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ゴルフは名言でうまくなる

2021.10.10 更新 ツイート

第194回

「プレッシャーというものは、それから逃げようとすればするほど襲いかかってくる」――阪田哲男 岡上貞夫

「このパットは外せない」と思った瞬間にプレッシャーが襲う

阪田哲男さんは、日本オープンのロー・アマを最多4回、関東アマでも最多の6勝など、アマチュアゴルフ競技のタイトルを100以上も獲得した日本を代表するアマチュア・ゴルファーだ。

日本アマでは6回も2位になっているが、惜しくも優勝には縁がなかった。1973年の日本アマでは16番ホールを終え、残り2ホールとなった時点で当時アマチュアの中嶋常幸プロに2打差をつけてトップに立っていた。しかし17番で池に入れてしまい、痛恨のダブルボギー。18番もボギーとして中嶋プロの優勝となった。

 

阪田さんは当時を振り返って、「メンタルが弱かったと言われればそうかもしれませんが、73年に日本アマとの縁がなくなったと思ってます。それから日本アマとなると異常なプレッシャーがかかるようになってしまいました。2位が6回ですから、日本アマ優勝6回の中部銀次郎さんを引き立ててるのは私かもしれません(笑)」と語っている。

まさに、プレッシャーと戦い続けて、そして勝てなかった日本アマなのだろうが、一方で「プレッシャーを自分にかけることが好きだったんです」ともおっしゃっている。他の試合では100勝以上もしているのだから、負け惜しみではなく、日本アマだけが特別だったようだ。

競技ゴルフをやったことがある人は知っていると思うが、普段はなんともなくできていることが、競技ゴルフでは突然うまくいかなくなることがある。

普段のラウンドでは30cmぐらいのパットだとOKにしているゴルファーは多いと思うが、それが競技になると必ずホールアウトしなくてはならなくなる。すると、片手で打っても入りそうなその30cmが、とても難しく感じてしまうのだ。

「こんな短いパットは外せない」――そう思った瞬間に、プレッシャーが襲ってくる。手や腕の動きがぎこちなくなって、ひどいときには30cmが届かないパットに終わることもある。こういう経験を何度も繰り返していると、忌まわしいイップスに罹患してしまうゴルファーも多い。

一般のアベレージゴルファーでも、会社のコンペなど試合形式のゴルフに出ると、大なり小なり似たような経験をすることはあるだろう。プロの試合やアマチュア競技のような本格的な競技ゴルフでなくてもプレッシャーが関わってくるのが、ゴルフというゲームなのだ。

30cmのパットを例に挙げたが、プレッシャーはパッティング以外でも襲いかかってくる。池やOBで左右が狭いホールでのティー・ショット、ウォーター・ハザード越えでグリーンを狙うアイアン・ショット、バンカー越えのデリケートなアプローチ・ショットなどなど、心理的にイヤな感じがする場面では、程度の差はあってもたいがいプレッシャーを感じるものだ。

「逃げのゴルフ」と「守りのゴルフ」は大きく違う

これらのプレッシャーと上手に付き合えないと、上級者になることはできないだろう。阪田さんは、プレッシャーから逃れようとすると、かえってプレッシャーに押しつぶされると、日本アマなどからの経験で思っておられるようだ。表題の言葉もその表れだろう。

プレッシャーから逃れようとすると、逃げのゴルフになってしまう。気持ちが逃げてしまっているゴルフだ。池やOBが目に入ってきて、怖いからと気持ちが逃げている状態でショットしているようなケースがこれに当たる。

そのような弱い気持ちのまま、「池を避けて反対方向へ打とう」「池に届かないように打とう」と思ってショットしても、逆玉が出て池にハマったり、ダフって刻みすぎになり、2打目も池が怖くなったりするものだ。

これが自分の技量に応じた明確な意思を持って、「池と反対サイドのフェアウェイのあそこへ打っていく」とか「セカンドショットは多少距離が残ってもユーティリティは得意クラブ。スプーンで打って残り180ヤードのポジションに打っていこう」というふうに戦略的に決断したのであれば、それは「逃げ」ではなく「守り」のゴルフになる。

怖いから避けておこうという気持ちで打っていくのが「逃げのゴルフ」、ホール攻略をマネジメントして、自分の技量でできる最適なルートを強い意志で決断し、危険を避けるのが「守りのゴルフ」といえばいいだろうか。

そのためには、日頃からプレッシャーと向き合う準備をしておくことも必要だ。上の例でいえば、ドライバーで狙い打ちしてラインを出すようなショットや、スプーンでのティー・ショットを事前に練習していなければ、ぶっつけ本番でなかなかうまくできるものではない。

