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大便革命 腐敗から発酵へ

2020.03.04 更新 ツイート

「美腸」を維持して免疫力アップ。食物繊維は2:1で摂るべし 辨野義己

理想の大便は、理想の腸から。

先週末、トイレットペーパーが品切れするとのデマ情報に踊らされた日本。

まだ品薄状態が続いているところもあるようですが、この機会に「良い大便」について考えてみませんか?

うんち一筋45年の「うんち博士」、辨野(べんの)先生(本名です!)による幻冬舎新書『大便革命』から、「美腸」のコツをお届けします。

(写真:iStock.com/MangoStar_Studio)

腸内細菌は「バランス」が肝腎

「美腸」とはどんなものでしょう。それは胎児のようなまったくの無菌状態ではなく、腸内細菌のバランスが理想的に保たれている状態のことです。

大腸内では「発酵」か「腐敗」のどちらかが起きています。どちらになるかを決めるのが、腸内細菌です。これまで私たちが「善玉菌」「悪玉菌」と呼んできた細菌は、腸内でそれらが引き起こすプロセスと深い関係があります。

一言でいえば、腸内で「発酵」を引き起こすのが「善玉菌」で、「腐敗」を引き起こすのが「悪玉菌」といえます。発酵が起きるようにバランスのとれた環境が「美腸」であり、腐敗が起きやすいのが「醜腸」というわけです。

腸内で起きる腐敗現象は、肥満やがん、免疫不全など多くの疾病に関わっており、「醜腸」すなわち悪玉菌が多い腸は病気への第一歩といえます。

 

ちなみに腸内細菌の種類は1000以上あり、一人のヒトの腸内に600兆~1000兆個も存在しています。私たちはそれらを、従来は「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」という3つの種類に分けて考えてきました。

「善玉菌」が行うのは、食べカスや脂粘膜をエサにして酢酸や乳酸などを産生するという、「発酵」のプロセスです。そのため「善玉菌」は腸や体にいい働きをします。代表的な善玉菌としては、ビフィズス菌や酪酸菌があります。

それに対して「悪玉菌」が行うのは、タンパク質などを分解して硫化水素やアンモニアなどの毒素を発生させる、「腐敗」のプロセスです。この菌が大量にあることは、腸や体に悪い作用をおよぼします。「悪玉菌」として代表的なものはウェルシュ菌やディフィシル菌、フラジリス菌などで、病原性を持つものがいくつもあります。

このほか体に有害な例としては、脂肪を摂りすぎると分解するために使われる胆汁酸が多くなり、これの一部が大腸内に流れて、腸内細菌により大腸がん促進物質に変換されてしまうことがあります。

 

では、理想的な「善玉菌」「悪玉菌」のバランスはどのくらいでしょうか。

腸内細菌のバランスが適切な「美腸」の状態では、いわゆる「善玉菌」が40%「悪玉菌」が10%、そして「日和見菌」が50%を占めているのが普通です。「日和見菌」は、名前のとおり優勢なほうへなびく菌のことで、そのときの腸内の状況で善玉菌にも悪玉菌にもなる可能性があります。

その大部分が未知なる細菌ですが、この「日和見菌」という考え方を私はのちにあらためました(そのことについては『大便革命』第2章で詳しく述べています)。

食物繊維こそ「美腸」の決め手

腸内環境を整え、いいウンチが快適に出る「美腸」をつくるには、なんといっても食物繊維をたっぷり摂ることが必要です。

「食物繊維」とは、ヒトの消化酵素によっては消化されない難消化性成分の総称です。食物繊維は「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2種類に分かれており、このうち不溶性食物繊維は、水に溶けない繊維を指します。

これは芋類や豆類、野菜に多く含まれています。また水溶性食物繊維は水に溶ける繊維で、海藻類やキノコ類に多く含まれています。

食物繊維は栄養素ではないため、従来は健康にとくに役に立たない、とされてきました。しかしいまでは「第6の栄養素」と呼ばれるほど、食物繊維が腸にとって重要であることが明らかになっています。

(写真:iStock.com/kazoka30)

