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じつは治せる“おなかの弱い人”の胃腸トラブル

2016.07.22 公開 ツイート

3つのルールをまず3日。おなかを強くする食生活。 江田証

「おなかが弱いのは体質だから…」

「こんなことでわざわざ病院に行くのは恥ずかしい」

など、おなかの不調に慣れてしまい放置している、"おなかの弱い”あなた。

胃がん・大腸がんなど大きい病気を見過ごしてしまうかもしれないというリスクもそうですが、胃腸にトラブルがある・ないでは日々の生活の質も雲泥の差。きちんと治療をすることが大事です。

胃がん発生に重要な働きをしている特定の遺伝子がピロリ菌感染胃粘膜に発現していることを世界で初めて発表し、毎日全国からの患者さんを診察している消化器内科医、江田証さんによる著書『専門医が教える おなかの弱い人の胃腸トラブル』より、おなかの不調の原因とその治療法を紹介します。

おなかを強くするために、3つのルールをまず3日つづけて

胃もたれ・急な下痢・さしこむ腹痛・胸焼け・吐き気…。
様々な胃腸の悩みを持つ患者さんたちが江田さんの診察室へやってきました。
そこで江田さんが提案するのはベースになる食生活の改善
たった3つのルールを守るだけの、江田式胃腸快調生活の始め方をご紹介します。
 

(江田先生)
みなさんの不調の原因と治療法がわかったところで、全員にやってもらいたいことがあります。

食生活の改善です。おなかの不調は、やはり食事のとり方や内容に影響を受けて起こります。薬で治療して、一時的に不調が改善されても、生活のベースとなる食事のとり方や内容がまちがっていたら、元も子もありません。
 

(胸焼けEさん・55歳)
とはいえ、急に「改善」なんてできるかしら。自信がないわ。いままでダイエットだって成功したことがないし……。
 

(江田先生)
でも、せっかく薬で胃腸の状態がよくなったのに、もとに戻りたいと思いますか?
 

(吐き気Cさん・48歳)
それは嫌ですね。もうあの喉の痛みやムカつきは味わいたくありませんよ。
根本的に治していきたい。
 

(江田先生)
それならだいじょうぶ。大事なのは、治したい、やってみようという気持ちです。私が、食事に関する「3つのルール」を提案します。まず3日間つづけてみてください。
 

(胃もたれAさん・23歳)
3つを3日間でいいんですか?
 

(江田先生)
そう。3つのルールとは「朝食をとる」「いろいろなものを食べる」「消化にいいものをとる」です。簡単でしょう。
 

(胸焼けEさん・55歳)
あら、ダイエットより簡単そう。そのくらいだったら、私にもできますね。
 

(江田先生)
まず、朝食をとるだけで、胃腸のリズムが整います。おなかが弱い人が朝食を1週間抜くと、胃の動きがわるくなります。その後、朝食を再開しても、なかなかもとに戻りません。それほど朝食をとることは、胃腸の働きにとって重要なのです。

次に、同じものをくり返し食べるのではなく、さまざまなものを食べていると、腸内環境が改善されます。

そして消化にいいものをとると、胃腸に余計な負担がかかりません。おなかの弱い人は、ちょっとした負担で不調を起こします。日頃、できるだけ負担を軽くしておくのです。

この3つをまず3日つづけます。それができたらもう3日間挑戦。ほら、ここまでで合計6日です。1週間なんてあっという間だと思いますよ。

習慣化には「3の法則」というものがあるのをご存知ですか?
 

(さしこむ腹痛Cさん・48歳)
3の法則?
 

(江田先生)
まず3日、できたら3週間、最後は3か月。3か月たつと、無意識にできるようになります。「食生活を改善しよう」と意気込んでいたことなどすっかり忘れているはず。3つのルールはみなさんの中に定着し「新しい食習慣」になっているのです。
 

(急な下痢Bさん27歳)
ボク、もうすでにできたような気持ちになってきましたよ。
 

(江田先生)
その気持ちこそ大事ですよ。今日から早速始めましょう。
 

おなかを強くする! 食生活改善の3つのルール

ルール① 朝食をとる

朝食を抜かないで、朝昼晩、3食きちんと食事をしましょう。深夜の夜食はNGです。遅くとも夜9時までに夕食をすませます。

1週間朝食を抜くと、空腹時の胃の運動が弱まってしまうことがわかりました。

その後朝食を食べ始めてもその後1週間の時点でも、胃の運動の強さと食欲はもとのレベルには戻らないというデータがあります。胃に症状がない人はまだしも、胃腸のトラブルをかかえた人は朝食をとったほうが胃の運動力が高まります。

 

ルール② いろいろなものを食べる

腸内環境をよくしましょう。そのためには同じものばかりをくり返し食べない。

多種多様なものを食べると、腸内細菌の種類が増えます。同じものばかりを食べていると、単一の腸内細菌ばかりが増える「ディスバイオーシス」という状態になります。

腸内細菌の種類が豊富だと、腸の粘膜の細胞と細胞が手を握り合って細菌や未消化の栄養分が腸の粘膜の中に入り込んでくるのを「とうせんぼ」して防いでいます(タイトジャンクションという)。