最初に例に挙げた30cmのパットにしてもそうだ。日頃の仲間内との気楽なラウンドでも、OKをしないで最後まできちんと入れてホールアウトする。そうすれば、完全ホールアウトの競技に出たときでも、慌てずに済むのだ。

一般のゴルファーはラウンドの機会も少ない。短いパットをOKせずに最後までホールアウトしないのは、せっかく高いプレーフィを払っているのに、一番おいしいところを食べずに残してしまっているようなものなのだ。もったいないとは思わないだろうか。

苦しいときの集中力を養えば、スコアも崩れにくくなる

同じようなことはアイアン・ショットでもある。深いバンカーにグリーンの前側半分をガードされているようなとき、フェアウェイの絶好のポジションからバンカーを避けすぎてグリーンを外すゴルファーをよく見かける。

よっぽどバンカー・ショットが苦手で嫌いなのかもしれないが、結果的には難易度の高いアプローチ・ショットが残り、寄らずにボギーにするか、神経をすり減らすようなパットをやっと入れてパーを確保するかになる。いずれにしても、疲労感が増すだろう。

それでも、そのゴルファーにとってはバンカーに入れるよりはマシと思っているのかもしれないが、それでは逃げているだけで、いつまでたってもバンカー恐怖症から脱出できない。もったいないことだと思う。

ラフや難しいライからのアイアン・ショットなら、ミスの度合いも大きくなることがあるから、それを考慮してバンカーを避けたり、難しいアプローチになりそうな場所は避けたりする戦略も大事で、それは「守りのゴルフ」といえる。

しかし、フェアウェイの絶好のライからのショットならば、やはりオン・グリーンを狙うべきだ。守るにしてもグリーンの一番広い場所を狙うぐらいで、果敢にオン・グリーンを目指す。その結果、当たりが悪かったりしてバンカーに入ったとしても、それはそれ。「バンカー克服の練習になる」とポジティブに考えるといい。

このように、プレッシャーから逃げるのではなく、苦手なショットやしびれるパットを克服することで「自分にとってプラスになるはずだ」とプレッシャーに向き合って、はじめて上級者への道が拓けるのだと思う。

少なくとも、クラブ競技やコンペなどで「肩の力を抜いてリラックスしていこう」とか「今日は楽しんでゴルフをしよう」などと朝から言っているゴルファーは、すでにプレッシャーから逃げようとしていると感じる。

1日18ホールの長いラウンドのなかでは、プレッシャーは誰にでも、何度でも必ず関わってくるものなのだ。「一日中プレッシャー・フリーでプレーできました」なんてことは、ゴルフではあり得ないと考えたほうがいい。だから、プレッシャーが来たときに、逃げない心の準備をしておくことが大事なのだ。

プレッシャーというと、悪い影響につながるとばかり考えがちだが、逃げるのではなく、しっかりと向き合えばいいこともある。

先に述べた、プレッシャーと向き合うための準備、プレッシャーを感じたときのための練習もそうだ。向き合おうとすることで、メンタルの強さや技術的な向上を得ることにつながる。

また、プレッシャーと向き合って、なんとか頑張ろうともがき、なんとか踏ん張ろうと苦しんでいると、集中力が鍛えられるというメリットもある。ショットが不調で、なかなかパーオンしないような日でも、なんとかアプローチでワンパット圏内に寄せ、入れごろ外しごろのパットをねじ込む集中力が養われるのだ。

プレッシャーから逃れようとする「逃げのゴルフ」では、このような集中力は生まれない。プレッシャーと正面から向き合って、苦しいときの集中力が養われると、簡単には崩れない、しぶといゴルフができるようになる。そこには、開きかけたシングルハンディの扉が見えているはずだ。

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参考資料:
・阪田哲男『ゴルフ 阪田哲男の「シングルの流儀」』学研プラス、2020年
・「トップアマチュア 阪田哲男さんに迫る。」GDO、2007年5月10日

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岡上貞夫

1954年生まれ。千葉県在住。ゴルフエスプリ愛好家。フリーライター。鎌ヶ谷カントリークラブ会員。1977年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。大学入学時は学生運動による封鎖でキャンパスに入れず、時間を持て余して体育会ゴルフ部に入部。ゴルフの持つかすかな狂気にハマる。卒業後はサラリーマンになり、ほとんど練習できない月イチゴルファーだったが、レッスン書ではなくゴルフ名言集やゴルフの歴史、エスプリを書いたエッセイなどを好んで読んだことにより、40年以上シングルハンディを維持している。初の著書『ゴルフは名言でうまくなる』(幻冬舎新書)が好評発売中。

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