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ゴルフは名言でうまくなる

2019.09.08 更新 ツイート

第103回

「ロスト・ボールをしたからといって、不平やグチを言ってはならない。ロスト・ボールも、ゴルフ・ゲームの要素のひとつなのだ」――チャールズ・マクドナルド岡上貞夫

新ルールでボールの探索時間は3分に

チャールズ・マクドナルドは全米ゴルフ協会の創立者のひとりで、スコットランドにおけるゴルフの伝統的精神をアメリカ人にも強く伝承しようとした人である。この名言は、彼の名著 "Scotland's Gift: Golf"(1928)に出てくる言葉だ。

コース内で起こるさまざまなトラブル、不運、過失などに対し、自らの有利になるように振る舞わず、厳しいルールにも進んで従うゴルフの伝統的精神は、当時のアメリカン・ゴルファーにはまだ理解されなかったらしい。

 

そのため、マッチ・プレーでの「ロスト・ボールはロスト・ホール」(そのホールの負け)というような当時のルールはあまりにも過酷だと、非難したり不平を言ったりしていた。マクドナルドはこのような不平不満を戒めるために、伝統的な精神の啓蒙に尽力したのだった。

「バンカーに入る危険をおかすのは、みずからが冒険を課したのである。したがって、ボールをバンカーに入れてしまったからといって、バンカーを公正でないと非難する理由にはならない」

つまり、ゴルファーが自分のミスを棚に上げて、ロスト・ボールになったことやバンカーに入ったことなどに不平やグチをこぼすのはお門違いだと言ったのだ。

そうはいっても、ショットを曲げて林に入れたようなときに、ボールを紛失するとなんだか損したようで、不運を嘆きたくなるゴルファーの気持ちもわからなくはない。

とくに、林の木もまばらで下草も短いにもかかわらずボールが見つからないと、「木の上に止まってしまったのか?」「誰かが間違えて打ってしまったのでないか?」など、さまざまな憶測をして不運を嘆くものだ。

実際、木の幹や枝への当たり具合で、ボールがあらぬ方向へハネてしまうことがある。「だいたいこのあたり」と目星をつけて探している場所とはかけ離れたところに行ってしまっていることも多いのだ。

2019年1月に改正された新ルールでは、ボールの探索時間は3分間(旧ルールは5分間)までとなった。くまなく広い範囲を探すには時間が足りず、ボールをロストする確率は高くなったともいえる。

そんなときに、不運を嘆いてばかりいてもはじまらない。暗いメンタルを引きずったままでは、リズムを取り戻すこともできないだろう。結果としてミスの連鎖になってしまう。

なんとか平静を取り戻すには、マクドナルドの言うように「これもゴルフの要素のひとつ」と割り切るべきだ。

ロスト・ボールがあるからゴルフはおもしろい

かつて、ある日本人ゴルファーがロンドン近郊のサニングデール・ゴルフ・クラブを訪れたとき、ラフがひざの高さ近くまであることに驚いて、「これではロスト・ボールが多くなって困るでしょう」と聞いた。

すると、コースを案内してくれた事務員は、「ロスト・ボールをするから、ゴルフはおもしろいのですよ」と、さも当然とばかりに答えたそうだ。

本場イギリスのゴルファーは、ロスト・ボールをしても「今日は4個なくしただけで済んだよ」と涼しい顔をしているものだ。

「おかしいな、なくなるようなところじゃないのに……」と、いつまでも不運を嘆いて暗いメンタルを引きずるのではなく、「そこへ打ってしまった自分のミス。次は曲げないぞ」と早く切り替えたほうがよさそうである。

スコットランドの古言に、"The player has no one to blame but himself"(プレーヤーは、自分自身以外に咎めるものはいない)というのがある。

この古言を守っていれば、不平不満を言う相手もなく、平静な心を保つことができ、次のショットに集中できるようになるのではないだろうか。

さて、ロスト・ボールに関しても、2019年1月のルール改正で変更されたことがある。あくまでもローカル・ルールとしてだが、これまで慣用的に行われてきたことが認められたのだ。

