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“人疲れ”が嫌いな脳

2020.03.09 公開 ポスト

【体と心を整える】「夫婦は別々のベッドで寝たほうがいい」医学的な理由とは?【再掲】梶本修身

時差通勤で、日々の満員電車からすこしは逃れられているでしょうか。いまはウイルス感染防止のために、人込みを避けたり、列でも距離をとることが推奨されていますが、「疲れをためない」といった観点からも、ある程度の距離が必要のようです。脳と疲労の専門家、梶本修身先生の『“人疲れ”が嫌いな脳』から、しつこい疲れをリセットするヒントをご紹介します。

*   *   *

「自分の空間」を確保しよう

周囲の人とひじや肩が当たる距離は、もちろん大きなストレスです。毎日、満員電車での通勤に慣れている人でも、いつもと違う時間帯に出社したら車内が空いていてずいぶん楽だった、疲れ方が違うと感じるのではないでしょうか。

(写真:iStock.com/rilueda)

ちょっと極端ですが、私は新幹線で大阪と東京を往復する際、疲れているときには隣の席の指定券も買います。新横浜-名古屋間を買っておけば、新大阪まで隣に人が座ることはまずありません。

映画館でも、リラックスしたいときに隣に座られたら絶対に嫌だなと思うので、隣の席も子ども料金で一緒に買っています。

そうやって自分の空間を確保するだけで、疲れは明らかに軽減されます

人と接触しない状態で自分だけの空間を持つのは、家庭内でも大事です。

「気を遣わないのが家族」と前述しましたが、物理的な距離が近すぎる状態でずっと過ごすのは、家族であってもストレスになります。

ラットの場合も、なんとなく群れているイメージを持っている人がいるかもしれませんが、常にくっついたり、もつれあったりしているわけではありません。親子ならともかく、成長すれば離れていきます。くっついているのは繁殖するときです。

肌が触れ合っているのが“癒し”だと思う人もいますが、実はストレスの要因です。だからカップルがダブルベッドで寝ることもおすすめできません

物理的な視点から見ても、体温を移し合ってしまって自分の熱を発散できないため、睡眠の質がかなり低下します。

また、一方の寝相が悪ければ、やはり安眠が妨げられます。良質な睡眠は疲労回復にもっとも大切ですから、医学的に見てあらゆる面でマイナスです。

NHKの番組で、ご夫婦を指導してベッドを別々にしたことがあります。別々にするのに抵抗していたのは旦那さんでしたが、奥様は熟睡できるようになって、ほっとされたのではないでしょうか。

実際、ベッドを分けたことで疲労度はかなり回復しました。

「人疲れ」は老化にもつながる

「人疲れ」の解消にもっとも大切なのは、疲労を溜め込まないことです。

(写真:iStock.com/taa22)

疲れやストレスに最初に対処するのは自律神経ですが、そのままの状態が続くと、内分泌系まで影響を受けてしまいます。

疲労を溜め込んだ状態を医学的に言えば、「内分泌系が作動して、コルチゾールというステロイドホルモンが増えてしまった状態」のことです。そこまでいってしまうとなかなか戻れません。

「今週は疲れたわぁ」と、週末ずっと寝ていても疲れが取れなかった、という人も多いのではないかと思います。

しかし、内分泌系が動き出す前、自律神経がコントロールしている段階であればリセットは簡単です。

こまめに5分ほど休息を取るのがベストですが、折りを見て15~20分、一人の空間でほーっと大きなため息がつけるような状態でいると、まったく変わってきます

スマホなどは見ず、ぼんやりとしていましょう。理想はもちろん眠ることですが、平日はなかなか難しいので、目を閉じてボーっとしているだけで十分です。

一人きりになれなくても、人と触れ合わずにすむような喫茶店の片隅や、駅のベンチでもかまいません。5分でも10分でも、そんな一人の時間を常に意識していただきたいと思っています。

自律神経が体の状況をコントロールしようと頑張れるのは、それほど長い時間ではありません。

本来の日内変動とは別に、自律神経の持続的な疲れでコルチゾールが増えてくるのは、36時間から48時間後です。つまり、二日もすれば早くも内分泌系に影響が現れてくるのです。

だから、疲れは二日以内に解消するのが望ましい。自律神経の段階でぐっすり眠って疲れをきちんと解消しておくと、深刻な状態にならずにすみます。

内分泌系が働いた状態が長期化して、免疫系が動かざるを得なくなると、もう一日や二日では治らなくなってしまいます。できるだけ早く、そんな負のスパイラルを断ち切らなくてはいけません。

「人疲れ」に限りませんが、疲労は溜まれば溜まるほど回復しにくくなります。しかも、悪くすると元に戻らなくなる。

つまり老化にもつながっていきます

「苦労は顔に出る」と聞いたことがあるでしょう。苦労している人は顔が老けているというのは、医学的にも説明ができる事実です。

関連書籍

梶本修身『“人疲れ”が嫌いな脳 ラクしてうまくいく人間関係のつくりかた』

最新脳研究でわかった「疲れない人間関係」のつくりかた 脳を疲れさせているのは、残業よりも「人疲れ」だった! 疲労医学の専門家が、なぜ人は人に疲れるのか、 どうすればラクで疲れない人間関係をつくることができるのかを解説。 これを読めば、明日からあなたも疲れ知らず! 【もくじ】 はじめに 人間関係が得意でも「人疲れ」は起こる 第1章 脳を疲労させるのは、残業よりも「人疲れ」 ●そもそも「疲労」って、いったいどういうこと? ●「飽きてきた」は脳疲労の最初のサイン ●過労死する動物は人間だけ ●「脳の手抜き現象」を使って、60%の力で80%の成果を得る ほか 第2章 疲れないコミュニケーションの基本――面倒な段階は省いて、相手に心を開かせる ●人間は弱みを見せた相手を信用する ●ジャニーズは「弱さへの共感、共有化」がうまい ●西川史子さんが見せた「弱さ」 ●「正しいこと」ばかりを語る人に愛着は持てない ほか 第3章 「人疲れ」しない距離感づくり ●都会に住む人ほど、一人になる時間が大事 ●夫婦でもベッドは別がいい? ●悩みは箇条書きにして「解決できる」「できない」に分ける ●LINEでも相手と上手に距離をとる ほか 第4章 お笑いの天才に学ぶコミュニケーションの真髄 ●相手との距離をぐっと縮める「0.5秒先」の共感 ●なぜ、悪徳商法はなくならないのか? ●場の全員を楽しませる必要はない ●60%の力で80%の仕事ができる「ワーキングメモリ」とは? ほか 第5章 60%の力で80%の成果を得るワーキングメモリ活用法 ●ワーキングメモリを鍛えて「人疲れ」予防 ●喜怒哀楽や感動を強く表すことで記憶が定着する ●トップダウン処理は疲れない ●ワーキングメモリを鍛えるための習慣 ほか

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梶本修身

医学博士。大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授。東京疲労・睡眠クリニック院長。1962年生まれ。大阪大学大学院医学系研究科修了。2003年より産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者。ニンテンドーDS『アタマスキャン』をプログラムして「脳年齢」ブームを起こす。著書に『すべての疲労は脳が原因』(集英社新書)などがある。「ホンマでっか!?TV」「世界一受けたい授業」「ためしてガッテン」など、テレビでも活躍中。

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