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月が綺麗ですね 綾の倫敦日記

2019.12.03 更新 ツイート

独身者を差別するイギリスの「パートナー文化」鈴木綾

季節が巡り、またクリスマスの季節になった。クリマスツリー、心を温めるイルミネーション、雪だるま、クリスマス・ラテ、そして会社のクリスマス・パーティー。

会社の社長は毎年12月に自分の家で「ホリデー・パーティー」をする。世の中キリスト教徒ばかりではないので私たちは、クリスマス・パーテイーじゃなくて「ホリデー・パーテイー」。

さて、社長の家はおもてなしをするためにできた家で、ビリヤード台もホームシアターも広いお庭もある。ハリウッド映画に出てくるようなすごい豪邸。社長の豪邸をみんなは「○○○」と呼ぶ。日本語に訳したら「蘭(らん)」みたいな感じの名前になる。みんなが集まって議論に花を咲かせる場所、を意味する。
  
社長の電子カレンダーを見れば(小さな会社だから社員全員のグーグルカレンダーを確認できる)、「宴会・蘭」と書いてある。

華麗な名前がつけられている家でパーティーするのには全く抵抗がないけど、一点不満がある。 

 

パーテイーには従業員たちのパートナーも誘われる。婚歴20年の役員の上品な奥様たちもくるし、ティンダーで知り合ったに違いない来年のパーティーでまた会う確率ゼロの若いスタッフのボーイフレンドとかガールフレンドたちもくる。パートナーを連れて行かない私はみんなに余計なアドバイスをされる。大きなお世話。会社のパーティーなのにその辺はなぜか「久しぶりに親戚の大きな集まりに参加した感」が半端ない。
 
これは全部ロンドンの、っていうかヨーロッパ社会の「パートナー文化」のせいだ。社会人になると、社会的交流は原則パートナーと一緒にやる、ってことになる。オンでもオフでもイベントごとは基本パートナー同伴。パートナーは相手の会社のパーティーに招待される。同僚にパートナーの話を平気で聞かれちゃう。

会社に同じ年ぐらいの男性がいる。彼のチームに新しいメンバーが入ると彼はその人とその人のパートナーを自分と自分の婚約者との食事会に誘う。ダブルデートみたいな感じで。

仕事上のパートナー文化は、社会からエリート層にかかっている「完璧に生きて行かないといけない」圧力の一種だと思う。学歴完璧、キャリア完璧、身体完璧、そしてパートナー・家族完璧。

その圧力を肌で感じたのは、この間会社の役員とお客さんの接待をしたときだ。

「綾が選ぶ結婚相手は綾さんの人生の方向性に大きいな影響を与える。綾さんはそういう女だから。綾さんは真剣にパートナーを選ばなきゃいけない女。」

「そういう女」って、、、これ以上の「大きなお世話」はないっていうことを措いといても、結婚して人生が変わらなかった人ってー男性でも女性でもーいるの?

そういうことが接待で起きると、私は失礼をしてトイレで一回叫ぶ。それで大体落ち着く。

プライベートの生活でも同じようなパートナー文化にぶつかる。今、ビジネススクールで知り合ったカップルとフラット・シェアしている。ロンドンには同じビジネス・スクール出身の知り合いが多いにもかかわらず彼らが二人で誘われているけど私は誘われていない集まりがある。私の同級生たちは結婚しているか真剣に付き合っている人(LGBTQの人も含めて)が多い年齢になったので、私が呼ばれていない集まりの回数は少なくはない。

この間彼氏と別れたばかりの友達に意見を聞いた。この独身者差別は、気のせいか本当なのか。「もちろんあるよ!」というのは彼の答え。

人がいない週末のカナリ・ウオーフでカクテルを飲みながら、二人はその理由を考えた。向こうは無意識にやっているし、悪気はない、という点では意見が一致した。カップルがほかのカップルを誘うと二人で交流できるので誘いやすいかもしれない。

その後、その友達は記事を送ってくれた。記事によると、イギリスの独身者はカップルより年間£2000をプラスで払っている。それはジムの会員費などはカップルの方だと安くなったりスーパーに食料品は大きいサイズしか置いてなかったりしているからだそうだ。なんかため息。

この種のパートナー文化がない日本に住んでいたときは本当に恵まれていたと思う。当時は気づいてなかったけど。

日本には、とても親しい友達だけどパートナーに会ったことがない、っていうともだちはたくさんいる。もちろん「パートナーを紹介したい」「今度の飲み会にパートナーを連れてきたいけど」と言われたら喜んで会うけど、友達同士ではパートナーの話をしない、パートナーを紹介しない方が普通だし、自然だ。そういう意味でカップルと友達になるより、個人ベースで友達になっている。
 
もちろん日本のプライベートとパブリックを完全に分ける、というか、必要以上に相手のプライベートに踏み込まない習慣は極端すぎると時々思う。何年も一緒に仕事をしているのに家族の話をしたことがない同僚が何人もいて、それはそれで不思議だった。
 
とは言え、そのやり方の方が独身者に寛容だし生きやすい。
 
ロンドンで体験している「独身者差別」に傷付いているというわけじゃないし、それがおかしいというつもりもない。考え方が狭いな、文化が違うんだ、というふうに受け止めている。パーティーにパートナーを連れてこないと周りの人にどう思われているか、私は気にしない。なぜかというと自分が選んできた生活は正しいと思っているし、本当に私の味方になってくれる人はそんな私を受け入れてくれる。

みんなに見せるために、社会的習慣に沿わせるために彼氏か彼女を作るなんて本末転倒だと思う。こういう暗黙のルールがあるからこそ、社会はいまだに女性にとって働きにくい。仕事で出す成果だけで評価されるべきなのにパートナの云々でも判断される。個人主義を美徳にする社会のくせに。

あと最高なのはね、ホリデー・パーティーから帰ってきたあと部屋で好きな音楽を聴く。好きなロウソクに火を付ける。ベッドの上で体を大きく伸ばす。自分一人のベッドだから。その時の睡眠は深くて気持ちいい。

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イギリスに住む30代女性が向き合う社会の矛盾と現実。そして幸福について。

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鈴木綾

1988年生まれ。6年間東京で外資企業に勤務し、MBAを取得。現在はロンドンの投資会社に勤務。2017〜2018年までハフポスト・ジャパンに「これでいいの20代」を連載。日常生活の中で感じている幸せ、悩みや違和感について日々エッセイを執筆。日本語で書いているけど、日本人ではない。

 

 

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