Terrasseテラス duデュ caféカフェ le soirスワル

この絵は普通、日本では「夜のカフェ・テラス」と呼ばれていますね。テラスもカフェも日本語になっているわけです。ただ、フランスでは「テラス」というのは喫茶店やレストランの屋外の席を意味しています。

フランスのカフェは、テラス、店内、カウンターと3つに分かれていて、飲み物の値段も異なっています。テラス席が最も高く、店内の椅子席がその次、カウンターで立って飲むのがいちばん安価です。節約したい方、お急ぎの方はカウンターでどうぞ。

というわけで、du café は de le café の縮約形で、この場合の de は「~の」といういちばん普通の意味です。つまり、この絵は「そのカフェの屋外席」を描いているわけです。

最後の le soir というのは、soir(夜、夕刻)に定冠詞が付いた形で、普通は「その夜」という意味になるのですが、このタイトルの場合は「夜になったときの」といったニュアンスで使われています。

ゴッホ『夜のカフェ・テラス』

最後に des の例です。これも印象派の絵のタイトルから出すことにしましょう。

Le Déjeunerデジュネ des canotiersカノティエ

発音はすでに学んだ規則で読めますね。

意味は、Le Déjeuner が「昼食」で、大文字になっているのは、モネの Le Bassin と同じで、絵のタイトルなので、固有名詞扱いです。des は de(~の)+les の縮約形で、canotiers は「ボート遊びをする人」をいう名詞の複数形です。したがって、この文は「ボート遊びをする人々の昼食」という意味になります。日本では「舟遊びの昼食」という訳で知られるルノワールの有名な絵のタイトルでした。

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中条省平

1954年神奈川県生まれ。学習院大学フランス語圏文化学科教授。東大大学院博士課程修了。パリ大学文学博士。著書『中条省平は二度死ぬ!』『文章読本』など。翻訳書最新刊はロブ=グリエ『消しゴム』。

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