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探検家とペネロペちゃん

2019.11.11 更新 ツイート

書評エッセイ

子どもが小さいころにこの本があったら、子育てをもっと楽しめた!角幡唯介

「子どもは、極夜より面白い」

北極と東京を行ったり来たりする探検家が、客観的に見て圧倒的にかわいい娘・ペネロペを観察し、どこまでも深く考察した父親エッセイ『探検家とペネロペちゃん』の書評エッセイをお届けします。

*   *   *

角幡唯介さんの新刊『探検家とペネロペちゃん』は、いつにも増して軽妙な筆致、というか、興奮気味の文章で娘を持った男親の心境や心情を語りまくっていて、時に声を出して笑ってしまうほど面白い。おそらく何ひとつ隠すことなく吐露……いや、吐露という表現は足りない。探検家の角幡さんが、娘を持った男親心の中に分け入り「俺はなんでこんなことを思うんだ?」と分析、探求、答えを出して「なるほど、親になるってこういうことだったんだ!」と“新しい自分”の発見に一喜一憂。さらに角幡さんが子どもの頃、訳もなく自分のことをチラチラ見る親の視線の思い出に遡り、「あ、俺のこと可愛くてしょうがなかったんだ。一挙一動を見逃したくなかったんだ」と自身の謎も解決する。探検モノではないのに、父親エッセイなのに、探検家の洞察力、探求力、直感力って凄いと感心することしきり。

「子どもができること、それは私自身を発見することであり、人生の意味を見つめなおすことであり、人間そのものを理解することである」という角幡さんの文章に、私自身、改めて子どもを持つ意味を考え、「確かに!」と納得。でも、自分ではこんなにうまく言葉にできないし、深く探求することなく流していることもたくさんある。子どもが小さいころにこの本があったら子育てをもっともっと楽しめたかもと思うと、友人の出産祝いに絶対プレゼントしたいという気持ちがこみ上げてきた。いやいや親になった人だけじゃなく、「親」という存在、そして角幡さんの言葉にあるように「人間」を理解するにもいい……。より多くの人に読んでほしいという思いは高まるばかり。そこで、私が編集を担当している子育て系の媒体でインタビューをさせてもらうことにした。

本では、ペネロペちゃんに「将来、ゴリラの研究者」になって欲しいと、角幡さんの理想を抽象的に表現していたけれど、実際どんな風に育って欲しいと思っているのか少し具体的に聞いてみた。すると、「自分の頭で考え、自分で人生を切り開き、人生を楽しんで、ということを自分の背中を見せることで伝えたい。そして、子どもがやったこと、やりたいことを否定することなく、信じて見守ることしか親にはできないよね」と、一人の人間として尊重していきたいという気持ちをきっぱり。

また、「子育てには基準や決まりごとがあるわけではなく、自分と子どもとのやり取りを通じて子どもの性格や気分を感じ取り、状況を見極め、その現場現場で対応していくしかない。子どもはどんどん成長していき、変わっていくものだし。そういった関わりの中で自分もまた変わっていき、人間として成長していけるのかもしれない」と、探検するときと同じような姿勢でペネロペちゃんや自分自身と冷静に向き合っている角幡さん。

最も素敵、と思ったのは、「自分の背中を見せるには、自分の得意分野の中で子どもと真剣に遊ぶ」という言葉。海や野山など得意分野でペネロペちゃんと遊び、その中で「地球とは、世界とは、自然とは、人間とは、家族とは、生きることとは……、と自分が信じることを伝えていきたい」と、真面目に語りつつ、思春期になったら遊んでくれなくなるかもしれないから一緒に遊んでくれるうちにとことん遊んでおかないと、と危機感を感じているところもチャーミング。

ペネロペちゃんと何をしたいか真剣に考え、虫取り、カヤック、シュノーケリング、山登りなど、得意分野に連れ出してペネロペちゃんにかっこいいところを見せつける角幡さん。今は「私の相棒はお父さん!」と言ってもらえることに無上の喜びを感じていらっしゃる様子。そして将来の彼氏に「うちのお父さん、かっこいいから」と自慢してもらうことを夢見ている。こういう思いを全世界のお父さん(もちろん、お母さんも)が持つことができれば、世の中自ずといい方向に向かっていくのではないかと、希望も芽生える。

だから、たくさんの大人に読んで欲しい。本当に読んで欲しい。自分のかっこいい背中ってなんだろうって人生を見つめ直してみるいい機会になると思うし、本音で父親心を語る角幡さん、本当にかっこいいから。

文・藤田実子(ライター)

→インタビューはこちらから(朝日こども新聞 のサイトへ)

角幡唯介『探検家とペネロペちゃん』

なぜ、娘は好きな男の子に鼻くそをつけるのか。
なぜ、娘にゴリラの研究者になってもらいたいのか。
なぜ、娘にかわいくなってもらいたいのか。
なぜ、娘が生まれて以前より死ぬのが怖くなったのか。

極夜と東京を行ったり来たりしながら、客観的に見て圧倒的にかわいい娘・ペネロペを観察して、どこまでも深く考察していく探検家の父親エッセイ。

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探検家とペネロペちゃん

なぜ、娘は好きな男の子に鼻くそをつけるのか。
なぜ、娘にゴリラの研究者になってもらいたいのか。
なぜ、娘にかわいくなってもらいたいのか。
なぜ、娘が生まれて以前より死ぬのが怖くなったのか。

極夜と東京を行ったり来たりしながら、客観的に見て圧倒的にかわいい娘・ペネロペを観察して、どこまでも深く考察していく探検家の父親エッセイ。

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角幡唯介

1976年北海道生まれ。早稲田大学卒、同大探検部OB。『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー渓谷に挑む』で開高健ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞。『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』で講談社ノンフィクション賞を受賞。

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