1. Home
  2. 生き方
  3. 人生に悩んだらアドラーを読もう。
  4. 「嫌われる」のは自由な証 親の期待を満た...

人生に悩んだらアドラーを読もう。

2022.04.03 公開 ツイート

「嫌われる」のは自由な証 親の期待を満たすために生きる必要はない 岸見一郎

大ベストセラー『嫌われる勇気』の著者として知られる、アドラー心理学の第一人者、岸見一郎さん。『人生に悩んだらアドラーを読もう。』は、そんな岸見さんが若者たちの悩みにやさしく答えた、まさに「アドラー心理学の入門書」といえる内容です。あなたは今すぐ変われる、他者にあなたの生き方を決めさせない、あなたには幸せになる勇気がある……心強いメッセージ満載の本書から、一部をご紹介します。

*   *   *

「お前は頭がいい」は「属性付与」。それを子どもが受け入れる必要はない

私が子どもの頃、祖父は私に「お前は頭がいい」とよくいっていました。

前に、「あなたは人付き合いが下手ね」と親が子どもにいうということを書きました。こんなふうに親は子どもの短所を見て、実際にそれを子どもの前で口にするかはともかく、子どもについて「あなたはこんな子だ」とその性質(属性)を決めてしまうのです。これをレインという精神科医は「属性付与」という言葉で説明しています。

(写真:iStock.com/imacoconut)

問題は、例えば、子どもが「お母さんのこと嫌い」といっても、親はそれを認めようとせず、「でも、私はお前が私を好きだということがわかっている」という場合のように、それぞれが相手にする属性付与が一致していないことがあるということです。

しかも親が「お前は(本当は)私のことを好きである」という時、これは事実上命令になります。つまり、私を好きであれ、と親は子どもに命令しているのです。「あなたはいい子だね」「お前は(まだ)子どもだ」というのも同じです。

 

私の祖父の場合ははっきりしていて、「お前は頭がいい」という属性付与に続いて「大きくなったら京大へ行けよ」が口癖だったのです。

このようなことをいわれても子どもは親を好きになれるわけではありませんし、この祖父の言葉は、保育園に行っていた私にも漠然としたものであっても大きな縛りになったことは間違いありません。小学校に上がる前から、勉強ができることを期待されたわけですから。

 

しかし、子どもは親によるこのような属性付与を受け入れる必要はないのです。誰も他者の期待を満たすために生きているわけではないからです。

自分を人の期待に合わせないという決心をしたり、あるいは、人の命令に従わない決心をすれば、そのことの代償を払わなければなりません。人によく思われないとか、嫌われるというようなことです。

しかし、人の期待に合わせないために自分を嫌う人がいるということは、自分が自由に生きているということの証であるといえます。

自由に生きると嫌われる。それでも…

自由に生きるということと人によく思われることを両立させることは、多くの場合、困難なことです。

人からよく思われたいのであれば自由を手放す必要があります。そして実際これを選ぶ人はあります。親が期待するような人になろうとすることです。しかし、自由に生きるということは、それに伴う代償や責任を引き受けるということでもあります。

(写真:iStock.com/kieferpix)

ここでいう属性付与は、親やあるいは特定の大人によってされることもありますが、漠然と「社会」によって、しかもこんなふうであれ、と無言の圧力となって若い人の前に立ちはだかることがあります。そこで学生の時は自由にふるまえたのに、就職活動を始めた若者は、皆、同じようなスーツを着ることになってしまいます。

 

ある時、電車に乗っていたらふいに隣の席にすわっていた青年に「今、何を読んでられるのですか」と話しかけられました。私は電車の中で隣にすわっている人がどんな本を読んでいるか気になることがあっても、たずねることはありませんから、青年がこんなふうにたずねたことに驚きました。

その時、私はある精神科医の書いた本を読んでいたのですが、その本について話した後、彼はこんなことをいいました。

「僕は欝病で(今は躁の時期なのですが)、入院するように勧められています。大人たちは僕に社会適応しろというのです。でも、そうすることは僕の死を意味します。どうしたらいいですか」

彼は社会に適応することを強いられることに精一杯抵抗していました。彼がいう大人も、かつてはこの青年と同じようにステレオタイプな生き方を強いられることに抵抗していたはずなのです。それなのに、その時の気持ちをいつの頃からか忘れてしまったように見えます。そして、かつて自分がいわれていやだったことを若い人にいっているのです。

 

自分が自分のために自分の人生を生きていないとすれば、誰が自分のために生きてくれるのだろうというユダヤ教の教えがあります。自分が人生の主人公です。主人公であるということは、脇役ではないということです。

誰かのために生きる必要はありません。ですから、今、本当にしたいことをしているかと問われたら、ためらわずに「はい」と答えてほしいのです。

関連書籍

岸見一郎『人生に悩んだらアドラーを読もう。』

最もわかりやすい言葉で書かれた、アドラー心理学の入門書。 アドラー心理学第一人者の岸見一郎氏が、若き読者の悩みに真摯に答えた! 本当に人は変わることができるのか、自分で人生を決定するとはどういうことなのか、迷い・悩みを抱えるすべての人の心に響く、アドラー心理学の思想が凝縮された一冊。

岸見一郎『これからの哲学入門 未来を捨てて生きよ』

アドラー、プラトン、デカルト……古今東西の哲学者の言葉を岸見一郎が咀嚼し再構築するーー“負ける哲学者”による、今最も古くて最も新しい生き方・考え方 「岸見哲学」の集大成! 先が見えない時代に私たちはどのように考えたらいいのか。 ・不安を直視して生きる ・幸福に「なる」のではなく、幸福で「ある」 ・未来は「ない」ものと考え「今」を生きる ・数えるのをやめると人生は変わる コロナ時代を生きる勇気が湧く言葉の数々。

岸見一郎『成功ではなく、幸福について語ろう』

成功と幸福を同一視しないことから始めよう。 アドラー哲学「嫌われる勇気」岸見一郎による幸福論の決定版 高校生へ語った伝説の講演「これからの人生をどう生きるか」も完全収録!

岸見一郎『生きる勇気とは何か アドラーに学ぶ』

岸見一郎氏による、アドラー心理学の決定版。 仕事、恋愛、老いや病気など、誰もが避けて通れない人生の課題にどう向き合うか。 困難に躓き、勇気を失ってしまった人は、その後どうやって勇気を回復したらよいのか。 アドラーの言葉・カウンセリング例をもとに解説します。 どんなに困難多き人生であっても、今日から幸福に生きるための考え方・行動指針が詰まった一冊です。

{ この記事をシェアする }

人生に悩んだらアドラーを読もう。

大ベストセラー『嫌われる勇気』の著者として知られる、アドラー心理学の第一人者、岸見一郎さん。『人生に悩んだらアドラーを読もう。』は、そんな岸見さんが若者たちの悩みにやさしく答えた、まさに「アドラー心理学の入門書」といえる内容です。あなたは今すぐ変われる、他者にあなたの生き方を決めさせない、あなたには幸せになる勇気がある……心強いメッセージ満載の本書から、一部をご紹介します。

バックナンバー

岸見一郎

1956年、京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋古代哲学史専攻)。著書に『アドラー心理学入門』(KKベストセラーズ)、『幸福の哲学』(講談社)、『人生を変える勇気 踏み出せない時のアドラー心理学』(中央公論新社)、『老いた親を愛せますか?それでも介護はやってくる』『子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気』『成功ではなく、幸福について語ろう』(幻冬舎)訳書にプラトン『ティマイオス/クリティアス』(白澤社)などがある。共著『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)はベストセラーに。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP