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男性不妊症

2018.08.20 更新 ツイート

外傷、発熱、前立腺炎……「男性不妊症」の意外な原因石川智基

 およそ8組に1組のカップルが抱えている、子どもができないという悩み。これまでは女性に原因があるとされがちだった。ところが、医師の石川智基氏によると、約半数にあたる48%は「男性に原因がある」のだという。

 この衝撃的な事実を世に広めたのが、石川医師の著書『男性不妊症』だ。常識がガラリと変わる本書の一部を、抜粋してご紹介します。

iStock.com/Rawpixel

これが男性不妊の「問診表」だ

 精液検査の他に必要な検査としては問診があります。病歴や現在の症状などを尋ねることにより、原因を探していきます。患者さんのひとことで、まるでパズルが解けていくように解決できることも少なくはありません。また、男性側の情報を得ることによって、奥さまに余計な検査や痛みを強いるような治療などをする必要もなくなり、必然的に余計な金銭的負担も削減できるかもしれません。

 質問内容がプライベートで繊細であるため、アンケート形式にしている施設も多いです。問診票をウェブサイトでダウンロードできるようにしているところもありますので、可能であれば、家でプリントアウトして、記入したうえで、受診されると非常に効率がいいのではないかと思います。包み隠さず正直に答えてください。

 この問診で特に大事なのが既往歴についてです。今までどんな病気になったのか、どんな手術を受けてきたのか、ということです。原因を紐解くカギになることが多く、決してないがしろにはできません。

まず「既往歴」を洗い出そう

 男性不妊症を抱える方の中で既往症として一番多いのが「停留精巣(精巣が陰嚢内に降りてこない状態)」です。小児期に停留精巣の既往があれば、精子を造る機能障害の原因となりえます。現在では1歳半健診などでまず見つかりますが、たまに成人になるまで見落とされ、片側(中には両側例も)停留精巣の状態で受診される方もおられます。

 精巣が陰嚢内に収まるのは理由があり、精巣環境を少しでも体温より低くするためです。精巣にとって最適温度は32~34度ですので、精巣が陰嚢内に降りてこない状況は温度による極度のストレスを精巣が受けてしまい、精子を造る機能は低下します。日本の統計では成人の両側停留精巣は全例が無精子症でした。

長期の発熱」の既往も、造精機能の低下を招く可能性があります。精巣は温度に非常に敏感ですぐに精子形成機能は低下します。

 他に「外傷(ぶつけて精巣が腫れあがったことがないか)」や「精巣捻転症(精巣がねじれてしまう、少年に多い疾患)」の既往も大事です。片側だけの疾患であっても自己免疫性造精機能障害というものがあり、全体としての造精機能低下につながることがあります。

 また「耳下腺炎性精巣炎(おたふくかぜ)」が造精機能を低下させることはよく知られています。思春期以降におたふくかぜに罹患した方は要注意です。ただし、おたふくかぜになっても精巣炎になっていなければ、大丈夫であることも多いです。

前立腺炎」「性感染症」の既往のある方は、精液中に白血球の多い膿精液症になりやすいです。造精機能が正常であっても、なかなか受精しないことが知られていますので、適切な治療を受ける必要があります。

 さらに気管支炎などの「慢性呼吸器疾患」について聞かれることがあります。頻度はさほど高くありませんが、精子無力症と合併することがあります。「糖尿病」の既往は逆行性射精(尿道側ではなく膀胱に向かって射精してしまう)や勃起不全(ED)との関連が深くあります。

 もちろん「がん」の治療のために放射線治療や抗がん化学療法を受けると造精機能は無くなり、場合によっては回復しないこともあります。どの程度の治療を受けたのか、具体的に聞かせていただければ、ある程度予想はできます。いまや小児がんや精巣がんは早期発見により治癒可能ながんです。その後のQOL(人生の質)向上のためにも、子供を持ちたいという希望があれば、あきらめないで受診してください。

セックスレス、EDも不妊の原因

 次に手術の既往歴に関してですが、残念ながら子供の頃の手術によって男性不妊になる可能性は低くありません。たとえば、一番多いのが、鼠径ヘルニア(いわゆる脱腸)の手術です。小児期に手術することが多いのですが、小児の精管は非常に細く、また部位的に鼠径ヘルニア根治術の際、損傷することがあります。10例に1例は精路(精子の通り道)閉塞を来しているとの報告もあります。

 また成人への鼠径ヘルニア根治術に対する異物反応で精路閉塞を来すこともありえます。他にボールをぶつけたなどの「精巣の外傷」や精巣捻転に対する手術、膀胱や尿道の手術、脳の手術、リンパ節郭清手術(がんの治療)などが挙げられます。全然関係ないだろうと思われることでもまず何でも伝えていただくことが肝心です。

 また性生活、勃起、射精についての問診もあります。最近ではいわゆるセックスレスカップルが増えてきており、また間違った知識により自然妊娠可能なタイミングをきちんと把握できていないことも多々あります。このセックスレスは都市部において顕著です。質問として「月に何回性交渉をしますか?」というのがありますが、統計を取ったところ、ある地方では平均4~6回だったそうですが、大阪では1~2回というデータでした。やはりある程度回数をこなさないと、できるはずの子供もできません。

 勃起不全(ED)に関しては先ほど述べたように基礎疾患を発見する手立てにもなったりしますが、ただ単に性交渉ができないEDも多く存在します。特に性交渉が持続できないいわゆる「中折れ」状態に悩む患者さんは多く、この場合は内服薬にて劇的に改善することも多いです。

 また最近では陰茎への過度の刺激によるマスターベーションが増え、それが原因である膣内射精障害に悩む患者さんが増えています。大げさではなく、男性不妊外来受診の2割程度を占めるほどです。この場合は内服療法が功を奏することはあまりなく、人工授精などに頼らざるを得ないかもしれません。

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石川智基

医学博士。2000年、神戸大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科腎泌尿器科学で生殖内分泌学研究に従事。その後、米国ニューヨーク・ロックフェラー大学にてさらに男性不妊研究を重ね、同時にコーネル大学にて最新の男性不妊手術を学ぶ。06年、帰国し、神戸大学病院にて男性不任診療に精力を傾ける。08年、神戸大学大学院助教に就任、若きニューリーダーとして国内男性不妊治療を牽引。09年より再び日本を離れ、豪州メルボルン、モナシュ大学にてさらに男性不妊診療・研究に従事。

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