ティー・ショットなどでボールを曲げたとき、探してもセーフのゾーンにない、たぶんOBへキックしてしまったか、ブッシュなどで見つからないのだろうという場合がある。

そんなとき、プライベートなプレーでは「打ち戻しに戻るのも大変だから、その辺から2打罰でいけばいいよ~」とやっていた省略策である。

これが、ちゃんと改正ルールで定義され、競技への採用は推奨されていないものの、プライベートなラウンドでは正式に(?)認められ、採用された。つまり、いわゆる前進4打が公認されたのである。

ただ、あくまでもローカル・ルールで、クラブ競技などでは採用されているかどうかわからないため、確認が必要だ。

知らないと損! ドロップできる範囲は意外と広い

そもそも、この規定をしっかり知っている読者は少ないのではないだろうか? 

たとえば、ティーイング・エリアからショットしてOBやロストの可能性がある場合、本来なら暫定球を打っておくことが望ましい。しかし、入ったのが林の中、その向こうは隣のホールでOBではないというような状況のときには、暫定球を打たないことも多い。ところが、いくら探してもボールが見つからないということがある。

そんなとき、ルールに厳格にプレーするならば、そのショットを打った元の場所へ戻って打ち直さなければならないのだが、プライベートコンペぐらいのラウンドならばそこまで厳格にする必要もないだろうということで、今回の改正ルールが認められたのだと思う。

ただし前進4打については、これまではコースが設定した黄色いマークのエリアから打っていたが、これからはルールに沿って処置すべきだろう。

正しい対処方法は次の通りだ。まず、ボールがなくなった場所を推定して救済エリアを決め、その中に(ひざの高さから)ドロップし、2打罰を加えてプレーする。

意外に知られていないが、この救済エリアが結構広いのである。

まず、OBやロスト・ボールになったと思われる地点をA点と定める。次にピンとA点から等距離となる、フェアウェイとラフの境をB点と定める。そして、B点からフェアウェイ側へ2クラブ・レングス入った地点をC点と定める。

A点からC点までの間なら、どこにドロップしてもよい。さらに、ピンとB点を結んだ線の延長方向と平行にC点から後方へ延ばした線の内側であれば、ティーまで下がっても構わない(下図の斜線部分にドロップOK)。

 

 

実戦ではラフよりフェアウェイのほうがいいだろうから、B点とC点の間の少し後方あたりのフェアウェイ上を選ぶことが多いだろう。そう、なんとフェアウェイにドロップできるのだ。

しかし、前方に高い木があったりすれば、後方へ下がったり、A点の近くのラフのほうがいいこともあるかもしれないので、広いエリアでドロップ可能なことは知っておいて損はない。

これほど広い範囲に救済のドロップができるのだから、ロスト・ボールになっても不平やグチを言わず、早く切り替えて次のグッド・ショットにつなげたほうがスコアにもいいと思うが、いかがだろうか?

今回のまとめ

1. ロスト・ボールは悔しいかもしれないが、「天使の取り分」と考え、くよくよしないこと。ロストも伝統的なゴルフ要素なのだ

2. 探索時間の3分は意外に短い。早めにあきらめ、割り切って気分一新しよう

3. 日本特有のルールだった前進4打が、今年の改正でローカル・ルールとして正式採用された。これからは黄色マークではなく、ルール通りに対処するほうが格好いいだろう

 

*   *   *

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岡上貞夫

1954年生まれ。千葉県在住。ゴルフエスプリ愛好家。フリーライター。鎌ヶ谷カントリークラブ会員。1977年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。大学入学時は学生運動による封鎖でキャンパスに入れず、時間を持て余して体育会ゴルフ部に入部。ゴルフの持つかすかな狂気にハマる。卒業後はサラリーマンになり、ほとんど練習できない月イチゴルファーだったが、レッスン書ではなくゴルフ名言集やゴルフの歴史、エスプリを書いたエッセイなどを好んで読んだことにより、40年以上シングルハンディを維持している。初の著書『ゴルフは名言でうまくなる』(幻冬舎新書)が好評発売中。

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