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ゴルフは名言でうまくなる

2020.06.21 更新 ツイート

第139回

「私は普通の速さのグリーンでは必ずカップの先を狙う」――ボビー・ロック岡上貞夫

届かないパットは当然入らない

ビッグ3の一角、南アフリカの黒豹ことゲーリー・プレーヤーの師匠でもあるボビー・ロックは、パッティングの名手として当時右に出るものはなく、抜群の安定感を発揮していた。

1957年の全英オープンは、スエズ運河の閉鎖によって開催が危ぶまれていた。石油の供給が滞り、イギリスは深刻な石油不足に陥っていたのだ。

燃料不足により、The Openの開催に必要な物資の運搬、選手やマスコミ関係者およびギャラリーの搬送が難しくなっていた。そのため、供給のパイプが細いミュアフィールドでの開催を断念、軍がサポートしやすいセント・アンドリューズに変更された。

万が一に備えて、軍が大会本部の裏に石油燃料の入ったタンクを山積みにしたというから、イギリス人の全英オープンに対する執念はすさまじい。

ボビー・ロックは終生愛用したL字型パター「ガラガラ蛇」を駆使して、この全英オープンで4回目の優勝を目前にしていた。

 

最終18番ホール、2位のピーター・トムソンに2打の差をつけてグリーンに上がってきたロックは、他のプレーヤーのライン上にあった自分のマークをずらした。

しかし、優勝スピーチでも考えていたのか、ロックはマークを本来の場所へ戻さないまま、そのバーディパットを「つい、うっかり」打って、しかもそれが入ってホールアウトしてしまったのだ。

3打差をつけて優勝と思われたが、しばらく時間が経ってから誤所からのプレーと判明。現在なら、このプレーに対し2打罰が下されるだけなので、なんとか1打差で優勝となるが、当時のルールでは失格になるところだ。

しかし、記録ではロックが3打差のまま優勝と残されている。ルールの総本山R&Aは、「誤所からのプレーだったが、本来の位置よりカップから遠くへ動かしているので有利にはなっていない」と粋なはからいをしたのだ。

失格による優勝の剥奪を覚悟していたロックは、おそらくバケツ一杯ぐらい冷や汗をかいたことだろう。

そのパッティング名人のロックは、表題の名言のとおり、特別に速いグリーンを除いては、常にカップの先を狙っていたというのがさすがである。

届いているパットには、入る可能性があるということだ。ショートするようなタッチのパットは、絶対に入らない。これは物理の当然である。ロックはこう続けている。

「カップの手前6インチから12インチを狙うのは、グリーンがひどく速い場合だけだ」

距離感の微調整にメソッドはない

名手たちはいかにして、「届くタッチ」を実現しているのだろうか?

「カップをオーバーするくらいに強く打つのは相当勇気を要するが、ロング・パットが入るときは、ほとんど大多数の場合強く打ちすぎたと思うときだ。臆病なパットにはチャンスはない」(アーノルド・パーマー)

パーマー・チャージの異名をとった彼が言うように、誤って強く打ちすぎたときに、「入ってしまった」ということもたしかに多い。

しかし、タイガー・ウッズの優勝試合ダイジェスト「TIGER WINS~タイガー・ウッズ8426日の軌跡~」(ゴルフネットワーク)を見ていると、タイガーを含め多くの優勝にからんでくるプロはいい加減のタッチで打っているし、強すぎるといっても、かなりのロング・パットでさえ、せいぜい2mオーバーぐらいで済んでいる。

その距離感は、もちろんアンジュレーションの読みが優れているということは間違いないが、タッチについてはまさに感覚的なもので、そのプレーヤーにしかわからない。言葉で表現できるようなものではないのだ。

「ロング・パットのことは、私にはわからない。やれることは、ただよいストロークをして、あとは祈るだけだ」(ゲーリー・プレーヤー)

ロックの弟子がこんな名言を残すぐらいだ。他の名手も似たようなことを言っている。

「私にとってゴルフのたえざる不思議のひとつは、いかにして誰もが長いアプローチ・パットに与える力の分量を計測しているか、ということだ」(キャリー・ミドルコフ)

このように、カップを少し通り越すぐらいの、ちょうどいい具合の加減で距離感を出したパッティングをするのは「摩訶不思議」なことで、メソッドはないのだ。

それでも、一流と呼ばれるプロはもちろん、アマチュアでも見事な距離感を出せるパッティングの名手はいる。また、子どもはその純真な感性でもって、すばらしいパッティングをするものだ。

