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「税金(タックスクス)テロリズム」という言葉は欧米世界に有る。tax terrorism と英文で検索するとたくさん出てくる。

 昨今、世界中で流行はやりのテロリスト、テロリズムという言葉の始まりはフランスである。terror(テラー、テロル、恐怖)という言葉から作られた。1572年のサン・バルテルミの大虐殺が始まりだ。フランス国王アンリ2世とカトリーヌ・ド・メディシスの娘の結婚式の夜に、旧教徒(体制派)が、パリの全市でプロテスタント(ユグノー派)の家を襲撃して2万人の大虐殺を行った。それからフランス大革命の時、1792年~1793年の一年間に起きた。ジャコバン党のロベスピエールたちによる貴族・国王2千人の処刑があった。徴税請負人(ちょうぜいうけおいにん)であることが発覚した(バレた)、有名科学者のアントワーヌ・ラヴォアジエ(Antoine-Laurent de Lavoisier 1743~1794)も処刑された。税金取り(タックス・マン)は憎まれていたのだ。

 

恐怖政治(テロリズム)の政治家、ロベスピエール(1758〜1794) フランス革命期の第三身分の平民(聖職者、貴族に次ぐ地位。下層労働者とは違う)であり、革命家。ジャコバン党の党首。国王ルイ16世をギロチンにかけたあと、サン・キュロット(下層労働者、貧困層)の強い支持を得て独裁権を認められ権力者になって粛正を行った。歴史学ではテロリズムを恐怖政治と訳す。 

画像:https://commons.wikimedia.org/wiki/Maximilien_de_Robespierre
 

 最近は新興大国のひとつインドでもよく使われている。きっとインドでも税金徴収がヒドいのだろう。アメリカ合衆国では、この「税金徴収(タックス・テロリスト)」という言葉は、1980年代のレーガン政権が始まったときに使われた。

 レーガン大統領は、今のドナルド・トランプと同じぐらいアメリカの保守派(共和党)の人々に愛され、尊敬された大統領だった。「レーガンよ。あのヒドい税金取り(IRS: アイアールエス、米国税庁)たちを何とかしてくれー」と叫び声を上げた。トランプはレーガンの再来であり、人々に強く待望される大統領だ。レーガンは、金持ちいじめのあまりにもヒドい徴税行為をやめさせようとした。

 当時、アメリカのIRS(内国歳入庁。米国税庁)が、税務調査を受けた資産家の家の玄関のドアを蹴破って侵入して、反抗したという理由で射殺する、という事件までがいくつも起きた。本当だ。「IRSのやり方はあまりにヒドい」と強い抗議と反感がアメリカ国民の中から沸き起こった。この時に、「IRS(米国税庁)の職員(エイジェント)は、タックス・テロリストだ」という非難の言葉が生まれた。レーガン大統領は、IRSを強く叱った。「米国民をこんなヒドいやり方で税の徴収と称して痛めつけることは許されないことだ」として組織を再編成した。

 しかしそれでも、その後も、税務署員たちによる、強権発動の、強制力を振り回す、まるで暴力団のような税金徴収はずっとアメリカで続いている。アメリカ国民は今も徴税吏(タックスマン)たちに怒っている。“金持ちの味方”であるトランプ新大統領は、レーガンに倣(なら)って、再び米国税庁のやり方を強く押えつけるだろう。官僚たちを処罰し締め上げる。

 徴税というのは、どこからどう考えても国家が行う悪である。この悪をこの世(人間世界)の不可避の悪だと諦観して、おのれの生涯の哀れで卑しい業(ぎょう)にしてしまった人々が税金官僚(タックス・ビューロクラート)たちである。

 税金をなるべく取らないことが、善政(ぜんせい)である。立派な政治である。理由が何であれ「課税強化」「富裕層への税逃れ対策」と言いだすことは、それ自体が悪である。

 税金をなるべくとらない「減税」が、善であり正しい政治、正しい行政だ。
 

 

『税金恐怖政治(タックス・テロリズム)が資産家層を追い詰める』(副島隆彦著)

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税金恐怖政治(タックス・テロリズム)が資産家層を追い詰める

 tax terrorism(タックス・テロリズム)という言葉は欧米の先進諸国にある。「富裕層への課税強化宣言」で日本の資産家たちも追い詰められた。税金恐怖政治(タックス・テロリズム)の始まりである。今何がどうなっているのかを探る。

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副島隆彦

評論家。副島国家戦略研究所(SNSI)主宰。1953年、福岡県生まれ。早稲田大学法学部卒業。外資系銀行員、予備校教師、常葉学園大学教授等を歴任。「日本属国論」とアメリカ政治研究を柱に、日本が採るべき自立の国家戦略を提起、精力的に執筆・講演活動を続けている。『老人一年生』(幻冬舎)、『属国・日本論』(五月書房)、『世界権力者 人物図鑑』『トランプ暴落前夜』(ともに祥伝社)、『日本人が知らない真実の世界史』(日本文芸社)など著書多数。

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