腸内細菌の種類が減り、ディスバイオーシスになると、この握り合う力が弱まり、免疫力が落ちてしまうのです。

 

ルール③ 消化にいいものをとる

同じエネルギー量の食べものをとるなら、胃腸に負担がかかりにくい、より消化しやすいものをとりましょう。

気になる症状別 ワンポイントアドバイス

「機能性ディスペプシア」の人は……

朝食を抜かず、消化しやすいものを中心に。不規則な時間に食事しない。
好きな音楽を聴きながら、ゆっくり食べる。外食なら回転率の高くないお店で。
早食いは禁物。

→『機能性ディスペプシア おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』(Amazonへ)

「過敏性腸症候群」の人は……

高FODMAP食(連載第1回「【腸の新常識】よくおなかをこわすのは糖質が原因かも?」参照)、食物繊維、乳製品、発酵食品は避ける。
食事時間、寝起きなど生活の「規則性」が重要なことがわかっている。

→『過敏性腸症候群 おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』(Amazonへ)

 

「逆流性食道炎」の人は……

脂肪、熱いものは控えて、つねに腹八分目を心がける。炭水化物制限も有効。酸度の高いオレンジジュースは控える。
バレット食道の予防にはカブを食べるとよいことが判明。

→『逆流性食道炎 おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』(Amazonへ)

 

「胃の老化」が気になる人は……

とくに塩分のとりすぎは胃がんの原因になるのでNG。

 

「腸の老化」が気になる人は……

小腸に負担をかけないように少しカロリー制限をする。歳をとってくると、小腸の吸収力が落ちる。

すると、若いときには大腸まで達しなかった栄養分が大腸にまで到達するようになります。

結果的に、大腸の中が「富栄養化」することで、腸内細菌の劣化が起こります。

発がん性のある2次胆汁酸がクロストリジウム・アリアケ菌などの腸内細菌によって大腸内で合成されるようになると、これが肝臓に運ばれて肝臓がんの原因にもなります。

これがメタボからくる肝臓がんです。

歳をとったら、若いときと同じ食事をしていてはだめで、少しカロリー制限をした「シニア食」が必要です。
 

より詳しい情報は『専門医が教える おなかの弱い人の胃腸トラブル』をご覧ください。お求めやすい分割版もあります(詳細はこの記事の下へ)。

江田証『専門医が教える おなかの弱い人の胃腸トラブル』

「またおなかの調子が悪い」は治せる病気です! おなかの不調に慣れてしまっているすべての人のための、専門医が教える治療法大全!

ふだんから、「おなかの存在」を意識していませんか?
しくしく痛む、もたれる、はっている、キュルキュル鳴る…。
「おなかの存在」を意識する必要がなくなれば、生活の質は一気に上がります。
あらゆる胃腸のトラブルへの対処法を、専門医がわかりやすく徹底的に解説。
これさえ読めば、あなたも胃腸の悩みいらず!

江田証『機能性ディスペプシア おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart2「機能性ディスペプシア」を抜粋してまとめたものです。

◆ 5人に1人、若い女性に多い。異常はないのに胃もたれ、胃痛がある
◆ 発症のキーワードは「ふくらみ」「感受性」「ストレス」
◆ 食べても胃がふくらまず、トラブルが連鎖していく
◆ 新薬アコチアミドと漢方薬・六君子湯で解消できる
◆ 内臓知覚過敏には薬のほかに唐辛子も効果あり
◆ まずストレスで胃が働かなくなり、悪循環におちいる
◆ 寝る前に食べると胃もたれするのは?
◆ “おなかの風邪”後の機能性ディスペプシア

江田証『過敏性腸症候群 おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart3「過敏性腸症候群」を抜粋してまとめたものです。

◆ ストレスや腸内環境の悪化で腸の運動が変調する
◆ 下痢型、便秘型、混合型。3つの症状がある
◆ 下痢、便秘の症状にあわせて2種類の薬を使う
◆ 低FODMAP食で腸内異常発酵を止める
◆ 低FODMAP食 食品OK・NGリスト
◆ リラクゼーションや認知行動療法で改善
◆ おなかにまつわる噂のウソ、ホント

江田証『逆流性食道炎 おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart4「逆流性食道炎」を抜粋してまとめたものです。

◆ ピロリ菌の感染率が低下して、中高年になっても胃酸が出すぎる
◆ 食道の筋力低下や感受性の強さも胃液の逆流を招く
◆ 長くほうっておくと食道がんになるおそれがある
◆ 胸焼け、吐き気が週2回以上あるなら治療が必要
◆ 胎児時代の飢餓感で将来、メタボに!?

