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右翼と左翼

2020.08.06 公開 ポスト

「右翼」と「左翼」の違い、説明できますか?浅羽通明

インターネット上で飛び交う、「ネトウヨ」「パヨク」といったワード。しかし、そもそも「右翼」「左翼」の違いをきちんと理解しているのでしょうか? 評論家、浅羽通明さんの著書『右翼と左翼』は、フランス革命から現代へといたる歴史をひもときながら、その定義や「ねじれ」を鮮やかに解説した一冊。知らないで使っていると恥ずかしい、「右翼」「左翼」という言葉の本当の意味がわかる本書から、一部をご紹介します。

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「右」と「左」の基本思想

ようやく「右、右翼」と「左、左翼」の本質、根幹がある程度、体系的に見えてきたようです。この基本的な「体系」を簡潔に説いたものとして、朝日新聞社刊『朝日現代用語知恵蔵』2006年版、「日本政治」の章、「左翼/右翼」の項目があります(執筆は山口二郎氏)。これも参考にしてまとめてみましょう。

(写真:iStock.com/Derek Brumby)

「左」「左翼」は、人間は本来「自由」「平等」で「人権」があるという理性、知性で考えついた理念を、まだ知らない人にも広め(「啓蒙」)、世に実現しようと志します。これらの理念は、「国際的」で「普遍的」であって、その実現が人類の「進歩」であると考えられるからです。

ですから、現実に支配や抑圧、上下の身分、差別といった、「自由」と「平等」に反する制度があったら、それを批判し改革するのが「左、左翼」と自任する人の使命となります。ゆえに多くの場合、「改革派」「革命派」なのです。

また、そうした改革、革命は、支配や抑圧、身分の上下、差別によってわりを食っていた下層の人々の利益となるはずです。ゆえに「下層階級」と結びつきます。以上の前提には、「政治や経済の仕組みは人間の手で作りかえることができる」という考え方があります。

 

対するに「右」「右翼」は、「伝統」や「人間の感情、情緒」を重視します。「知性」や「理性」がさかしらにも生み出した「自由」「平等」「人権」では人は割り切れないと考えます(「反合理主義」「反知性主義」「反啓蒙主義」)。

ゆえに、たとえそれらに何ら合理性が認められないとしても、「長い間定着してきた世の中の仕組み(「秩序」)である以上は、多少の弊害があっても簡単に変えられないし、変えるべきでもない」と結論します。

こうした「伝統」的な世の中の仕組みには、近代以前に起源を有する王制、天皇制、身分制などが含まれ、それらは大方、「階層的秩序」「絶対的権威」を含んでいます。

「右、右翼」と称する人は、それら威厳に満ちた歴史あるものを貴く思って憧れる「伝統的感情」を重んじ(「歴史主義」「ロマン主義」)、そんなものは人権無視で抑圧的で差別の温床だなどとさかしら(「知性的」「合理的」「啓蒙的」)に批判する左翼らが企てる「革命」「改革」から、それらを「保守」しようと志します。

ここで「保守」すべき「歴史」「伝統」は、各国、各民族それぞれで独自のものとならざるを得ないので、「右」「右翼」はどうしても「国粋主義」「民族主義」となって、「国際主義」「普遍主義」と拮抗するようになります。

「市場原理主義」は右か、左か

ここまで総合的、体系的にまとめてみると、「右、右翼」「左、左翼」が、どういう「ものさし」の両端なのかが、どうやら見えてきたのではないでしょうか。

すなわち、「自由」「平等」といった価値をより実現しようとする思想、政治的立場ほど、「左寄り」なのです。それらがよからぬものとして否定し覆そうとする「伝統的秩序」を、より尊重し守ろうとするほど、「右寄り」なのです。

しかし、ここまで「ものさし」が明らかとなっても、やはりまだまだ「わからない」感が残りそうです。

(写真:iStock.com/electravk)

たとえば、市場原理主義というのがあります。竹中平蔵大臣らがブレーンとなった小泉純一郎政権の構造改革なども、この一種と見られていましたね。小さな政府をよしとし、規制撤廃を図り、社会福祉を削減、自己決定・自己責任の世の中を目指す考え方。

これは、「右」なのか「左」なのか。「自由」を徹底させているようだし、既得権の否定などは「平等」実現にも思える。では「左」でしょうか。しかし「格差拡大」を容認するなどは、反平等ですから「右」のようでもあります

あるいは、「人権」をはじめ、国民の「自由」を抑圧して、ついに崩壊した旧ソ連など、「社会主義」の国は、「右」「左」、いったいどちらなのでしょうか。

また、「民族」の「伝統」を尊重するのは「右」となるはずですが、それでは、他の民族に支配され、抑圧され、差別されている少数民族、被支配民族が、自分たちの「自由」獲得、他の民族との「平等」を求め、「民族解放」を目標として、自分たちの「国家」を建設しようとする戦いへ向けて立ち上がる運動、たとえば昔のベトナム解放戦争、現在ならば、クルド人やチェチェン人の闘争は、「左翼」なのでしょうか。「右翼」なのでしょうか

「自由」「平等」へ急進する(左翼)。「伝統的権威、階層」を保守する(右翼)。この両端の間をどう捉えるか。実はこれは、「右─左」「右翼─左翼」という一直線上に諸思想を位置づける考え方を、歴史に即して、より具体的に知らなければ難しいのです。

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続きは幻冬舎新書『右翼と左翼』をご覧ください。

関連書籍

浅羽通明『右翼と左翼』

「もはや右翼も左翼もない時代」といわれる。が、依然「右‐左」のレッテルはさまざまなものに貼られている。しかし「では右って何?左って?」と訊かれると答えに窮する。「右‐左」の対立軸は何か?なぜ「上‐下」「前‐後」ではないのか?定義はもとより世界史的誕生の瞬間から派生まで、影響された日本の「右‐左」の特殊性から戦後の歪み、現代の問題点までを解き明かし、ここ百数十年の世界史とそれに巻き込まれた日本の歴史がわかる画期的な一冊。

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浅羽通明

1959年、神奈川県生まれ。「みえない大学本舗」主宰。著述業、法政大学非常勤講師。81年、早稲田大学法学部卒業。

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