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雨の日は会社を休もう ~アフリカから学んだ人生で大切なこと~

2020.11.18 更新 ツイート

職業に貴賤なし

好きなことを仕事にしなくてもいい 大山知春

アフリカ・ガーナで現地法人を設立し、そのサービス開始直前、
31歳で舌癌を患い日本への帰国を余儀なくされた大山知春さん。
苦しい闘病生活、起業途中での挫折。
そんな彼女の心に支えになったのが、ガーナで触れた人々の生き方でした。
様々な「思考の呪縛」にとらわれず「今この瞬間を生きる」を実践するガーナの人。
昨日より、少し人生が楽になる考え方を紹介していく連載エッセイです。

*   *   *

 

ガーナ独特のお仕事

炎天下の中、住宅地を歩き回り、大きなバケツを頭にかついで、フルーツを売って歩く女性がいる。

ガタガタのアフリカの道路では、荷台を引くよりも、頭に乗せる方が、利便性が高いらしい。こういう行商は、毎日同じルートを通ることが多い。

一度、試しに買ってみたら、その場で、素手で触れることなく、上手にナイフでフルーツを切って、ビニールにそのまま入れてくれた。

新鮮で衛生的なカットフルーツだ。

マンゴー、パパイヤ、パイナップル、どれもとても美味しかったので、通るときには、毎日寄ってほしいとお願いした。

自分でフルーツを選ぶと、熟れていなかったり、傷んでいたり、失敗することがあるのだが、さすが、プロはマーケットでのフルーツ選びも上手だなと感心した。

炎天下の中、重い荷物をかついで歩き回る仕事は、大変だ。

 

一方で、とても楽そうに見える仕事もある。

門番だ。

低所得者は、敷居もなく小さな住宅が密集するが場所に住むが、中所得者以上は、コンパウンドといって、敷地が壁で仕切られた一軒家などに暮らす。

更に、裕福になると、車や人の出入りの度に門を開けるセキュリティ兼の門番を雇う。

セキュリティといっても、日中、出入りがないときは、みんな昼寝をしているので呑気だ。

職業に貴賎なし

「門の開閉だけで他にやることがないなんて、そんな仕事、退屈すぎて考えられないよ。可哀想に。あんな仕事を一生続けるなんて」

何の話の流れだったか、あるイベントで知り合ったヨーロッパ人男性が、そう言い放ったのを覚えている。

確かに、暇疲れするとは思うけれど、なんだがその言い方が、無性に気に入らなかった。

贅沢はできなくても、家族を養うことができていれば、本人は、満足しているのかもしれない。

仕事でのストレスがなくて、幸せかもしれない。

その何が可哀想なのだろう。

自己実現だとか、好きなことを仕事にするだとか、働き口がたくさんあるような社会では、副次的な要素が重要視されるようになってくる。

でも、仕事とは、本来、自分や家族を養うためのものだ。

食べるために働く。

それが本来の仕事だ。

哀れまれる必要なんかない。

「職業に貴賎なし」という考え方は、欧米にはない日本の美徳だと思う。

まずは、食べること

共同設立した現地法人MindNET Technologies Ltd. は、当初、ZOZO TOWNのようなECビジネスの展開をガーナで目指していた。

ウェブサイトが完成した時点で次の資金調達を行うはずが、私が舌がんを患い、日本に帰国しなくてはならなくなったため、計画が崩れてしまった。

欧州の大手企業も同時期にガーナでECビジネスに参入し始めていたが、毎月数千万円のマーケティング費用をかけて、売上は7桁にも届かないような状況だと判明した。

新しいマーケットを作るには、計算できない膨大な資金が必要なのだ。

ECビジネスの継続は断念した。

その後、それまでのチームは解散し、マーケットリサーチなどコンサルティングを中心に仕事を取り始めた。

現金が尽きてしまったので、元手なくできる仕事をする必要があったからだ。

ビジネスパートナーのカールは、大好きなテクノロジーで社会にポジティブなインパクトを与える仕事がしたいという想いを、学生時代からずっと抱えていた。

けれど、何しろ食べていかなくてはならないので、最初は、来る仕事は何でも引き受けた。

様々な分野の案件を扱ううちに、サステナブルで将来性も高い再生エネルギーセクターをコンサルティングの主軸にしようと決めた。

そうして、再生エネルギーセクターの人脈が少しずつ増えていき、専門性を養った。

ガーナ副大統領の中国訪問に帯同したこともあった。

この頃には、私も日本から現地の仕事を手伝うことができなくなり、カール一人で大量の事務をこなさなくてはならず、アシスタントが必要になった。

アシスタントと言っても、レポートが書けるレベルになると、かなり高い教養がないといけない。

そんな人材を探していた時に出会ったのが、アブドラだった。

当時、彼は、ECビジネスの時に付き合いがあったマーケティング会社で働いていた。

スウェーデンで、環境学とサステナビリティ・サイエンスの修士を取得した彼は、もちろん、興味のある環境やサステナビリティに関係する仕事に就きたいと考えていた。

しかし、ガーナでは、そもそもそのような仕事をする会社自体が少ないし、たとえ高学歴でも職務経験がないと就職は厳しい。

1000人ぐらいの履歴書を見たが、うちに合うとピンときたのは、彼が初めてだった。

雇っても、3日や1週間で辞めていく、というか来なくなる人が多い中、彼とは、もう3年以上の付き合いになる。

試行錯誤の末に見つけた新しいビジネスモデル

ソーラーパネルの設置事業なども始め、切実に感じたのは、ガーナは電気料金が高いので、マーケットの需要はあるけれども、みんなまとまった資金がないから行えないということだった。

