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腸内細菌の逆襲

2020.06.14 更新 ツイート

お腹が弱い人に食物繊維は逆効果!江田証

私たちのお腹の心強い味方、腸内細菌。しかし最新の研究で、食生活の乱れやストレスなどによって腸内細菌が異常に増えると、お腹の張り、ガス、下痢や便秘を招く小腸内細菌増殖症=SIBO(シーボ)を発症することがわかってきました!
消化器専門医・江田証さんの新刊『腸内細菌の逆襲』は、慢性的な疲れやだるさ、集中力の低下、がん、動脈硬化、心不全、肝不全などあらゆる症状や病気につながるSIBOを予防・改善するための食事・生活習慣と最新療法をわかりやすく解説しています。

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Photo by Louis Hansel @shotsoflouis on Unsplash

細菌においしいエサを与えるな

食事療法の重要な戦略は、細菌が喜んで食べるような食べ物を避けることにあります。

このためには、小腸で消化・吸収されにくい糖を排除することになります。細菌にとって最も重要な栄養素が糖なのです。

小腸でなかなか吸収されない糖質を含んだ食事をとると、この糖は人体に吸収されず小腸の中で浮遊し、細菌のエサとなり、しかも細菌はこの糖を急激に発酵させ、ガスを発生させるのです。

ゆっくり発酵が起こるセルロースなどはあまり症状を悪くさせませんが、主にある種の炭水化物は特に急激に発酵を起こし、ガスや下痢の症状を起こします。

そのため、SIBO(シーボ=小腸内細菌増殖症)の患者にすすめられるのは、低炭水化物の食事療法です。

具体的には、パンやパスタなどの小麦製品、豆類、牛乳をはじめとする乳製品に含まれる二糖のラクトース(乳糖)、腸から吸収しづらい果糖、人口甘味料を含むポリオールなどの糖質を避ける食事です。

これらの、小腸でほとんど吸収されないために、細菌のエサとなって急激な発酵を起こす糖質を総称して、「FODMAP(フォドマップ)」と呼びます。

FODMAPは腸内細菌にとってファストフードのようなものです。そして、このFODMAPを避けた食事法を「低FODMAP食」と呼びます。

低FODMAP食は、ちまたで言われている「腸内細菌にエサを与えて、腸内細菌を増やそう」という一般的な「腸活」とはまったく逆の食事法です。

今までの医師は、お腹が張ったり、下痢をしたりとお腹の不調で悩む患者にも、「じゃあ、ヨーグルトをとって、ゴボウやアスパラガスなどの食物繊維をたくさんとって、納豆やキムチなどの発酵食品をとりましょう」という一律の指導をしてきました。

しかし、SIBOの患者にとってこれらはみな腸内細菌のエサとなり、小腸で増えている細菌をさらに増やしてしまう、逆効果な食事なのです。

低FODMAP食は、もともとオーストラリアのモナッシュ大学で過敏性腸症候群の患者さん用に開発された食事法です。

ただ、低FODMAP食は、潰瘍性大腸炎やクローン病の患者さんの症状を軽くすることもわかっています。さらにSIBOの患者さんにも応用できるのです。

「食物繊維を多くとれ」はウソ

今まで医師が指導してきた、過敏性腸症候群の人向けの食事療法は、腸の運動性を増加させて便秘を解消するために、食物繊維を多く含む食べ物を摂取するとともに水分をたくさんとることをすすめるものでした。

加えて患者さんは、ほとんどの人がしているような1日3回のしっかりとした量の食事ではなく、1日に5~6回、少なめの量の食事を回数多くとるのがいいというアドバイスを受けていました。残念ながら、これらの食物繊維を多く含む食事と、食事の回数を増やすこと(間食)はいずれも、ほとんどの過敏性腸症候群の患者さんには逆効果でした。