なぜ、食物繊維は重要なのでしょうか。

それは、小腸で吸収されずに大腸まで届くからです。大腸まで届いた食物繊維は、そこで水分をたっぷりと吸収するため、ウンチのかさが増えてスムーズに排泄できるのです。さらに食物繊維は腸内の酪酸菌のエサとなることで酪酸濃度を高めて腸内環境を整える働きもします。

厚生労働省によると、18歳以上の食物繊維の摂取目標量は1日あたり女性18グラム、男性20グラム。伝統的な日本食には野菜や海藻、キノコ、豆といった食物繊維を多く含む食物が用いられていましたが、ライフスタイルの欧米化によりこれらの摂取量は減少し、多くの人が食物繊維を十分に摂れていません

とりわけ20~40代の女性の摂取量がきわめて少なくなっていて、便秘に悩む原因の一つと考えられます。食物繊維は大腸内で水分を吸収し、腸を刺激して排便を促す効果があるからです(ただし、水分不足の場合はウンチが硬くなることがあり、便秘のときは食物繊維を摂りすぎないようにする必要があります)。

 

食事の際には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維を2対1の割合で摂るのが理想的です。不溶性の代表的な食材はいんげん豆やひよこ豆、おから、切り干しダイコンなどで、水溶性は海藻やオクラやらっきょうなど。後者はヌルヌルとしているため、ウンチをスムーズに出す働きをします。

参考までに、食物繊維の多い食材の一覧をこのあとに列挙します。ちなみに、『大便革命』の冒頭で紹介している長寿地域の人たちは、まさに食物繊維たっぷりの食生活をしています。

 

【食物繊維が多い食材】

◎不溶性食物繊維が多い食材

  • 豆類:いんげん豆、ひよこ豆、えんどう豆、大豆など
  • 穀類:玄米、ライ麦、大麦、雑穀など
  • 芋類:さつまいも、こんにゃくなど
  • 種実類:栗、アーモンドなど
  • キノコ類:干ししいたけ、エリンギ、まつたけ
  • 野菜:ゴボウ、たけのこ、とうもろこし、アボカド、モロヘイヤ、ダイコン、かぼちゃ、ブロッコリーなど
  • その他:切り干しダイコン、高菜漬けなど

 

◎水溶性食物繊維が多い食材

  • 果物:バナナ、リンゴ、キウイ、みかん、アボカドなど
  • 海藻類:わかめ、昆布、もずく、ひじき、寒天など
  • キノコ類:なめこ、しいたけ、エリンギ、エノキ茸など
  • 芋類:さつまいも、さといもなど
  • 野菜:あしたば、モロヘイヤ、オクラ、ゴボウ、ゆりねなど
  • その他:納豆、らっきょう、エシャロット、かんぴょう、抹茶など

腸内細菌が免疫力を高める

年齢や食事によって腸内環境は変化するため、「美腸」を維持するには、ビフィズス菌を増やし、悪玉菌を減らす環境を整える必要があります

ビフィズス菌はヨーグルトや乳酸菌飲料、食物繊維を摂取することで増やすことができます。とくにビフィズス菌や乳酸菌をそのまま摂取できるヨーグルトは、効率よく腸内環境を改善できます。

食べるときの分量の目安は1日200~300グラム。ただし空腹時は避け、乳酸菌飲料は、食事中か食後に摂るようにしましょう。

(写真:iStock.com/kuppa_rock)

またビフィズス菌はオリゴ糖を摂取することによっても増やすことができます

オリゴ糖は砂糖などと同じ糖類ですが、人間の消化酵素で分解されにくく、食物繊維に近い働きをします。さらに小腸で吸収されずに大腸まで届き、ビフィズス菌のエサとなってそれらを増やす作用もあります。

オリゴ糖は甘味料として市販されており、砂糖の代わりに使用することもできます。ただし一度に大量に摂ると下痢になることもありますので、様子を見ながら量を調整してください。

 

ヨーグルトや食物繊維の摂取は、腸内環境の改善や快便、すなわち「美腸」の維持によいだけではありません。どちらも腸内環境にいい影響をおよぼすため、免疫力を高める効果があることが知られています。

