1. Home
  2. 生き方
  3. カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~
  4. 「推しを性的目線で見ること」は悪いことな...

カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

2019.09.27 更新 ツイート

「推しを性的目線で見ること」は悪いことなのか問題カレー沢薫

全くオタク文化に明るくない別の担当が、地下アイドルファンの友人につきあいライブに行ったそうだ。

そこでの、あまりの過疎っぷり、アイドルとファンのズブズブっぷりに「これはやりようによってはアイドルと男女の仲になれるのでは?」という意図のことを、考え得る限り下品な言葉で友人に伝えたところ、友人の顔が瞬時に岸辺露伴になったという。

つまり「俺がそんな不純な動機で、この子たちを応援していると思ったのか」とブチ切れられたのである。

 

その友人は、純粋に自分の応援で彼女たちにビッグになってほしい、あえて言うなら「親」のような気持ちでファンをやっているのだという。

その友人が怒るのはわかる、だが逆に言うと、推しとつきあいたい、やりたい、つまり「推しを性的視線で見ること」はそんなに、悪いことなのだろうか。

3次元にくらべ、2次元では「推しを性的に見る」ことは割と当たり前のこととして捉えられている。

「新しい推しキャラが出来たので、次のコミケではハチャメチャにエロい推しのDB(ドスケベブック)」を作ります」と言ったら「その意気やよし!」と言われる世界である。

むしろ「なんら思い入れのないキャラでDBを作ります」と言った方が「誠意がない」と言われてしまうのだ。

しかし2次元でさえ、最初は3秒に1回ピクシブで「推しの名前 r-18」で検索していたが、徐々にその回数が減り、その内推しを扱ったエロを受け付けなくなり、最終的に「ただ推しの幸せと健康を祈るようになる」人もいるという。

2次元ですらそうなのだから、3次元では特に、推しに対する精神が純粋なほどファンとし得が高く、もはや「性的に見ている内は本当のファンではない」とさえ言われたりする。

このように、時として推しに対して「純粋であること」を求められ「精神が謙虚で崇高であるほど偉い」みたいな考えが、どこのオタ世界にもある気がする。

しかし、これ自体「オタクが作った設定」なのではないか。

確かに「CD2兆枚買うからやらせろ」というのは下品であり、もはやファンですらないが「ファンを続けていれば、いつか自分を見初めてくれて、つきあえるかも」と夢見ることや、推しを「夜のごはんですよ」にすることが、悪い事であり、ファン失格なのだろうか。

ファンを無下に出来ないことをわかっていて「つきあってくれ」と迫ったり、他のファンを攻撃したり、「100万回ぬいたね、これ」とわざわざ本人に伝えたりする、迷惑行為をしなければ良いのだ。

推しを応援していて、推しの不利益になることさえしなければ推しにとっては総じてファンだろう、それをオタク自身が勝手に貴賤を定めることは、無駄にハードルを上げ、場を窮屈にしてしまう。

親という設定で応援しているファンの方が「彼氏」という設定で、ライブハウスの後ろの方で腕組しながら見ているファンより、位が高いというわけではないのだ。

このように、推しに対し、どのようなポジションを取るかは人によって違う。

よく「推しの家の壁のシミ」になりたい、というオタクがいる。

推しと接したい、ましてつきあいたいなど、恐れ多すぎる、無機物として、ただひたすら推しを見守りたい、というオタクのスタンダードポジションだ。

私もどちらかというと、そっち側であり「来世はFGOの土方歳三のブーツの地面側」になりたいと思っている。

ある意味推しに対して「謙虚」なのだが、それに対し推しの「彼女」になりたいと思うオタが「身の程知らず」と非難されるべきでもない。

どうせ妄想世界でのポジショニングである、壁のシミだろうが、彼女だろうが「ショート」と「レフト」程度の差しかなく、そこで揉めても仕方ない。

各々守りたい推しのポジションを守るべきだ。

しかし、心の底から、推しの壁のシミ、さくら第一小学校の校庭の砂になりたいと思っていても、冒頭の露伴先生のように「結局やりたくて応援しているんでしょ」と言われることはあるのだ。

そういう人に「そういうんじゃないんだ」とどれだけ、シミや砂になりたいかを説明しても「そうは言っても、なれるなら彼女になりたいよね?」と言われてしまうのである。

つまり、わからない人にはわからない話なのだ。

オタクは推しに対し、いろんなスタンス、ポジションを持っているし、それは好きになればなるほど、それが小難しくなっていき、オタクが良く言う「しんどい」の状態になっていく。

この「しんどさ」は苦しみであり、同時に喜びでもあるのだが、これを他人に分かってもらうのは不可能だ。

どうせわかってもらえないのだから「ファンとはこうあるべき」みたいなことはあまり考えず、彼氏や彼女、壁、校庭など、自分の好きな位置に座れば良いのだ。

関連キーワード

関連書籍

カレー沢薫『カレー沢薫の廃人日記 〜オタク沼地獄〜』

だが、未だにガチャから学ぶことは多い、去年末、本コラムをまとめた『カレー沢薫の廃人日記~オタク沼地獄~』という本を出版させてもらった。 そのキャッチコピーは「人生で大事なことは、みんなガチャから教わった」なのだが、改めてこのコピーに嘘偽りはなかったと確信している、もはやガチャは人生の縮図と言っても過言ではない。

{ この記事をシェアする }

カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP