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逃げたい娘 諦めない母

2018.11.14 公開 ポスト

あなたの親孝行はもう済んでいる!束縛する母親から距離をとろう朝倉真弓/信田さよ子

「女の幸せはこういうもの」「現実を見なさい」「あなたの将来を心配しているの」……こうした母親の言葉にストレスを感じていませんか? 最近、「毒親」という言葉をよく耳にしますが、そこまで行かなくても、なんとなく母親がうっとうしい。このまま「いい娘」でいることが、本当に幸せなのか……。そんな悩める女性に贈る一冊が、『逃げたい娘 諦めない母』。親の束縛から解放され、幸せに生きるための処方箋が詰まった本書から、一部を抜粋してお届けします。

「マイナス思考」の正体

 五章から六章にかけての瑠衣は、ものごとを悪いほうにばかり考えたり、出した成果に対して素直に喜べずに居心地の悪さを感じたりしています。

iStock.com/spukkato

  このように、何に対してもマイナスに考え、「自分が悪いのでは?」と疑ってしまうのは、子供のころから重ねてきた究極の合理的思考(否定的自己認知)がひとつの原因となっています。

 幼い子供は、年齢相応の合理性をもっています。「どうして?」としょっちゅう問いかけるのは、その表れなのです。

 ところが、父から母への暴力や母の泣く姿を見せつけられたり、突然叱られたり理由なく冷たくされ続けてきた子供は、その理由を考えても訳が分からないのです。

 意味不明なできごとばかりでは、子供の世界は合理性を失ってしまうので、「全部自分が悪い」と考えるようになります。そうすれば、すべての現象が合理的に受け止められるからです。

 母が怒るのは自分が悪い子だから、母が束縛するのも自分が悪い子だからと考えると説明がつくのです。

恋愛・結婚にも悪影響

 しかし、無事に成長するためのスキルとして持ち合わせてきた「自分が悪い」という考え方の癖は、大人になって人間関係を作ったり、人生を楽しく生きたりしていくにあたって大きな障害となります

iStock.com/LittleBee80

 それがマイナス思考の正体です。瑠衣がプラス思考の智治といまいちかみ合わないのは、このためなのです。

 娘が抱くマイナス思考、そして、親に対する負い目。これらは母親からだけではなく、社会的な常識──女の子なら両親の面倒を見るのが当然、男の子よりも頻繁に連絡を取らなくてはいけない──によって負わされる感覚でもあります。

 この負い目に追われるかのように、自分の気持ちの折り合いがつかないまま、身を削るような介護生活に突入する人もいます。

「親孝行」はすでに終わっている

 本来娘は──というよりも子供はすべて──親に負い目を感じる必要などありません。無事に生まれ、親に子育ての楽しみを与えただけで親孝行は完了しています。あなたの親孝行は、もうすでに済んでいます。

iStock.com/kieferpix

 この世に生まれてきたのは親の恩である、と強調するのが日本語です。生まれてきた子供、産んでくれた親という組み合わせです。英語やフランス語を見てみましょう。子供は「生まれさせられた」という受動態です。

 出産して分かることはいくつかあります。確かに苦しい陣痛はありますが、「子供を妊娠した以上、生まなければ自分が死んでしまう」のです。極端にいえば、母親は生きるために、死なないために生むのです。

 生んだことを恩に着せ、陣痛がひどかったと、罪悪感で子供を縛る母がいます。でも、私たちは親も、家族も、性別も、顔だって選べないのです。

 そのすべてが選べない環境のなかで、文句ひとつ言わずに、母の望む“いい子”に育って元気に生きて社会に貢献している。

 それだけで、もう十分なのではないでしょうか

 親子の血がつながっていることに大きな価値を置く人もいます。しかしこれからは、養子や里親がどんどん増えるでしょう。

 虐待のニュースが報道されるたびに、血がつながっていても子供を殺す親があまりに多いことに驚かされます。娘は、母のことを血によるつながりではなく、同じ空気をかなり長く吸ってきた同性のひとり、そう考えてもいいのかもしれません。

「上空」から母親を眺めてみる

 あなたは同じ女性として、母よりも若く、母より長い将来があります。そのことを母はどこかで嫉妬しているのかもしれません。

iStock.com/dmbaker

 娘が自分より優位に立つことが嫌だ、そんな上下関係で娘をとらえる母は少なくありません。自分が味わったことのない仕事上の満足感を得るなんて妬ましい。そのブランド力を散々利用しておきながら、いざとなれば娘をどこかで引きずりおろしたくなるなんて、この上なく寂しくてみじめなことに思えます。

 そんな母親の存在を聞くたびに、どうして同じ女性として、娘の幸せを願えないのかと考えてしまいます。

 距離を作り、少しだけ上空から母を眺めてみれば、どうしようもなく、不安で自信がないひとりの女性として思えてくるかもしれません。そんな思いを抱けるようになるのも、母親研究のひとつの成果です。

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朝倉真弓

1994年、青山学院大学卒業。一般企業、出版社、編集プロダクションを経て、1999年にフリーランスライターとして独立。経営、起業、就職・転職、働き方などをテーマに、一般誌やビジネス誌、ウェブサイトなどで取材および執筆を手がける。実用書やビジネス書の分野では企画やブックライティングを数多く務め、ストーリー仕立ての書籍を得意とする。自著に『女子の幸福論』『たまらない女 ためられる女』『好き⇔お金 ネットで「やりたいこと」を「お金」に変える方法』『ストーリーでわかる! 今までで一番やさしい相続の本』がある。

信田さよ子

1946年、岐阜県生まれ。1969年、お茶の水女子大学文教育学部哲学科卒業。1973年、同大学大学院修士課程修了(児童学専攻)。1995年12月に原宿カウンセリングセンターを開設、所長として現在に至る。臨床心理士。著書に『依存症』『DVと虐待』『母が重くてたまらない―墓守娘の嘆き』『さよなら、お母さん―墓守娘が決断する時』『共依存』『カウンセラーは何を見ているか』『依存症臨床論』『アディクション臨床入門』など多数。

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