

4月30日(火)、天皇陛下の退位の儀式「退位礼(たいいれい)正殿(せいでん)の儀(ぎ)」が行われ、翌5月1日には皇太子さまの新天皇即位の儀式「剣璽等(けんじとう)承継(しょうけい)の儀(ぎ)」が行われます。
ことほぎの儀式ではありますが、その先の皇統(こうとう)の前途についても、国民が関心を寄せてゆくことは大事ではないでしょうか。
「皇室典範の見直し」と「女帝・女系の公認」の立場から書かれた『愛子さまが将来の天皇陛下ではいけませんか ~女性皇太子の誕生』(田中卓著)から、皇位継承問題の経緯を短く振り返ります。
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皇室典範の改正をめぐっての数年来の紛糾
平成十七年(二〇〇五年)十一月二十四日、小泉純一郎首相に「皇室典範に関する有識者会議」から皇室典範についての改正報告書が提出された。
その内容に“女性天皇”も認められるというので、本来、国体護持派のはずの一部学者の中に、もともと、皇統は“男系男子”でなければならないのに、これは“女系”天皇への途を開くもので、“未曽有の改悪” “皇統断絶” と叫び、これらの論者主導によるデモ行進や、テロを危惧する発言まで飛び出した。民族派の諸団体や保守政党の一部にも、それに同調し、反小泉の政局にからめる気配も出てきた。
その結果、私の最も憂慮したのは、この問題で、皇族の間に意見の分裂がおこることであり、もしそのようなことがあれば、それこそ“内乱の勃発” “国体の破壊”となるので、緊急にこの一文を月刊誌『諸君!』に発表した次第である。
皇室の祖神、天照大神は女神
先般(平成十七年十一月十五日)の紀宮清子(のりのみやさやこ)様と黒田慶樹(よしき)氏との御婚儀(こんぎ)の行われた帝国ホテルの特製神殿には、わざわざ伊勢神宮から奉遷(ほうせん)の「天照大神(あまてらすおおみかみ)が祭られ、神宮の北白川道久(きたしらかわみちひさ)大宮司(だいぐうじ)が自(みずか)ら斎主(さいしゆ)をつとめられた。
天照大神は、いうまでもなく皇室の御祖神(ごそしん)であり、女神である。また日本神話の中の圧巻は、天照大神の弟のスサノヲの尊(みこと)が、ヨミの国に神去(かむさ)られた母神(イザナミの尊)を慕って泣き続けられる叙述である。生みの母を恋うのは神話に限らず、古今東西、人の子に共通の心情であろう。一方、古来より男性が外で働き、女性が内を守って、夫婦相和(あいわ)するというのは神の摂理であって、心身ともにそのように生成されている。
そして私は、近来一部の論者の唱えるような過激な男女同権論に与(くみ)するものではない。しかし国家にせよ、家庭にせよ、場合や事情によっては、男に代わって──あるいは男と並んで──女が表に立つ必要もあり、それがかえって望ましいことのあることをも理解している。
もともと男女に、知能の優劣や、尊卑の差別等があるわけではないからである。