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空がおしえてくれること

2020.08.10 公開 ツイート

六甲おろし、浜風。“2大風”が生む甲子園球場のドラマ 蓬莱大介

『情報ライブ ミヤネ屋』『ウェークアップ! ぷらす』でおなじみ、気象予報士の蓬莱大介さん。「毎日を大切に一生懸命生きること」や「伝えること」を大切に、天気予報を届けているという蓬莱さんの著書『空がおしえてくれること』には、空の面白さや不思議さに加え、自然災害の脅威から身を守る方法がわかりやすくまとめられています。その中から、意外と知らない天気予報のことや、これからの時期に役立つ内容をご紹介します。

*   *   *

風で流れが変わるものといえば?

天気に変化をもたらす風。

人生も、転機が訪れた時に「追い風が吹く」「向かい風が吹く」なんて表現しますよね。

僕でいうと、芽の出なかった俳優時代は「逆風」が吹いていましたが、今は天職に出会えて、ようやく「順風満帆」といったところでしょうか……!?

スポーツの世界も、流れが変わる瞬間ってありますよね。

(写真:iStock.com/bee32)

大阪に住んでいる僕は、たまに甲子園球場へ野球観戦に行きます。野球は、ワンプレーでガラッとゲーム展開が変わるので面白いですよね~。

とはいいつつも、僕は職業柄、プレーを見ながら「あっ、これはあの風が影響しているのかな?」と考えたりしています。

ドーム以外の野球場にはその土地特有の風が吹いていて、それが影響してゲームが動くことがあるんですよ。しかも、甲子園球場は、風の影響を受ける代表的な球場のひとつなんです。

どういうことかというと、兵庫県西宮市の甲子園球場は、六甲山系の山々が北西側に、海が南側にあります。球場内の位置関係でいうと、ホームベース側は北にあたり、バックスクリーン側は南にあたります。

この六甲山からくる「六甲おろし」と海からの「浜風」が、甲子園球場のドラマを生む“2大風”なんですね。

甲子園球場に吹く名物風「六甲おろし」

六甲おろしと聞いて、「六甲おろしに颯爽と~♪」とメロディーが頭の中に流れた人も多いのではないでしょうか?

関西に住んでいれば、とりあえず最初のワンフレーズは歌えるはずです。関西在住の巨人ファンの方、すみません……。

(写真:iStock.com/gyro)

とまあ、そんな阪神タイガースの応援歌のタイトルにもなっている六甲おろし。

おろしとは漢字で「颪」と書きます。風の上に「下」という漢字がのっかっているように、主に冬季に山の上から吹き下りてくる冷たい風が「おろし」です。

冬の風……? と疑問に思われるかもしれません。

そうなんです。冬に吹く北風なので、野球のシーズン中はあまり吹きません。なのに、なぜ応援歌のタイトルにもなって、ファンに愛されているのでしょうか。

それは、六甲おろしが北からの風だからでしょう。つまり、攻撃するバッター側にとっては「追い風」になるわけです。

阪神タイガースのファンは、7回の攻撃の時には風船を飛ばし、『六甲おろし』を歌います。そしてタイガースが試合に勝った日には、「このままあしたも『追い風』に乗ろうや~」という景気づけに、『六甲おろし』を歌いながら帰路に就くのです。

勢いに乗せてくれる攻めの風というのが、いかにも関西人の気質にあっているような気がします。それが愛される理由なのでしょうね。

気象の面から補足すると、冬に吹く風ではありますが、夏場にも六甲山のほうで積乱雲が発達して、甲子園球場方面へと流れてくることがあります。

もし、真夏なのに神戸市方面や西宮市方面において六甲おろし(北風)が吹き出したなら、雨雲が山のほうから近づいてきている兆しなので、ご注意ください。

甲子園野球の運命を握る「浜風」

もうひとつ、阪神戦や甲子園でドラマを生む風、それが「浜風」です。

ライト方向(一塁側)からレフト方向(三塁側)へと吹く「浜風」は、夏の時期、朝から暑い日ほど、お昼以降に強まります。

甲子園球場で野球を見ていて、もし、スコアボードの上の旗が三塁方向にたなびいていたら、ドラマが生まれる合図です。

その後のプレーで、レフト方向の打球が予想以上に伸びたり、センター・ライト方向の打球が予想以上に手前に落ちたりするかもしれません。

(写真:iStock.com/gyro)

プロ野球選手に聞いたのですが、浜風が強いと、上がったボールが流されるだけでなく、風に乗って0(レイ)コンマ何秒かボールが落ちてくるタイミングがズレるそうです。すると、甲子園球場に慣れていない高校球児は、グローブを0(レイ)コンマ何秒か早めに閉じてしまって、落球につながることがあると。

高校野球で「甲子園にはドラマがある」なんて言われますが、それは目には見えない「浜風」がゲームのカギを握っているのかもしれませんね。

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この続きは書籍『空がおしえてくれること』をご覧ください。

関連書籍

蓬莱大介『空がおしえてくれること』

晴れなら予報が外れても、誰にも怒られない"能天気キャスター"!? 突然の雨に降られても、ビニール傘の買えない苦労……。雨にも負けず、風にも負けず、宮根さんのイジリにも負けぬ!! お天気お兄さんとしての面白みと苦労、空への視点をコミカルにつづった1冊。

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空がおしえてくれること

『情報ライブ ミヤネ屋』『ウェークアップ!ぷらす』でおなじみ、気象予報士の蓬莱大介さん。「毎日を大切に一生懸命生きること」や「伝えること」を大切に、天気予報を届けているという蓬莱さんの著書『空がおしえてくれること』には、空の面白さや不思議さに加え、自然災害の脅威から身を守る方法がわかりやすくまとめられています。その中から、意外と知らない天気予報のことや、これからの時期に役立つ内容をご紹介します。

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