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忍者はすごかった

2019.08.12 更新 ツイート

忍者の最大の敵は「酒」「性欲」「カネ」だった! 山田雄司

黒装束で素早く動き、手裏剣で敵を撃退する……。「忍者」についてそんなイメージを持っていませんか? 実はこうしたイメージはすべてフィクションだったのです! 400年前の忍術書をひもとき、忍者の真の姿を浮かび上がらせたのが、忍者研究の第一人者、山田雄司氏の『忍者はすごかった』。現代を生きる私たちにも役立つ「忍者の教え」が満載のこの本より、一部を抜粋してご紹介します。

*   *   *

この「三毒」に惑わされるな

常に酒、色、欲の三つを堅く禁制し、ふけり楽しむべからず。酒色欲の三は元我本心を奪う敵なり。古来酒色欲にふけり、或は陰謀を泄らし、或は害を蒙りし先蹤勝計すべからざるなり。

──『万川集海』

(常に酒、色、欲の三つを堅く慎み、これにふけって楽しんではいけない。酒、色、欲の三つはもとより自分の本心を奪ってしまう敵である。古来、酒、色、欲にふけって、陰謀を漏らしたり、被害を受けた前例は数えきれない)

(写真:iStock.com/Nayomiee)

さらに次の例を載せています。

太公望は「利益を好む者には金を与えて迷わせ、色を好む者には美女を与えて迷わす」と言ったと。

伊賀流忍者博物館所蔵『謀計須知』には、「敵の主将を謀るには、その気質により、または好むところにしたがうのがよい」として、智あるとき、愚なるときなど、例示されています。

また、『義盛百首』には次の歌があります。

番所にていましむべきは高咄 酒もりうたひ拍女ばくえき

(番所で慎まなければならないのは、大声で話したり、酒盛り、謡、遊女、博打をすることである)

こうしたことをしていると隙が生じてしまうので、堅く戒めなければならないのです。

忍びは禁欲的である必要がありますが、逆に相手を術中に陥れるためには、好きなものを渡したりして心を奪うという方法があります。

欲に溺れて身を滅ぼした話は古今東西、枚挙にいとまがありません。情報を操る忍びにとって、それを奪われたり、さまざまな手段を用いて引き出されたりすることは致命的となります。それゆえ、とりわけ自分自身に厳しく、欲望を制御することが求められました。

煩悩を生み出す「五欲」を消し去る

五欲我を忘るる事。我を忘るとは、すべて自分の好むことは何事によらず、このことは苦しからずと己が了簡にて行うことなり。将たる人は別して慎むべきことなり。忍び・間者はその好むところを伺うものなり。

──『当流奪口忍之巻註』

(五欲は我を忘れてしまうことになる。我を忘れるとは、自分の好むことは何であっても、「これならかまわない」と自分の考えで行ってしまうことである。上に立つ人間はとりわけ慎まなければならない。忍び・間者はその好むところにつけ込むものである)

(写真:iStock.com/lll0228)

仏教の考え方によれば、人間には煩悩が備わっており、それを惹起させる存在が「五欲」、すなわち食欲・財欲・色欲・名誉欲・睡眠欲であるとされます。これをすべて消し去ることは困難ですが、欲に溺れて身を滅ぼしてしまうことは多々あります。とりわけ人の上に立つ者は自らを律しなければなりません。

『当流奪口忍之巻註』の「忍欲」では以下のように記されています。

欲というのは万事である。金銀を貪るばかりではなく、何でも心に望み欲することは皆欲である。これを忍ぶことは難しい。ことに忍び・間者はこれをよく忍ばなければ大いに害がある。

欲のために忍びが見つかってしまうこともある。千金が落ちていたとしても塵芥とも思わない心が大事である。例えば器などを壊してその後もずっと見る、などの心も欲が離れないためである。汚い心と言えよう。

万事に欲というものがあります。欲は金銀をほしがることだけでなく、何でも心に望み欲することを欲といい、これを忍ぶことは難しいのですが、とりわけ忍びに欲の心があったら多大な被害を受け、敵に見つかってしまいます。ですから、大金が落ちていたとしてもゴミとも思わないくらいの心掛けが大事です。

器を壊してしまった後にずっと見るといった行為も、欲があるからで、汚い心と言えます。ですから、何事につけても欲、すなわち執着心から離れなければなりません

金銀などの賄賂によって相手の忍びにだまされ、大いに損害を被ってしまうこともあります。また、悪意を持って陥れようとする場合も少なからずあるので、常に警戒しておかなければなりません。

関連書籍

山田雄司『忍者はすごかった 忍術書81の謎を解く』

黒装束で素早く動き、手裏剣で敵を撃退する……忍者に対するそんなイメージは、すべてフィクションだった!「忍者」という呼び名自体が昭和30年代に小説などを通じて定着したもので、歴史的には「忍び」と呼ばれた。 最も大事な使命は、敵方の情報を主君に伝えるため必ず生きて帰ること。 敵城に忍び込んで情報を得ることはもちろん、日中は僧侶や旅人に化けて話を聞き出していた。「酒、淫乱、博打で敵を利用せよ」「人の心の縛り方」など忍術書の81の教えから、忍者の本当の姿を克明に浮かび上がらせる。

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山田雄司

1967年、静岡県生まれ。京都大学文学部史学科卒業。亀岡市史編さん室を経て、筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科史学専攻(日本文化研究学際カリキュラム)修了。博士(学術)。現在、三重大学人文学部教授。著書に『怨霊とは何か』(中公新書)、『忍者の歴史』(角川選書)などがある。

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