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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2020.08.30 更新 ツイート

第138回 1時間ちょっとテレビ いとうあさこ

今年43回目となる「24時間テレビ」。私は『日本全国音色を重ねるイッテQ! 女芸人リモートレコーダー合奏』と言う企画に参加。何でも全国の子供たちとリモートで合奏するとの事。いやいやいやいや。こちとらリモートでの合奏、合唱は不可能と聞いておりますよ。だから春に大久保さんと本田兄妹あやのちゃんとやった“リモート飲み生配信”の時だって、大久保さんがずっとやりたかった“ハモネプみたいな事”を諦めたんですから。いくらやってもズレてしまい、「じゃあいっその事、輪唱しよう!」ってなったけど、結局それもズレまくりで。ちゃんと“不可能”を体感しているんですから。

あともう一つ問題が。参加する子供たち、リコーダー、めちゃ上手。全国大会レベルだったり、ソロで金賞とったりしているとの事。いやいやいやいや再び、ですよ。確かに私たちも「イッテQ!」で4月にリコーダーやりましたよ。やったけどあれから数ヶ月。おばちゃん達、忘れちゃっています。と言うかそもそものレベルが“月とすっぽん”ですしね。なのに企画を告げられたのは本番10日前。ふんどしこそ履いてないので絞め直せませんが、気分はまさにそれ。かなりの凄い子たちとやる上に、うちらは恐ろしくも国技館で生演奏。しかもみんな、今回のコロナで行く予定だった全国大会が中止になる、と言う悔しく悲しい思いをしていて。その大会も3月だったので最後の大会に出られず卒業した先輩の気持ちも背負い、今回参加を決めてくれたそうで。本当に本当にちゃんとやらねば。

そっからのおばさん達の“よしやるぞ”はすごかった。なかなか全員揃うのは難しかったですが、出来うる限り連日リハーサル室に集まっての練習三昧。私は今回もピアノでの参戦で。「イッテQ!」の時は自宅の電子ピアノで演奏しましたが、今回は国技館に何やら“すごい”グランドピアノがあってそれを弾くらしく。となるとやはり家にある電子ピアノじゃ鍵盤の重さが違うので、本番の“すごい”ヤツではないですがリハ室にグランドピアノを用意していただき弾きまくった。

今回、曲はディズニーメドレー。柔らかいメロディの「ホール・ニュー・ワールド」から始まり、「エレクトリカルパレード」「アンダー・ザ・シー」の全3曲。特にラストの「アンダー・ザ・シー」は盛り上がっていく分、鍵盤を強めにたたくもんで50歳の手首は2時間ほど弾いていると「キャー!」と聞こえたんじゃないかってくらい、しっかり悲鳴をあげてくる。両手首に肌色の湿布を貼った姿は情けないけど仕方ない。とにかくみんなの足を引っ張らぬよう、繰り返し練習あるのみです。

とは言え朝から晩まで稽古している日はやっぱり途中、キャイのキャイのしちゃいますよね。だって女の子だも……すいません。おばさん達の井戸端会議です。最初は「練習大変だ」から始まって。「子どもたちは夏休み、家でどうしてるの?」とか。「ぬか漬けでまだキュウリやってないならやった方がいいよ。最強。」とか。

そっからだんだん健康の話へ。誰かが「最近ココが痛いんだけど」と言えば「あ、いいお医者さんいるよ」「そこ私も行ったけどめっちゃ痛いよ」「でも超効くんだよ」。一番盛り上がる。他にも大島ちゃんがNiziProjectの曲を何曲も流して“それっぽいダンス”踊ったり。

あと“オカリナ大食い事件”なんてのもあったなぁ。その日は5、6人で自主練していて。お腹すいたのでお昼にUberEatsでお弁当を頼むことにしたんですが「今日は途中でお昼いらないようにめっちゃ朝ご飯食べてきて超お腹いっぱいです」と30分前に言っていたオカリナがまさかの“ご飯大盛り”“コンビニのミニ冷やし中華追加”という暴挙に。しかも「お腹いっぱいでこれだけ美味しいんだから、お腹すいてたらもっと美味しいんだろうな」だって。最高だぜ、オカリナ。

そんなこんなで本番当日の朝。私はラジオの生放送の後、リハの為に国技館に向かった。途中、車で通る道がなんか見覚えあるな、と。そうです。昨年走った道でした。もう国技館の近くに来た時は記憶があまりないけれど、あの暑さともの凄い数の人が応援に来てくださっていたのは忘れない。そんな事を思い出して、ちょっと胸がギュッとなりながら国技館入り。

本番のピアノは想像以上に立派で。鍵盤は象牙で使い込まれた色。お稽古に使っていたグランドピアノだってなかなかでしたが、更に鍵盤の重みがあり。音色も柔らかいので弾き方もちょいと変えていくか? と知らないピアノにただただアタフタしまくりんぐ。そんな事はお構いなしに時は過ぎ、気づけばあっと言う間に本番タイム。

リモートで各所が映し出されると、うちらとお揃いのバンダナをみんなもしていて。髪に結んだり、腕に巻いたり、大きなリコーダーの人は笛につけたり。ホントにちょっとの事だけど、“一つ感”が嬉しかった。三重県の小学生11人、新潟県佐渡の中学生8人、北海道のリコーダー3兄妹、そしてうちら12人の総勢34名。あ、あと途中ひとっぷし吹いた羽鳥さんもプラスしたら35名が4カ所からリモートで奏でたリコーダー合奏。

正直この先どうなるかわからない不安があったり、暑い夏なのにフェイスシールドをつけての練習など、本当に大変だっただろうに、みんなの出す音は優しくて、楽しそうだった。あさこおばちゃんは緊張のあまり、最初の方で指が引っかかっちゃったのが悔やまれるが、とにもかくにも素敵な時間だったのは間違いない。そしてこうやってリモートで話をしたり合奏をしたり出来る世の中になったんだなぁ、と発展していく未来のひとかけらをおばあちゃんのようにしみじみと噛みしめたりして。結局うちらの出番は24時間中“1時間ちょっと”でしたが、いっぱいいっぱい“楽しさ”や“夏らしさ”を感じられる濃い時間になりました。

北海道、佐渡、三重のみんな、本当に本当にありがとう。すごくすごく素晴らしかったよ。ただやっぱり次は直接会って、ちゃんと息を合わせて演奏したい。そんな日が早く来たらいいなぁ。

 

【本日の乾杯】仲良しの大久保さんに美味しそうなレモン入りオリーブオイルを頂戴しまして。それについていたレシピメモから“海老とトマトのサラダ”を作ってみました。茹でた海老とプチトマト、みじん切りのタマネギにオイルと塩コショウだけ。暑い夏にさっぱり。最高でやんす。

関連書籍

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

寂しいだか、楽しいだか、よくわからないけど、日々、一生懸命生きてます。 人気芸人の、笑って、共感して、思わず沁みるエッセイ集。

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