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WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE.

2018.09.14 公開 ツイート

20年で「6450倍」! 情報爆発にどう対応するか 佐渡島庸平

従来のビジネスモデルが崩壊し、モノが売れなくなっているいま、ビジネスにおける成功は「コミュニティ」を持っているかどうかで決まる……。『君たちはどう生きるか』『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』を仕掛けたメガヒット編集者、佐渡島庸平氏は、コミュニティの可能性をいち早く感じ、実践してきた第一人者だ。著書『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE.』は、そんな氏の「コミュニティ論」がたっぷり詰まった1冊。今回は特別に本書の一部をご紹介します。

iStock.com/metamorworks

ネットが人を不幸にしている?

今、自分が幸せだと胸をはって言える人はどれくらいいるだろう?

昔よりも減ってしまったかもしれない。

それはインターネットが原因で、アナログ社会のほうがよかったというのは、結論を焦りすぎている。今までの社会は不自由で、僕らはそこに無理やり合わせていた。インターネットは、人々に自由をもたらし、社会をなめらかにする。その流れは、信じていいと僕は思っている。

しかし、過渡期であるが故に混乱も起きていて、多くの人が幸せを感じられていない。これも同時に事実だと思っている。

“奴隷の幸福”という言葉があるように、僕たちは型にハマり、役割を半ば強制的に与えられるほうが楽で、居心地がいい。型にハマることを教えられてきた僕たちは、その型から解き放たれ、心のよりどころがなくなり、不安を感じている。

しかし、パンドラの匣はもう開けられてしまった。インターネットによる変化は不可逆だ。“奴隷の幸福”を自分の幸せにしてはいけない。

では、インターネットの何が、人を不幸せにしているのだろう?

キーワードは、情報の爆発と可視化だ。

情報量が圧倒的に増えているのは、誰もが認識していると思うが、ではどれくらい増えているのか?

総務省が発表しているデータによると、2002年のインターネット全体の情報量を10とすると、2020年は6000倍の6万。社会の中から1冊の本を見つけてもらうのに、2002年と2020年では、難易度が全く違う。情報が多すぎて、ほぼ伝わらない。

だから、ある人には当たり前の情報も、ある人には初見の情報ということが多々ある。情報の伝達が、「なめらか」になるのではなく、多すぎて逆に不自由になっている。そこに大きな問題が潜んでいる。

先ほど、小説は、描写で登場人物のアイデンティティを表現すると書いたが、今はその手法が使いづらくなっている。固有名詞が持つ意味が、読者によって違いすぎるため、作者の意図が伝わらなくなっているからだ。

2000年代になって、ライトノベルが、若者にとっての小説の主流になった。ライトノベルの正式な定義はないが、登場人物が何をしたか、どんな感情になったかが主に描かれているものを指すことが多い。旧来の小説で多くを占めた人物描写、風景描写はほとんどない。

情報量が圧倒的に増えると、それぞれの人が違う情報に触れる。他人が触れている情報に触れず、自分だけの情報を取り続けて、多様な価値観がどんどん強化されていく。

だからコミュニティが重要になる

情報が爆発すると、どの情報を信頼すればいいかわからなくなる。その結果、マスコミ以前の社会と同じ感じで口コミを頼ることになる。どんな情報かよりも、誰が言っているかのほうが、重要になってくる

かつて「2ちゃんねる」は、さまざまな情報が集まったが、それを信頼するのは至難だ。そこにはたくさんの悪意が渦巻いていて、見ていると精神的に疲れるし、安心できる場所ではなかった。

そのような情報の爆発を整理するために、専門的なサイトが生まれた。

レストランは「食べログ」「Retty」、化粧品は「@コスメ」、美容院は「ホットペッパービューティー」、料理は「クックパッド」「クラシル」、家電は「価格.com」が、圧倒的な影響力を持っている。

情報の種類が限定されると、そこに健全なコミュニティができて、その中の口コミを信頼するようになる。今、あげたサイトを一つも使ったことがない人は、もはやほとんどいないのではないだろうか?

自分の行動を振り返ると、情報の爆発にどう対応しているかに気がつける。

僕の場合、新しく読む本を見つけるときには、書店へ行き、書店の棚のあり方で、世の中の流行、書店員さんのお薦めを知り、そこでの偶然の出会いを楽しんでいた。待ち合わせ場所として使うことも多くて、書店で時間を過ごすのが大好きだった。

けれど最近は、TwitterやFacebookで自分が信頼している人が推薦しているものを買うことが多い。

書店をのんびりと歩いたときのように、「ブクログ」「読書メーター」「マンバ」という本のコミュニティの口コミを見ながら次に読む本を探す。

整理されていない情報に触れると、人は自分で情報を選択するという責任を背負う。その自由すぎる故の責任の重さは、多くの人を不安にし、不幸にする。今は、多くの人が情報の爆発に対応できていない。どのように情報を減らすのか、それが仕組みでできていくといい。情報の一つ一つに意思決定をするのではなく、どのコミュニティに入るかだけを意思決定する。そうすると、人は情報爆発に対応できるのではないか。

健全なコミュニティが発展することに、僕は希望を見つけているのだ。

関連書籍

佐渡島庸平『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~』

『君たちはどう生きるか』『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』を仕掛けた、メガヒット編集者がたどり着いた、インターネット時代のヒットの法則! Apple、シャオミー、楽天、ほぼ日。 使われ続ける企業にはコミュニティが必ずある!

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佐渡島庸平

株式会社コルク代表取締役社長。1979年生まれ。東京大学文学部を卒業後、2002年に講談社に入社。週刊モーニング編集部にて、数多くのヒット作を編集。インターネット時代に合わせた作家・作品・読者のカタチをつくるため、2012年に講談社を退社し、コルクを創業。従来のビジネスモデルが崩壊している中で、コミュニティに可能性を感じ、コルクラボというオンラインサロンを主宰。編集者という仕事をアップデートし続けている。

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