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人生に悩んだらアドラーを読もう。

2022.03.20 公開 ツイート

アドラー心理学が教える親のNG行動 「あなたは○○ね。」子どもに言葉の呪縛をかけてない? 岸見一郎

大ベストセラー『嫌われる勇気』の著者として知られる、アドラー心理学の第一人者、岸見一郎さん。『人生に悩んだらアドラーを読もう。』は、そんな岸見さんが若者たちの悩みにやさしく答えた、まさに「アドラー心理学の入門書」といえる内容です。あなたは今すぐ変われる、他者にあなたの生き方を決めさせない、あなたには幸せになる勇気がある……心強いメッセージ満載の本書から、一部をご紹介します。

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子どもの長所を言えますか?

どんなライフスタイルで生きていくかを決める時にきょうだい関係は大きな影響を与えますが、親も子どもに影響を与えます。親は小さな子どもにとって絶対的な力を持った存在ですから、親が力を行使すれば、大人の力に圧倒され、子どものどんな欲求、希望も通りません。

(写真:iStock.com/takasuu)

親が大きな声で叱ったり時には手を出すことが、どんな影響を及ぼすかということについては後に見ますが、子どもがきょうだいと競争して手に入れたいのは、このような親に注目されることです。親は、その意味で、子どもに影響を与えるわけです。

そこで、このような親が子どものライフスタイルについて、あなたはこういう性格だといえば、それに対して違うということが難しいかもしれません。

 

子どものことでカウンセリングにこられる親は、子どもの短所、欠点、問題行動についてたくさん話されます。私が話を止めなければいくらでも話し続けられます。ノートにまとめてきて読み上げる人もあります。このような場合、親が子どもの短所や欠点しか見ていないということがわかります。話をまだまだしたいように見える親の話を中断し、こうたずねるのです。

「子どもさんの短所や欠点についてはよくわかりました。ところで子どもさんの長所、いいところを教えてもらえますか?

すると、それまで饒舌に話していた親は言葉を失います。

「え? 長所ですか? あ、う、……」

子どもにしてみれば自分の親が自分についてこんなふうであるということを知ればうれしくはないでしょう。子どもの短所や、問題行動について話した後、カウンセラーの話を聞こうともしないで、それだけで満足したかの様子で帰ろうとする親もあります。

このような人は、自分はちゃんと育ててきたのに、これだけ問題のある子どもが悪いということをわかってほしいと訴えているように見えます。そのようにして子どもを敵にまわしてしまっているのですから、このような親を子どもが好きになることはできません。

「意見」を「事実」のように話していませんか?

まず考えたいことは、親がいう子どもの短所や欠点は、親の子どもについての見方であるということです。例えば、先に見た小学生の親が、「この子は勉強しない」という時、そのことの本当の意味は、「私にはこの子は勉強しないように<見える>」とか「私はこの子は(私が期待するほど)勉強していないと<思う>」ということであって、実際に勉強していないという意味では必ずしもありません。

(写真:iStock.com/AH86)

親子の会話でよく問題になるのは、親が子どもに話す時、意見でしかないのに、事実であるようないい方を親がすることです。「あなたは人付き合いが下手ね」と親が子どもにいっても、それは親が子どもについてそのように見ているということでしかありません。

「あなたは何をしても最後までやりとげるということはない。飽きっぽいね」と親が子どもにいっても、それは親が子どものことをそのように見ているということであり、つまりは親の考え、意見でしかないのであって、事実、親が見るとおりかはわかりません

 

ところが、残念なことに、子どもは親から影響を受けて育ちますから、いわば親の言葉による呪縛にかかってしまいます。親の見方でしかないのに、それが自分についての唯一の見方だと思い込んでしまうのです。

その上、この社会においては、自分の長所を認め、例えば、私は頭が良くて、話が上手だなどと人にいうことは好ましく思われていませんから、親だけでなく、自分自身も、長所をたずねられた時に答えにつまってしまうのです。わざわざ公言する必要はないかもしれませんが、自分に対してまで遠慮する必要はないのに、いつのまにか自分でも短所しか見えなくなってしまっています

 

例えば、携帯電話であれば、新しい機種が出れば買い換えることができます。しかし、いわば私というこの道具は、たとえどんなに癖があっても、気に入らないからといって他の道具のように買い換えることはできません。これからもずっと自分とつきあっていかなければなりません。

ですから、何としても、自分のことを好きになってほしいのですが、長年の親からの影響を拭うことは難しいのです。

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人生に悩んだらアドラーを読もう。

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岸見一郎

1956年、京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋古代哲学史専攻)。著書に『アドラー心理学入門』(KKベストセラーズ)、『幸福の哲学』(講談社)、『人生を変える勇気 踏み出せない時のアドラー心理学』(中央公論新社)、『老いた親を愛せますか?それでも介護はやってくる』『子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気』『成功ではなく、幸福について語ろう』(幻冬舎)訳書にプラトン『ティマイオス/クリティアス』(白澤社)などがある。共著『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)はベストセラーに。

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