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2021.06.19 更新 ツイート

ヤクザの義理には金がかかる 山平重樹

度重なる暴対法の改正で人数も勢力も弱まっている「ヤクザ」。それでも、そこには「カタギ」とは違う文化が脈々と受け継がれているといいます。平成11年刊行の山平重樹さんの『ヤクザ大全 その知られざる実態』から、その一端を伺い知ることができるかもしれません。刺青や指詰め、男たちを結ぶ盃の意味、背負った代紋の重み、「シノギ」の方法、ヤクザと企業の関係……。今だから知りたい、当時のヤクザの流儀を抜粋してご紹介します。

義理がけ=冠婚葬祭

いまヤクザ社会で“義理”といったら、一般に義理がけ──冠婚葬祭を指すことになっている。

「明日の“義理”は何時だ?」

「明後日は“義理”が2つ入ってるな」

なんていう会話が、ヤクザ者同士の間でよくかわされているが、いずれも義理がけのことである。いわば、義理イコール冠婚葬祭ということになっているのだ。

(写真:iStock.com/pdiamondp)

ただ、その範囲は広く、襲名披露から兄弟盃、親子盃などの盃ごと、放免祝い、葬儀、法要、事務所開き、結婚式、ディナーショーにいたるまで、一般の冠婚葬祭より多種多様

このうち、ヤクザ社会で重要なものは、襲名披露や盃ごと、放免祝い、葬儀、法要などで、他は個人的なつき合いの範囲で行なわれていることが多くなっているようだ。とくに最近は当局の締めつけが厳しく、また業界の自粛もあって、めったやたらな義理がけや、ハデなものは行なわれなくなっている。

「昔は、若い衆の義理の兄貴の葬儀だとかなんとかいうものまで、チラシがまわってくることがあった。そういうんじゃ、当局から資金集めだなんていわれても、しょうがないくらい露骨だわな。さすがに最近はそういうのはなくなったな」(関東の組関係者)

 

また、10年ほど前、九州のある組織では、こんな趣旨の通知を業界に配布したこともあった。

「ディナーショーなど、任侠道にかかわりのないおつき合いをお断わりします」

義理がけはヤクザ社会ではそれこそ毎日のように行なわれているものだが、大変にカネのかかるつき合いである。それをつつがなく遂行できて、初めてヤクザ社会での対等のつき合いができるのだ。

それに応じきれなくなれば、組織は崩壊である。他組織との“貸し借りなし”の関係が、“借り”だけの関係になってしまい、どこも相手にしなくなってしまうからだ。

それだけに義理がけはこの世界で最も重要な務めの1つ。そのつき合いを一部放棄するというのだから、先の通達はかなり思い切ったものには違いない。

 

だが、その組織のいいぶんは筋が通っていた。

「昨今は本筋を離れたところでの義理ごとが多すぎる。芸能人のディナーショーとかはその最たるものだが、他にもまるで関係のないようなものがある。われわれの稼業でもっと大事なことは、襲名披露や放免祝いや盃ごとのはずだ。ディナーショーをやるのは大いに結構だが、自分の組内だけでやってもらいたい。そういうものにまでつき合わされるのはかなわん」

とはっきりしたものだった。

しかも、この組織はケチどころか、義理固さでは定評のあるところだった。

よそからまわってくる義理がけにはたいていつき合ってきた。逆に自分のところからはよほどのことでない限り、よそへは案内を出さない方針を貫いてきた。放免祝いさえ、身内だけで行なうという徹底ぶりだった。

「義理は尽くすが、義理は背負わない、つまりどこに対しても、“貸しはあっても借りはない”というつき合いかたをしてきただけに、そういう通知を堂々と出しても通用するわけです。これが、ふだんろくに義理には顔を出さないくせに、やたら自分とこの義理のチラシだけはまくというところだったら、笑われるだけですよ」(消息通)

義理がけで包むカネが月に数百万

この義理がけが、各組織や親分の実力度をはかるバロメーターにもなっているようだ。

組織力の違いによって、当然、祝儀不祝儀の金額にも違いが出てくる。かつ、繰り出す人員、お伴の若い衆の立居振舞い、あるいはどんなクルマに乗ってくるか──などでも、その組織の最近の台所事情までおのずと明らかになってくる。

親分の場合、どれくらい体を運んでいるかというのも、評価の対象になるであろう。

(写真:iStock.com/high-number)

よく義理がけに足を運ぶことで知られるのは、関東の名門博徒一家の某親分。

毎月半分以上は、その時間に当て、それこそ北海道から関西、九州までも足を伸ばす。関東近辺の近いところなら1日3件もまわることがあるという。その費用や、義理で包むカネも毎月数百万円をくだらないとか。

「どの義理場へ行っても、あの親分の顔が見られる。さすがにたいしたものだ」

との評価も、むべなるかな。

 

逆に義理がけの出席率の悪い親分は、評判がはなはだ芳しくなくなってくる。

「あのヤローはろくに義理にも顔を出さない。ロクなもんじゃない」

と男が下がるのだ。

そればかりか、次第につき合いも疎んじられ、この業界での立場はきわめて悪くなる。

「だいたい月のうちに、13日ぐらいは義理で時間をとられるかな。ナンバー2である私のほうが、かえってうちのトップより出ることが多いんじゃないかな。ここは親分が出るまでもない、私が代理で行ってすむだろうというものは、たいがい私が出てるからね。包む額はそれ相応のもの。つき合いで一番大事なことは、借りをつくらないということだね」

とは、東北の某実力親分。

 

この社会で最も重要で、華ともいえる義理がけは襲名披露だが、最近はたとえ大組織であろうが名門であろうか、かつてのような大がかりな襲名披露はできにくくなった。

当局の締めつけが厳しく、襲名披露はもとより、場合によっては葬儀さえ行なわせないというような地域もあるのだ。ひどいときには葬儀を執行している最中に、機動隊が介入して潰されるケースもあった。

「要するに当局は資金集めと見ているわけですよ。バカげた話ですよ。何が資金集めなもんですか。どこの組織だって、集まった香典は、葬儀にかかった諸々の実費を引いて、あとは全額を遺族に渡すのが、決まりみたいになってるんです。それにいただいたものは、いずれ同額を返さなきゃならんのです。われわれは葬儀をやる資格もない人間というのかね」

と関係者はフンマンやるかたないといった趣だ。

小指欠いても義理は欠いちゃならないのが、ヤクザの宿命なのだ。

関連書籍

山平重樹『ヤクザ大全 その知られざる実態』

一般社会から隔絶した想像を絶するヤクザ社会を徹底解説。博徒とテキヤの違い、男たちを結ぶ盃の意味、背負った代紋の重み、おとしまえのつけ方、日々の稼ぎ=シノギの方法、勢力分布図、そして一般社会にも活用できる強固な組織の作り方と管理・戦略論……知られざるヤクザ世界の実態と文化が分かるヤクザ入門書。

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