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プロジェクト“R”

2019.02.19 公開 ツイート

55万部突破! 最恐のストーカー「リカ」シリーズ最新刊刊行記念。

「プロジェクト“R”」開始! 五十嵐貴久

最恐のストーカー「リカ」シリーズ最新刊『リハーサル』発売記念
『リカ・クロニクル/リブート(再始動)への誘い』 五十嵐貴久より

『リターン』そして『リバース』は、書かれるはずのない小説でした。
手元に2002年から2007年前後のメモが残っています。『リカ』が出版された際、編集者その他関係者から続編を書いた方がいいと勧められたが、お断わりした、と私自身が記しています。
特に深い理由はありませんでしたが、強いて言えばホラー小説というジャンルに対するこだわりがなかったから、ということになるでしょうか。少なくとも、当時はそう思っていました。
実際に、私は『リカ』以降、ホラー小説を十年書いていません。潜在的に避けていたのだと気づくのは、もっと後のことです。

「すべてが終わったと思っていた。だが、それはすべての始まりに過ぎなかった」
これはエンターテインメントの常套手段であり、使い古されたパターンでもあります。ですが、パターンになるぐらいですから、そこには真実が含まれているのでしょう。
私の考えに変化が生じたのは、読者の方々から寄せられたメールがきっかけでした。
『リカ』は単行本、文庫、共に私のメールアドレスを著者プロフィール欄に入れています。私としてはビジネスツールのつもりでしたが(幻冬舎以外の出版社からコンタクトがあるのでは、という安易な発想です)予想していなかった事態が起こりました。読者の方々から、信じられないほど多くのメールが届くようになったのです。
(当時はSNSが未発達で、著者のアドレスに直接メールする以外、感想その他を伝えることが困難だった、という事情もあったと思っています)
当初、送られてきたメールには、こんな話を書く人の神経を疑う、主人公の危機意識の低さは異常だ、あんな女がいるはずない、というような内容が書かれていることが多かったのですが、文庫化された頃から、「リカに対する共感」を記すメールが徐々に増えてきたのです。
それはある種の「意志」を感じさせるものでした。

ある段階から「リカ」に共感を抱き、自己を投影し、「リカ」と自分に相似点があると考える方、更には「リカとはわたしのことだ」と強く感情移入する方が増えている、と感じるようになりました。
その数は、今も確実に増殖し続けています。数とは力であり、意志です。
「リカのことを、つまり“わたしのこと”を書くのは、義務ですらなく責任だ」という強烈な意志の力によって、リカのことを考える時間が多くなり、気づくと何かに導かれるように、『リターン』を書き始めていました。

『リターン』は私というより、読者の方々、そして「リカ」の有形無形の「意志」によって「書かれた」小説です。『リターン』において(未読の方もおられると思いますので、詳細は伏せますが)私としてはリカに明確な決着をつけたつもりでしたが、あの時、閉じておかなければいけなかった扉を開いてしまったということが、後にわかります。
既にリカは制御不能になっていました。私自身がリカに(つまり“あなたに”)支配されるようになっていたのです。

そして、読者の方々とリカの意志が、私に『リバース』を「書かせ」ました。
その過程で、リカについてまだ語られていない物語がいくつもあり、それをすべて書かなければ、リカから逃れることはできないとわかりました。
それは絶望であり、諦念であり、重い枷となって、今、私の目の前にあります。

『リバース』執筆後、編集者と何度も話し合いを重ね、『リカ』『リターン』そして本になった『リバース』を読み返し、『リカ』シリーズはクロニクル(年代記)として書かれるべきだ、という結論に達しました。
なぜなら「リカ」は「あなた」だからです。
あなたは10代かもしれない。20代、30代、40代、50代、60代かもしれない。あなたの中に「リカ」がいる以上、すべての「あなた」に対応できる形は、クロニクルしかないのです。

今後、リカについて現代、過去、近未来の物語がランダムに「書かれる」ことになります。それぞれの時代性を反映したストーリーになると思われます。
願わくばですが、発表されるたび、個々の小説をお読みいただいた上で、後で時代順に並べ直して再読していただければと思っています。
それによって、あなたは「リカ」を理解できるはずですが、思惑通りになるかどうか、そこは私にもまだわかっていません。『リカ・クロニクル』とは、そういう物語なのです。

【リカ・クロニクル】(○数字は刊行順/『リメンバー』は2020年12月刊行予定)
1970   1980      1990            2000       2010      2020
『リバース』③  『リハーサル』④  『リカ』① 『リターン』② 『リメンバー』⑤

※2月21日のこの連載内にて、〈「リカ」シリーズ全てにサインします〉「プロジェクト“R”」キャンペーンの告知を行います。

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