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「小池劇場」が日本を滅ぼす

2017.10.18 公開 ツイート

永田町のベテラン議員が予言した、小池百合子の未来 有本香

当初から小池批判を繰り広げてきたジャーナリスト、有本香氏の著書「小池劇場」が日本を滅ぼす。その中で、ひとりのベテラン議員が「現在の小池百合子」を予言していた――。

ヒロイン誕生と敵役の登場

 劇場には役者が必要である。出し物のドラマを流行(はや)らせるには、魅力的な主役はもちろんだが、よき敵役の存在が重要だ。

「小池さんのあれほど幸せそうな顔を見たことない。私がヒロインよ、という顔。今まさに絶頂だろうな」

 永田町のベテラン国会議員がこう呟いた。

 平成28年8月、女性初の東京都知事に就任後、連日メディアに追いかけられていた小池に対する感想である。

「この勢いが長続きして、東京はより良くなるでしょうか」

 と私が問うと、

「彼女がどこまで本気で地方行政をやる気があるのか、によるよね。首都東京といっても、知事は地方行政の長であって国政とは違う。総理を狙う踏み台に、というような思いで臨むと大変なことになるかもしれない」

 地方議員から永田町へ出た苦労人のこの言葉は、多くの示唆を含む予言のようであったと今は思う。

 知事選での小池の闘いぶり、自作自演は見事だったと永田町の多くが認めていた。

 真夏の選挙戦とその後は、まさにヒロイン誕生の絶好のプロローグとなった。緑のハチマキ姿で「女一人の出発」と第一声を上げ、古い大組織との対決を鮮明に印象づけ、連日の街頭演説では、「何か一つ緑色のものを身に着けて来て」と呼び掛け、観客との一体感をつくりあげた。

 出馬会見での妙な3つの公約の失態を巧く隠し、「東京大改革」なるスローガンとシンボルカラーの「百合子グリーン」で東京中を席捲し大勝した。当選後は一転、涼しげだが柔らかみも感じさせるアイボリーホワイトのパンツスーツに身を包み、余裕の微笑とともに初登庁した。

 その姿を実際に見た都庁幹部は、

「正直、綺麗で華があっていいな、と思いました。初めのうち議会と多少摩擦があっても、だんだん落ち着くだろうし、都政が少し変わるのもいいかなと。まさか、こんな展開になるとは想像もしなかった……」

 とふり返る。

 ファッションの話ばかりで恐縮だが、小池劇場の重要な構成要素の一つなのでもう一つ例を挙げると、リオ五輪の閉会式での、雨中、上質の色留袖を着て五輪旗を振った姿がまた多くの人を魅きつけた。

 金銭がらみで辞めた前二代の知事らに象徴される「オヤジ政治」との決別、代わって「クリーンで見栄えのする」女性都知事が誕生したことを多くの人が喜んだ。

「この人こそ東京の『顔』にふさわしい」と。

 たしかに、小池は「顔」としては申し分ない、いや、良すぎるぐらいである。

 昨今のテレビなどは、地方の首長選挙を「〇〇の顔を決める闘い」などと表現するが、いったいいつから、私たちは、地方行政の長に「顔」を求めるようになったのか。

 1000万人近い有権者が一人を選ぶ東京都知事選挙では、他の選挙よりもいっそう候補者の知名度がものをいう。とくに90年代、青島幸男、石原慎太郎という国民的人気者が続けて知事となったこともあり、今や著名人以外の都知事候補などお呼びでない。

 過去に、東京以外でも、タレント的な人が「改革」を標榜して知事となり、旧勢力と対決する構図でメディアの寵児(ちようじ)となった例はいくつもあった。

 長野県の田中康夫元知事(以下、敬称略)、宮崎県の東国原英夫元知事、大阪府の橋下徹元知事らである。

 10年以上前のことではあるが、田中の初登庁の折、挨拶に赴いた先の県職員から名刺を折られたシーンは今も多くの人の記憶に残っている。

 長野のあの愚をなぞるように、初登庁した小池の前に格好の「敵役」が姿を現した。選挙前から、小池との確執が伝えられた都議会自民党の面々である。

 都議会自民党の責任者は、小池初登庁の1日前、新たに幹事長に就任した高木啓氏(以下、敬称略)だった。たまさか高木は、私の20年来の友人である。

 新知事初登庁の日、高木ら都議会自民党の三役はそろって不在だった。

 留守居役の議員が小池に対応したが、ツーショット写真の撮影を拒否した様子がテレビで流された。さっそく、都議会自民党には「大人げない」「イジメをやめろ」との激しい非難が殺到した。

 腹黒い古狸オヤジどもに寄ってたかってイジメられる女性知事。理不尽な敵と闘うジャンヌ・ダルク。この日、テレビに愛されるヒロイン像がはっきりと定まった。

 選挙戦の最中、自民党候補の応援に出た石原慎太郎が発した「厚化粧の大年増」なる不適切発言からの流れもあり、自民党サイドの男たちの小池への「仕打ち」は、小池劇場の序幕を一気に盛り上げることとなってしまった。

 まさに自民党側のオウンゴールである。

「なぜ、あのとき小池知事をにこやかに歓迎しなかったの?」

 しばらく後になって、高木に聞いてみた。政治家なのだから、そのぐらいの腹芸はできるでしょうに、と。

「前々から入っていたスケジュールどおり、あの日は議会の事務所に出る予定はなかった。それだけだよ」

 高木は淡々と答えたが、「それだけ」でないことはわかっていた。

 旧友だから褒めるわけではないが、高木は勉強家で政策に明るく、まじめに汗もかく政治家である。ただ、反面、融通の利かない頑固なところがあり、宣伝戦などまったく不得手、小池とは対照的なタイプだ。

 就任の時点での小池の敵役は、自民党東京都連、都議会自民党、その2つを牛耳っていると言われていた「都議会のドン」、内田茂都議会議員(以下、敬称略)であった。石原慎太郎らが敵として本格浮上するのはもう少し後である。

 

※この続きはぜひ『「小池劇場」が日本を滅ぼす』をお読みください。

<次回は10月21日更新です>

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「小池劇場」が日本を滅ぼす

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有本香

1962年、奈良市で生まれ西伊豆で育つ。東京外国語大学を卒業後、旅行雑誌編集長、上場企業の広報担当を経て独立。世界中を取材し、雑誌、テレビ、ラジオ、インターネットメディアなどで発信している。国際関係、民族問題に関する取材経験が豊富。近年は国内政治の取材にも注力している。

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