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国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶

2022.02.28 公開 ポスト

日本の給料が30年間上がらない本当のワケ加谷珪一(経済評論家)

2022年度の春季労使交渉(春闘)がヤマ場を迎えています。トヨタ自動車が早期に満額回答するなど、約30年に及ぶ賃金の低迷に終止符が打たれるかが焦点です。賃上げへの期待が高まるなか、そもそも日本はなぜこれほどまで「給料が安い国」になってしまったのでしょうか。『国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶』の著者、加谷珪一さんは、その原因を日本人のマインドにあると指摘します。発売後たちまち重版となり話題の本書の一部を抜粋して紹介します。

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日本は便利で治安も良い国だけれど……

日本は便利で治安が良く、長生きできる国だというのは多くの人が認識していると思います。筆者は時々、仕事や観光などで外国に行くことがありますが、日本に帰ってくるたびにそれを実感します。

一方で、便利な社会ではあるものの、生活が息苦しいという感覚も多くの人が共有しているのではないでしょうか。常に他人の目を恐れ、自由に行動ができなかったり、会社の人間関係がとても憂鬱であったり、あるいは強い立場の人だけが利益を得て、弱い立場の人が泣き寝入りを強いられたりしています。

(写真:iStock.com/AndreyPopov)

こうした社会の息苦しさをもたらす要因のひとつとして考えられるのが、近年、急速に進んできた日本の国際的な地位低下です。日本は過去30年間、ほぼゼロ成長という状況が 続く一方、諸外国は経済規模を1.5倍から2倍に拡大させました。相対的に日本は貧しくなっており、徐々に私たちの生活を圧迫しつつあります。

日本ではこの30年間、実質賃金がまったくといってよいほど上がっていませんし、貧困に陥る人も増えてきました。経済的に苦しくなれば、精神的にも余裕がなくなるのは当然の結果といってよいかもしれません。しかしながら、日本の衰退が進んでいるとはいえ、現時点ではそれなりの経済規模がありますから、経済的な問題だけが理由とは思えません。

誹謗中傷で溢れる日本のネット社会

私たちの生活を息苦しくしている最大の要因は、他人に対する誹謗中傷やバッシングに代表される日本特有の社会風潮でしょう。

日本ではネット上の発言に対して常軌を逸した誹謗中傷が行われたり、ベビーカーを押している母親に「邪魔だ」と言って暴力が振るわれたりするなど、先進諸外国ではあり得ない光景を目にするケースが少なくありません。

(写真:iStock.com/mokee81)

秋篠宮家の長女眞子さんと小室圭さんに対するバッシングや、SNSの誹謗中傷によって自殺に追い込まれたプロレスラー木村花さんのケースはその最たるものでしょう。この2つのケースは著名人が対象であり、一般的に著名人は強者と見なされています。

しかし、安易に反論や訴訟ができないという立場でもありますから、部分的には弱者と言い換えることも可能です。ベビーカーを押す人への暴言や暴行の多くは女性に対してであり、こうした暴力的、抑圧的な行為というのは、立場が弱い人に向けられます

日本社会には不寛容で抑圧的な文化が存在している

ニュースで取り上げられることはほとんどありませんが、企業社会や地域社会、学校などにおいても、同じような行為が日常的に行われており、これが日本社会特有の息苦しさを形成しています。こうした社会風潮は以前から指摘されていたことではありますが、新型コロナウイルスの感染拡大が拍車をかけた可能性は高いでしょう。

コロナ危機という特殊要因があったとはいえ、感染症によって突然こうした風潮が生まれたわけではありません。もともと日本社会には、不寛容で抑圧的な文化が存在しており、それがコロナ危機をきっかけに、さらに激しくなったと考えた方が自然です。

(写真:iStock.com/Tzido)

世界を見渡せば貧困に苦しむ国がたくさんあり、貧しい国の社会は総じて不寛容です。

しかしG7に入る先進国でありながら、社会が過度に息苦しいというのは日本独特の環境としか思えません。社会環境というのは最終的には人間が作り出すものですから、こうした日本社会の特徴は、日本人の思考と行動に原因があると考えるのが適切でしょう。

本書は、日本人の一連の行動様式が、実は経済にも深刻な影響を与えているのではないかという問題意識で執筆したものです。

日本は戦後、驚異的な高度成長を実現しましたが、バブル崩壊以降、ほぼゼロ成長が続き、賃金は下がる一方となっています。経済の専門家の間では、なぜ日本が成長できなくなったのか様々な議論が行われてきました。

英米は製造業の衰退後も経済成長できている

教科書的に解説すれば、バブル以降、日本が経済成長できなくなった最大の原因は、日本企業の多くがIT化やグローバル化という世界経済の潮流を見誤り、輸出競争力を大きく低下させてしまったことです。

(写真:iStock.com/thitivong)

しかしながら、英国や米国がそうであったように、豊かな先進国というのは、たとえ製造業がダメになっても、国内の消費市場を原動力に成長を持続することができます。日本の場合、製造業の競争力低下がそのまま低成長につながっており、消費主導で成長できない状態が続いています。

では、なぜ先進国の中で日本だけが国内消費で成長できないのでしょうか。筆者は日本人特有のマインドがその理由のひとつであると考えています。

前向きなマインドなしに景気浮揚はない

経済学上、消費というのは消費者心理に大きく左右されることが分かっていますが、消費を拡大させる絶対的な法則というものは存在していません。基礎的な消費力は国ごとに違っており、それは国民性や社会環境に大きく依存しているのです。

(写真:iStock.com/Jovanmandic)

日本は製造業の弱体化によって個人消費で成長する経済構造にシフトしましたが、個人消費というのは前向きなマインドがないと拡大しません。つまり日本社会の不寛容で抑圧的な風潮が個人消費を抑制している可能性が否定できないわけです。

好調な輸出に支えられ、昭和の時代までは表面化していなかった日本人の特性が、輸出競争力の低下で顕在化したと考えれば分かりやすいでしょう。

関連書籍

加谷珪一『国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶』

他の先進国が消費を拡大する中、なぜ日本だけが沈み続けるのか――原因は、緊縮財政でも消費増税でもなく「日本人の性格」だった。高度成長からバブル期は、人口増加、輸出主導で我が世の春を謳歌した。が、自己陶酔した「優しさ」「思いやり」「絆」の像とは裏腹に、じつは猜疑心が強く、他人の足を引っ張るという隠れた国民の本性が、「失われた30年」で明らかになった。後ろ向きな心持ちでの景気向上はあり得ない。本書は日本人の消費マインドが萎縮する現状を分析、数多のデータから景気浮揚できない理由を指摘し、解決策を提示する。

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国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶

加谷珪一さんの新書『国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶』の最新情報をお知らせいたします。

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加谷珪一 経済評論家

仙台市生まれ。1993年東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。その後野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は、「ニューズウィーク」や「現代ビジネス」など多くの媒体で連載を持つほか、テレビやラジオなどで解説者やコメンテーターなどを務める。ベストセラーになった『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『ポスト新産業革命』(同)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)など著書多数。

加谷珪一オフィシャルサイト http://k-kaya.com/

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