というのも、腸には免疫細胞の約7割が集中しているからです。

免疫力を高めるには、脳と腸がリラックスした正常な状態であることが大切とされています。その状態を保つためにも、腸内細菌を「善玉優位」に保つ必要があるのです。ヨーグルトを食べることで花粉症が治った、という話がよく聞かれますが、おそらくそれは腸内環境の改善によって、免疫力が強化されたことから来ています。

 

ヨーグルトに含まれているビフィズス菌や乳酸菌には、病原菌の感染防止やビタミンの生成といった働きがあることも研究でわかっています。

さらに女性にとってうれしいのが、ビタミンB群の産生を増やすことです。新陳代謝に深く関わるビタミンB群には、肌や髪、爪などを健康に保ち、ターンオーバーを正常にする働きがあります。しかしビタミンB群は体内に蓄積できないため、毎日摂取する必要があります。ヨーグルトにはもともとビタミンB群が含まれていますが、ビフィズス菌が増えることでその産生も促進されるのです。

さらに難消化性の食物繊維には、腸内のものを体外へ排出する作用があるため、有害とされる重金属や化学物質などをすみやかに体外へ排出します。脂質や炭水化物の吸収を遅らせる働きもあるため、血糖値の上昇が緩やかになり、糖尿病などの生活習慣病の予防に役立ちます。

また腸内の食物繊維はコレステロールとくっつく特性があり、そのまま体外へ排出してくれることも知られており、適切に摂取することでコレステロール値の改善につながります。

食物繊維の多い食事を摂ると消化がゆっくりとなり、腸内滞留時間も長くなるため、お腹のもちがよく、ダイエット効果が高まることも付け加えておきましょう。

*   *   *

食物繊維や「美腸」のコツについてもっと知りたい方は幻冬舎新書『大便革命』をお求めください。

関連書籍

辨野義己『大便革命 腐敗から発酵へ』

大腸は膨大な嫌気性細菌の住む、まさに酸素なき暗黒世界。この腸内細菌が病気の多様性に直結する。腸内で起こる腐敗現象が、肥満やがん、免疫不全など多くの疾病に関わり、腐敗の原因「悪玉菌」の多い腸はそのまま病気の温床となる。だが、小さな努力で腸内環境は病気から健康長寿の発信源へすぐに変わる。つまり腸内で、腐敗ではなく発酵を起こすのだ。では、よき発酵のために毎日、何を食べればよいのか。これからは食への知恵をめぐらし大便を通じて自分の腸を徹底管理するのだ――。知的かつ、これ以上ない簡単な食と生活の改善方法を伝授。

辨野義己『大便通 知っているようで知らない大腸・便・腸内細菌』

日本人は一生に約8.8トンの大便をする。が、ふつうはそれから目を背けて生活している。しかし、便とは自らの健康状態を知らせる体からの「便り」である。では、そもそも大便とは何でできているのか。大便の3分の1を占め、大腸内の環境に多大な影響を及ぼす「善玉」「悪玉」と呼ばれる腸内細菌は、それぞれどんな働きや悪さをするのか? 大腸と腸内細菌の最前線を読み解き「大便通」になることで「大便通」が訪れる、すぐに始められる健康の科学。

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辨野義己

1948年大阪府生まれ。国立研究開発法人理化学研究所科技ハブ産連本部辨野特別研究室特別招聘研究員。農学博士。専門領域は腸内環境学、微生物分類学。酪農学園大学獣医学科卒。東京農工大学大学院を経て、2009年より現職。DNA解析により腸内細菌を多数発見。腸内細菌と病気の関係を掘り下げて研究し、文部科学大臣表彰・科学技術賞(理解増進部門・2009年)ほか数々の学会賞を受賞。ビフィズス菌・乳酸菌の高い健康効果を訴える「うんち博士」としてテレビ、雑誌などのマスコミに広く取り上げられており、講演活動も多い。『自力で腸を強くする30の法則』(宝島社)、『腸内細菌の驚愕パワーとしくみ』(C&R研究所)、『100歳まで元気な人は何を食べているか?』(三笠書房)など著書多数。

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