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令和版 仏の教え

2020.12.04 公開 ツイート

仏壇にお供えすべきものは何ですか?いつ下げたらいいのですか? 大谷光淳

西本願寺第25代門主・大谷光淳さんの新刊『令和版 仏の教え』は、仏教や浄土真宗にまつわる素朴な疑問に一問一答形式で答えた一冊。
「厄除けは必要ですか?」「キリスト教や神道についてどう思いますか?」「仏壇にお供えしたものは、いつ下げたらいいのですか?」「同じ仏教なのに、宗派が分かれているのはなぜですか?」など、誰もが一度は抱いたことのあるような疑問に、仏教の専門用語を使いすぎることなく、わかりやすく回答しています。

*   *   *

仏壇にお供えすべきものは何ですか? 毎朝、お花、お水、お茶、お線香、ご飯をお供えしたほうがいいのですか? お供えしたものは、いつ、下げたらいいのですか?

仏壇に関して種々ご質問いただいておりますが、ご質問にある「すべき」「したほうがいいか」という言葉に注目しながらお答えしたいと思います。

「すべきかすべきでないか」という問いは、「すべき」と「すべきではない」を分ける基準が大事になります。

たとえば、「小学生に携帯電話を持たせるべきか」という問いには、小学生の家族構成、習い事の有無、通学路を含む周囲の状況、友だちとの関係など、多様な基準から判断されると思います。

では、仏壇にお供えすべきものとすべきではないものを分ける基準は何でしょうか。それは、仏壇をどういうものと考えるか、です。「仏壇」とは、それぞれの宗派のご本尊をご安置する壇のことで、浄土真宗では阿弥陀さまがご安置され、その阿弥陀さまの浄土を表しています。亡くなられた方がおられる場所でも、亡くなられた方を顕彰する場所でもありません。ですから、お供えは、阿弥陀さまにお供えするにふさわしいもの、あるいは、阿弥陀さまの浄土にふさわしいもの、ということが基準になります。

さて、ここまで「お供え」という言葉を使いました。しかし、「お供え」という言葉は非常に広く、ご質問にあるような「お花」「お線香」などだけでなく、故人の好きだったお酒やタバコなど多様なものを含んでいます。そこで、お供えのうち、仏壇の「荘厳(しょうごん)」といわれるものについてご説明したいと思います。

まず最も大切なことは、浄土真宗において「荘厳」は、すべてのいのちをわけへだてなく慈しまれる阿弥陀さまのお徳のすばらしさを讃えるためのものと考えるということです。これを「仏徳讃嘆(ぶっとくさんだん)」といっています。ここでは、仏壇の荘厳の基本となる三具足(みつぐそく=蝋燭立〈ろうそくたて〉・香炉・花瓶〈かひん〉)に関して、ロウソクに火を灯し(灯)・お香を焚き(香)・お花を生ける(華)ことの意味についてお話しいたします。

まずロウソクに火を灯す理由です。火をつけると「明るさ」と「温かさ」が周囲に広がります。これはそれぞれ、ありのままの真実を見る阿弥陀さまの智慧(ちえ)と、あらゆるものを救う阿弥陀さまの慈悲を表しています。

次に、お香です。お香には、香の匂いをかいで、阿弥陀さまの浄土を想い、阿弥陀さまのお心に触れるという意味があります。先ほど、「かいで」といいましたが、経典ではほとんどお香を「聞く」と表現され、「嗅ぐ」とはいわれていないことに注目したいと思います。つまり、お香の香りをかぐことは、阿弥陀さまを敬い、そのみ教えを聞いていくという意味を含んでいるのです。

最後に、お花(華)です。お花は、私から阿弥陀さまへ、敬いの心からお供えし、そのご恩に感謝する気持ちを表すものですが、それだけではありません。仏壇の花は阿弥陀さまのほうではなく、私のほうに向けて置かれることから、私がお供えした花は、先に述べたロウソクの火と同じように、私に注がれている阿弥陀さまのお心を表しているのです。いのちを精一杯輝かせ咲いている花を通して、生かされているいのちに気づかせていただきましょう。

灯・香・華の意味から気づいていただきたいのは、私たちはあくまで阿弥陀さまへの敬いの心から仏壇を荘厳するのですが、それは「阿弥陀さまのお心」を表しているということです。そのため、お花に関してトゲや毒がある花、悪臭を放つような花は避けるべきです。また、造花もふさわしくありません。可能な限り季節に応じた生花を用いていただき、水の入れ替えや枯れないうちに新しい花と交換することを忘れないでいただきたいと思います。

次に「ご飯(お仏飯、おぶっぱん)」についてお話しします。西本願寺では、毎朝ご飯を炊いてお仏飯をお供えしています。

お仏飯をお供えすることは、インドでお釈迦さまに食事を捧げたことに由来するといわれます。伝えられるところでは、お釈迦さまは一日一食で、それも午前中に済まされたとのことです。

この故事にちなんで、いまでも朝のうちにお仏飯をお供えし、午前のうちにお下げします。したがってお仏飯は、毎朝ご飯が炊ければ一番にお供えし、午前中にはお下げいただき、お下がりとしていただくのです。

なお近年は、パン食や朝は食べないという方も多くなっていますので、そのような場合は、ご飯を炊かれたときには仏飯器によそってお供えしていただきたいと思います。

最後に、ご質問にある「水」ですが、水をお供えする理由として「仏さまや故人ののどを潤すため」といった言い方をされることがあります。これは、先ほどの仏壇のとらえ方からすれば否定され、水やお茶をお供えする必要がないことは理解いただけると思います。

関連書籍

大谷光淳『令和版 仏の教え 阿弥陀さまにおまかせして生きる』

「どんなに辛く悲しい状況に置かれようとも、私はあなたを決して.見放さない」。 仏教、浄土真宗に対する素朴な疑問から仏教の本質に迫る質問まで、 読者に寄り添いながら一問一答形式でわかりやすく答える。

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大谷光淳

1977年、京都市生まれ。浄土真宗本願寺派(本山・本願寺)第25代門主、本願寺住職。法名は釋専如(しゃく・せんにょ)。第24代門主大谷光真(釋即如)の長男として生まれ、2000年、法政大学法学部卒業。2005年龍谷大学大学院文学研究科博士課程単位取得。龍谷大学文学部非常勤講師、中央仏教学院講師を経て、2008年、本願寺築地別院副住職。2014年6月、法統を継承し門主、本願寺住職となる。2010年よりボーイスカウト日本連盟特別顧問、2017年より全国教誨師連盟総裁、2020年より全日本仏教会会長。著書に『ありのままに、ひたむきに 不安な今を生きる』(PHP研究所)がある。

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