食物繊維の問題は、人間には消化できない炭水化物鎖から成ることです。未消化の食物繊維サプリメントは大腸まで到達し、細菌が発酵させて膨満感を生み出します。

私は、大便のかさを増やすことを意図した食物繊維のサプリメントの代わりに、低FODMAPの果物や野菜など、適量の食物繊維を含んだ食事を推薦しています。SIBOや過敏性腸症候群の人は、「消化されにくいもの」を食べてはいけないということです。

1日3食よりも多い回数の食事をとることも、過敏性腸症候群の人には問題を引き起こします。なぜかと言うと、小腸から食べ物の残りかすや細菌を取り除く蠕動(ぜんどう)の仕組みが、食べていないときにしか起きないからです。

1日当たりの食事の回数を増やしたり、間食をしたりすると、体が適切な蠕動を生み出すための時間が少なくなり、小腸内の細菌にとってはコロニーを維持することがたやすくなります。

たとえれば、24時間営業のレストランでは次々にお客さんが入ってくることでお掃除が不十分になり、汚くなってしまうのと同じです。食事をしない時間を作らないと、腸はお掃除運動ができなくなり、小腸に細菌が繁殖することにつながるのです。

私が過敏性腸症候群の患者さんにすすめる食事療法は、細菌が増えている小腸の部分からできるだけ離れた、腸の初めの部分(十二指腸に近いほう)で栄養素のほとんどが吸収されるように、消化しやすいものを食べることです。

できるだけ小腸の上部で吸収されるようなものを食べれば、小腸の末端部、つまり「終点」に近いほうまで届く「細菌のエサ」が少なくなります。そうすれば細菌がエサを食べて増えることを防止できます。ある程度のかさがある適切な大便の形成のためには、食事にいくぶんかの繊維質が含まれているべきですが、多すぎても逆効果ですし、吸収されやすい食べ物が中心になるようにするべきです。

吸収されにくい食べ物は、小腸の「終点」近くに生息する細菌にとって格好の燃料源になってしまうため、SIBOがある人は最小限に減らすか、食事から完全に排除するべきです。なるべく多種類の、低FODMAPの野菜をとるようにすればよいでしょう。

また、一日を通して適度な水分摂取は大切です。食事に十分な水分が含まれていなければ、正しい腸の運動を生じさせることが難しくなります。健康な腸の運動がなければ、消化管内での細菌の増大がより発生しやすくなります。

食事をするのは1日3回に限定し、間食を一切とらないことが重要です。これにより食事と食事の間が3~5時間空き、その間のスナックや水以外の甘い清涼飲料水を避ければ、小腸の蠕動機能を発生させることができます。

細菌異常増殖が起きやすい患者の場合は、蠕動機能がうまく働いていないことがわかっています。小腸から食べ物の残留物や細菌を取り除く時間を腸に与えるために、食事と食事の間に3~5時間は小腸を休ませることが大切なのです。

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江田証『腸内細菌の逆襲 お腹のガスが健康寿命を決める』

腸内細菌はこれまで私たちの健康の味方と考えられてきた。しかし最新の研究で、現代人の食生活の乱れ、ストレス、抗生物質の乱用などによって腸内細菌が異常に増え、腹部の張り、ガス、下痢や便秘を招く小腸内細菌増殖症=SIBO(シーボ)が発症することがわかってきた。現在、1700万人もの日本人が原因不明のお腹の不調に悩まされている。慢性的な疲れ、だるさ、集中力の低下、がん、動脈硬化、心不全、肝不全などあらゆる症状や病気につながるSIBOを予防・改善するための食事・生活習慣と最新療法を、腸のスペシャリストがくわしく解説。

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江田証

1971年、栃木県生まれ。医学博士。自治医科大学大学院医学研究科修了。江田クリニック院長。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバーを務める。毎日、国内外から最新の治療法を求めて来院する、お腹の不調をかかえた患者を胃内視鏡・大腸内視鏡で診察し、改善させることを生きがいにしている。著書に『医者が患者に教えない病気の真実』『病気が長引く人、回復がはやい人』『おなかの弱い人の胃腸トラブル』(すべて幻冬舎)などがある。新刊『腸内細菌の逆襲』(幻冬舎新書)が好評発売中。

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