一日一冊読んでいるという”本読み”のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選び、そして“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作ります。
そして、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」として、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長からも、一冊ご紹介。
* * *
元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリストが売りたい本
第4回 一穂ミチ『砂嵐に星屑』
こんにちは。本のミチを極めたいアルパカ内田です。
ままならない運命を刻みつけた一穂ミチの文学は、上質な演劇のように鮮やかに光と影を映し出し、華麗なマジックのように瞬時に時の流れを止めてみせる。日常を赤裸々に見せつけると同時に、目には見えない世界を眼前に差し出してくれるのだ。
物語は哀愁漂う中堅テレビ局が舞台である。過酷な業務のなかで夢を追いかけ、懸命にもがき続けるスタッフたち。世代を超えて絡みあう人間模様はあまりにも際どい。そして四つのストーリーからメディアの仕事の裏側が分かるばかりか、登場人物たちのむき出しの感情が心臓の鼓動とともにヒシヒシと迫ってくる。
映像的な視点にも注目してもらいたい。大阪駅北側の再開発地区からは「砂嵐」が感じられ、あべのハルカス上層階から鳥瞰すれば雄大な平野が眺められる。地を這う目線から空を見上げればまさに「星屑」が降ってくるようだ。垂直ばかりでなく水平にも視線は流れていく。震災直後に家から会社まで3時間の道のりを歩くシーンでは、街の空気、匂いや風とともに、人生も走馬灯のように駆け巡る。なんとドラマティックなのだろう。
生と死。男と女。偶然と必然。虚構と現実。相反した要素がいつしか溶けあい調和する。細やかな描写と大胆な設定によって、当たり前の景色が崩壊して新しい価値観が生み出されるのだ。研ぎ澄まされた感性はどこまでも透明で、発せられるメッセージはとてつもなく雄弁。読み始めたら決して抜け出すことのできない底なし沼のような魅力がここにある。

アルパカ通信 幻冬舎部の記事をもっと読む
アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
- バックナンバー
-
- 久々原仁介『海のシンバル』ラブホテルで働...
- 澤田瞳子『春かずら』父の仇を追う侍と、仇...
- 相場英雄『ブラックスワン』- 事件の背後...
- 伏尾美紀『百年の時効』-50年前の未解決...
- 2025年はこんなに豊作!本読みの二人が...
- 文学フリマや書店イベントなど、作家さんと...
- 昭和100年の節目の2025年、どんな小...
- 今野敏『白露 警視庁強行犯係・樋口顕』-...
- Z李『君が面会に来たあとで』-歌舞伎町を...
- 菊池良『本読むふたり』-“本”をきっかけ...
- 清水晴木『未来への人生ノート』- “就活...
- 宮田珠己『そして少女は加速する』- コン...
- まさきとしか『スピーチ』- 鍵を握るのは...
- 新川帆立『魔法律学校の麗人執事1 ウェル...
- 最東対地 『耳なし芳一のカセット テープ...
- 標野凪『独り言の多い博物館』- 思い出の...
- 伊東潤『鋼鉄の城塞ヤマトブジシンスイス』...
- 瀧羽麻子『妻はりんごを食べない』/河井あ...
- 岡本雄矢『僕の悲しみで君は跳んでくれ』/...
- 恩田陸『珈琲怪談』/賀十つばさ『ドゥリト...
- もっと見る










