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忍者はすごかった

2019.08.11 更新 ツイート

忍び込む家の妻や子に贈り物をせよ…忍者に学ぶ「人たらし」術 山田雄司

黒装束で素早く動き、手裏剣で敵を撃退する……。「忍者」についてそんなイメージを持っていませんか? 実はこうしたイメージはすべてフィクションだったのです! 400年前の忍術書をひもとき、忍者の真の姿を浮かび上がらせたのが、忍者研究の第一人者、山田雄司氏の『忍者はすごかった』。現代を生きる私たちにも役立つ「忍者の教え」が満載のこの本より、一部を抜粋してご紹介します。

*   *   *

決して秘密を漏らしてはならない

事のあらわるべきも時節なると云ながら、あやしき下ろうなど語らい、いやしき同類を求むるこそ、あらわるべきのはしなり。

──『正忍記』

(事が露顕するのはそのときの運もあるが、怪しげな下郎たちとつるんだり、賤しい同類を求めたりすることによって、露顕するもととなる)

(写真:iStock.com/YusukeYamamoto)

忍びはさまざまな秘密を握っています。そしてその秘密は他人に決して知られてはならず、隠匿しておかなければなりません。「朱に交われば赤くなる」ということわざがありますが、危ない人物とつきあうことによって、己もそれに染まってしまい、秘密が漏れ、危険が身に及ぶことになってしまいます。

素性のよくわからない怪しい人物とつきあっていると、その世界にはまってしまって抜け出せなくなり、隠している情報を話してしまうばかりか、身を滅ぼすことにつながってしまいます。どのような人物とつきあうか、常に意識しておかなければなりません

まったく違う世界の人と親しくしておく

好むところ友を撰ばざる事。言うは人は生得の常にして己が好むところには友の善悪を撰ばざるものなり。貴人も賤を友とし、下官として高位に交わる。よりて忍ぶには好むところをさぐり知りてとり入ることなり。

──『当流奪口忍之巻註』

(同じ嗜好を持つ者同士は友を選ばないということ。人は生まれながらの常として、自分が好むところでは友の善悪は問題にしないものである。貴人も賤しい者を友とし、下級官職の者であっても高位の人物と交わる。よって忍び入るときには、相手の好むものを探って知っておき、取り入るのが重要である)

趣味を介してさまざまな人と知り合い、仲よくなることができます。そのつてを使って普段は入り込めないようなところへも容易に出入りすることが可能となったりします

自分とまったく違う世界に住んでいる人と知り合いになることはいろいろと刺激になり、さまざまなヒントを得ることができるので、日頃からネットワークを築いておくことが大事です。

友人関係を見れば、その人の嗜好がわかる

心持ちは友にある事。言うは右に同じ。その身の好むことを知りたるを友とす、似るを友とする心なり。この心をもってその人の心根は友をもっても探り知れることなり。

──『当流奪口忍之巻註』

その人の心持ちは友人関係にあるということ。これは右の事項(本書前項)と同じで、人は自分が好むことについて知っている者を友とし、似ている者を友とする。これを用いて、その人の心根は友によっても探り知ることができるのである。

(写真:iStock.com/kenko-)

人は自分と嗜好が同じ人を好み、友となる場合が多いものです。ゆえに、ある人のことを知りたい場合に、その友人のことを調べれば、探り知ることができます。

「類は友を呼ぶ」ということわざがあるように、気の合う者や似通った者同士は、自然に寄り集まって仲間を作ることが多いので、ある人物について知りたい場合、その友人がどのような人たちか調べることによって、おおよそのことを知ることができるわけです。

相手と親密になる

凡そ人の家へ行きては、まずその人の子をほむるものなり。音物をとらするときにも、まず内証方へすべし。次に其の人の愛する下人、男女に限らず是をもてなす。必ず其の身より嬉しがるものなり。

──『正忍記』

(人の家に行ったときには、まずその人の子どもをほめるものである。贈り物をするときにも、まずは妻の方へするのがよい。次にその人のかわいがる下人を、男女に限らずもてなすのである。そうすれば必ず自分自身のことより嬉しがるものである)

さらに以下のように書かれています。

ある家に侵入したいと思うのなら、その家の前をしばしば通り、あるときにはその門の前で仮病を発し、門前で休んでその家の下人に薬や水を頼み、しばらくして病気が治ったようにふるまい、家の中に入ってよく礼を言って知人となって、一旦は帰る。

後日届け物を持って丁寧に礼を述べて親しくなるようにする。そのときには、まずはその家の子どもをほめ、奥方に贈り物をし、次に下人に贈り物をすれば、主人は非常に喜び、気を許して深い話もしてくれるようになる。

江戸時代に活動した伊勢神宮の御師たちは、日本各地に伊勢神宮のお札を配って廻ったのですが、その際のお土産物として、女性が好む白粉や帯などを贈りました。主人よりもその夫人を取り込むことによってひいきにしてもらえたのです。周りの人が嬉しい気持ちになれば、本人も嬉しい気分になります。

関連書籍

山田雄司『忍者はすごかった 忍術書81の謎を解く』

黒装束で素早く動き、手裏剣で敵を撃退する……忍者に対するそんなイメージは、すべてフィクションだった!「忍者」という呼び名自体が昭和30年代に小説などを通じて定着したもので、歴史的には「忍び」と呼ばれた。 最も大事な使命は、敵方の情報を主君に伝えるため必ず生きて帰ること。 敵城に忍び込んで情報を得ることはもちろん、日中は僧侶や旅人に化けて話を聞き出していた。「酒、淫乱、博打で敵を利用せよ」「人の心の縛り方」など忍術書の81の教えから、忍者の本当の姿を克明に浮かび上がらせる。

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山田雄司

1967年、静岡県生まれ。京都大学文学部史学科卒業。亀岡市史編さん室を経て、筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科史学専攻(日本文化研究学際カリキュラム)修了。博士(学術)。現在、三重大学人文学部教授。著書に『怨霊とは何か』(中公新書)、『忍者の歴史』(角川選書)などがある。

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