もちろんアベレージゴルファーでも、グリーンのスピードが自分に合っている日がある。そういう日は、よいパッティングに終始することもある。

しかし悲しいかな、けっこうな上級者でもそれは長続きしない。今日はよくても次はダメなのである。グリーンがちょっと速くなっても、ちょっと遅くなっても、調整しきれていないからだ。

つまり重要なのは、自分のいつもの距離感に対し、「ちょっと速いな」「ちょっと遅いな」と思うとき、どのようにそのズレを調整できるかである。

誰でも、「ちょっと速いな」「ちょっと遅いな」ということは体感的にわかるものだ。ところが、その調整ができないまま、一日中オーバーばっかり、あるいはショートばっかりということになった経験はどなたもおありだろう。

また、逆に「調整しすぎ」になってしまうケースも多い。それほどパッティングにおける距離感の微調整は難しいものなのだと私は思っている。

ロング・パットではテイクバックを、ショート・パットではフォローを大きくしてみる

私は、若いころに高麗芝のグリーンでパッティングを覚えたせいか、ロング・パットで距離感を出したいときは、フォロースルーを大きくしていた。

一方、ショート・パットは芝目に負けないよう、強めのヒットでフォロースルーの小さいタップ式と呼ばれる打ち方をしていたものだ。

最近はベント系グリーンが主流となったが、距離感の出し方としては、相変わらずロング・パットではフォロースルーを大きく、ショート・パットでは小さくという意識だった。

ところがこのやり方だと、ロング・パットはどうもオーバーが多く、ショート・パットはなぜかタッチの弱いことが多いと感じていた。それでも、単に年齢が増して感覚が鈍くなっているのだろうとしか思っていなかった。

そんなわけで、「オーバーばっかりの日」「ショートばっかりの日」「調整してもストロークがおかしくなってラインを外してしまう日」を繰り返しているのだ。

そこで、最近のパッティングメソッドをいろいろと読み漁ってみたところ、私がやっていた「ロング・パットはフォローを大きくして、ショート・パットはガツンと打つ」という方法は、今の主流のやり方とは真逆だったのだ。

今のツアー選手は、ロング・パットではテイクバックを大きめにとり、ヒットの強さで距離感を加減する。一方、ショート・パットやミドル・パットでカップをオーバーさせたいときは、フォローを大きくするというのだ。これは試してみる価値がありそうだ。

ロング・パットのほうは少し慣れが必要な気もするが、ミドル・パットやショート・パットでショートしたくないときに大きなフォローをとるのは、すぐにでも実践できそうだ。

少し遅いグリーンで、せっかくピンの手前の4~5m程度にオンさせて上りのパットを残したのに、1m以上もショートして3パット、バーディチャンスからボギー……こんな悔しい思いを最近よくしていたのだ。

フォローを大きめに出すだけなら、強く打とうと意識したがためにパンチが入ったり、ラインを外してしまったりということも少ないだろう。

あわよくば入れたい距離のときは、なんとしてもカップをオーバーさせたいものだ。ロックの言うように、カップの先に目標を置いて狙い、フォローを大きめにする。これで、いい距離感の調整ができるかもしれない。

今回のまとめ

1. ロング・パットを寄せる距離感(タッチ)をどうやって計測しているのかは、各自の感性によるもので、明快なメソッドがない

2. カップを少しだけオーバーする距離感を出すには、まず、目標をカップの先に置く

3. 距離感の微調整はヒットの強弱を意識するとパンチが入ったりラインを外したりしやすい。フォロースルーの大きさを意識して加減する

参考資料:夏坂健『騎士たちの一番ホール 不滅のゴルフ名言集』日経ビジネス人文庫、2004年

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岡上貞夫

1954年生まれ。千葉県在住。ゴルフエスプリ愛好家。フリーライター。鎌ヶ谷カントリークラブ会員。1977年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。大学入学時は学生運動による封鎖でキャンパスに入れず、時間を持て余して体育会ゴルフ部に入部。ゴルフの持つかすかな狂気にハマる。卒業後はサラリーマンになり、ほとんど練習できない月イチゴルファーだったが、レッスン書ではなくゴルフ名言集やゴルフの歴史、エスプリを書いたエッセイなどを好んで読んだことにより、40年以上シングルハンディを維持している。初の著書『ゴルフは名言でうまくなる』(幻冬舎新書)が好評発売中。

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