何件か分割などで対応したが、対応できる件数は限られている。

そこで、「Clean Energy, Environment and Development Initiativesファンド」 を設立して、割賦販売できるようになれば良いのではないかと考えた。

ガーナの現地法人には、私の知人である日本人個人投資家2名に投資してもらっていた。

時間でチャージをするコンサルティングでは、投資家に利益が還元できるようにはならないというジレンマを抱えながらも、資金枯渇のため、日銭を稼いで凌ぐ状況が数年続いていた。
 
2018年、カールがこのアイデアを海外にアピールした。

アイゼンハワーフェローシップという、専門分野の視察や交流・意見交換を行う機会を提供する2ヶ月間のグローバル・プログラムに参加することになったのだ。

アイゼンハワー財団が、世界から様々な分野の中堅リーダーを米国へ招待する。

ここで得た人脈から、既に同様のファンドを設立していて、ガーナでソーラーパネルの設置を行いたいが、現地で大手企業との契約を見つけ、クローズする人材がいないので、依頼がかかった。

実際に、こうした外部案件で経験を積み上げた後に、自社で資金を募り、ファンドを設立するのが目標だ。

好きなことを仕事にするというプレッシャー

好きなことが見つからないと悩む人がいるが、好きなことを仕事にしなくてはいけないと思っているから、悩むのだ。

好きなことが仕事にできたら、もちろん、素晴らしい。

でも、好きだという情熱と、それだけでなく、マーケットの需要と、自分のスキルの全てが交差しなくては、食べてはいけない。

それには、長い時間がかかる。

今、好きなことを仕事にしている人は、それまで、食べるために働きながら、スキルを養った時期がある。

2020年夏、コロナウイルス問題で最悪に景気が悪い中、「ようやく自分のやりたいと思えることができるようになってきた」と、カールはこれまでになく、ワクワクしていた。

ガーナに行って蒔いた種が、ようやく芽吹き始めた。

カールは、大学生時代から18年間、アブドラも10年間かかって、ようやくやりたいことを仕事にでき始めていた。

焦らず、まず、仕事とは、自分や家族を養うものだと割り切ること。

その上で、そこから、少しずつ始めることだ。

目の前のことに一生懸命に取り組むと、自然と点と点が繋がって、道になる。

一見、無駄だと思えるようなことでも、振り返ってみると、無駄なことは、一つもないから。

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雨の日は会社を休もう ~アフリカから学んだ人生で大切なこと~

アフリカの自然生まれのセルフケアブランド「JUJUBODY」を手掛ける大山知春さん。

31歳の時、アフリカ・ガーナで現地法人を設立し、サービス開始しようとした矢先、舌癌を患い日本への帰国を余儀なくされた、大山知春さん。

いつ抜け出せるかわからない闘病生活、起業途中での挫折。
そんな時に心を癒してくれたのが、ガーナで触れた人々の生き方でした。

様々な「思考の呪縛」に取り払い、今この瞬間を生きることで、
とても楽に生きられるようになったといいます。

ポストコロナで、新しい生き方、働き方が注目される今、
日本で生きづらさを感じ悩みながら生きている人におくるエッセイです。

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大山知春 VIVIA JAPAN株式会社代表取締役

VIVIA JAPAN株式会社代表取締役。
成蹊大学卒業後、みずほ銀行に就職。 その後、外資系金融コンサルティング会社など、 計7年金融業界で働いた後、オランダのNyenrode Business Universiteit にてMBA取得。 2013年、ガーナ人のクラスメイトと共に、日本人女性としては初めてガーナで 現地法人MindNET Technologies Ltd. を設立。サービスローンチ直前の 31歳で舌がんが見つかり、ガーナでの生活断念を余儀なくされる。
医師に、予防法はなく、 転移したら対処するしかないと言われたことから、絶対に転移させないようにしようと心に決め、食事療法を調べ、体質改善を図る。
「体に取り入れるものが体を作る」という考えに辿り着き、この頃から、 ガーナで知った伝統医療に用いられる「モリンガ」を食事と美容に取り入れるようになる。 2015年末、「モリンガ」の素晴らしさを伝えるため、アフリカの自然生まれの ナチュラルスキンケアブランド「JUJUBODY」を立ち上げた。 世界30カ国以上を旅し、日本を拠点に、ヨーロッパ、アフリカを飛び回る生活を送る。著書に『奇跡のモリンガ』(幻冬舎)。

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