関連書籍

江田証『機能性ディスペプシア おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

「ディスペプシア」とは「消化不良」の意味。たびたび胃が痛くなる、胃もたれする、食欲がなくなる…といったことに悩まされていませんか? 胃粘膜に異常がなく、胃がん等の器質的な病気でもないのに、胃に症状がある状態を「機能性ディスペプシア」といいます。若い女性に多い、この症状。その原因と改善するための方法を、専門医がやさしく解説します。 ※本作品は、『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart2「機能性ディスペプシア」を抜粋してまとめたものです。 〈目次〉 ◆ 5人に1人、若い女性に多い。異常はないのに胃もたれ、胃痛がある ◆ 発症のキーワードは「ふくらみ」「感受性」「ストレス」 ◆ 食べても胃がふくらまず、トラブルが連鎖していく ◆ 新薬アコチアミドと漢方薬・六君子湯で解消できる ◆ 内臓知覚過敏には薬のほかに唐辛子も効果あり ◆ まずストレスで胃が働かなくなり、悪循環におちいる ◆ 寝る前に食べると胃もたれするのは? ◆ “おなかの風邪”後の機能性ディスペプシア

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子供の頃からすぐ下痢をしたり、便秘になって腹痛に悩まされている…そんな人は過敏性腸症候群の疑いあり。大きな原因はストレスで、10代から始まり、20〜30代の男性ビジネスマンによく見られるトラブルです。排便すると痛みや不快な症状はやわらぎますが、たびたび起こると仕事にも集中できなくなりますね。具体的な改善方法を、専門医がわかりやすく解説します。 ※本作品は、『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart3「過敏性腸症候群」を抜粋してまとめたものです。 〈目次〉 ◆ ストレスや腸内環境の悪化で腸の運動が変調する ◆ 下痢型、便秘型、混合型。3つの症状がある ◆ 下痢、便秘の症状にあわせて2種類の薬を使う ◆ 低FODMAP食で腸内異常発酵を止める ◆ 低FODMAP食 食品OK・NGリスト ◆ リラクゼーションや認知行動療法で改善 ◆ おなかにまつわる噂のウソ、ホント

江田証『逆流性食道炎 おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

中高年に急増中! 胸焼け、吐き気、喉に違和感、酸っぱいものがこみ上げてくる…出すぎた胃酸が食道のほうに逆流すると、こうした症状が起こります。若い時から、ファストフードなど脂肪分の高いモーニングセットをよく食べたり、深夜寝る直前に食べすぎている人に出やすい症状です。不快感を取り除くにはどうしたらいいのでしょうか。専門医がくわしく解説します。 ※本作品は、『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart4「逆流性食道炎」を抜粋してまとめたものです。 〈目次〉 ◆ ピロリ菌の感染率が低下して、中高年になっても胃酸が出すぎる ◆ 食道の筋力低下や感受性の強さも胃液の逆流を招く ◆ 長くほうっておくと食道がんになるおそれがある ◆ 胸焼け、吐き気が週2回以上あるなら治療が必要 ◆ 胎児時代の飢餓感で将来、メタボに!?

江田証『医者が患者に教えない病気の真実』

胃がんは感染する!? 風呂に浸からない人はがんになりやすい!? 低体温の人ほど長生きできる!? 鮭やエビを食べれば視力が回復する!? 毎日200人の患者を診察するスーパードクターが、ダイエットやアンチエイジングから、がんや認知症予防まで最新の「健康長寿のヒント」72項目を徹底解説。今日から実践すれば、あなたの健康と未来は輝きます! 【本文内 FODMAPに関する補足】 豆乳は、乳製品の中では、低乳糖(低ラクトース)であるため、乳糖不耐症だけならば飲用しても大丈夫です。 ただ、豆乳には種類があり、中にはオリゴ糖をたくさん含むものとそうでないものがあります。 豆乳には「大豆から作られた」ものと「大豆抽出物から作られた」ものがあります。 「大豆から作られた」豆乳には、ガラクトオリゴ糖(GOS)が豊富に含まれるため 過敏性腸症候群の人は避けるべきでしょう。 これは大豆にガラクトオリゴ糖(GOS)が豊富に含まれますので当然のことと言えます。 一方、「大豆抽出物から作られた」豆乳には、FODMAPの成分である、 ガラクトオリゴ糖(GOS)、フルクタン、ポリオール、ラクトースも含まれていません。 つまり、豆乳は、大豆から作られたものではなく、大豆抽出物から作られたものを選ぶことが重要なのです。 すべての豆乳が高FODMAP食ではないので、乳製品が飲みたい人には救いです。 「豆乳(大豆から作ったもの)」は避け(高FODMAP食)、「豆乳(大豆抽出物から作ったもの)」は 食べても大丈夫(低FODMAP食)と覚えておいてください。

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江田証

1971年、栃木県生まれ。医学博士。自治医科大学大学院医学研究科修了。江田クリニック院長。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバーを務める。毎日、国内外から最新の治療法を求めて来院する、お腹の不調をかかえた患者を胃内視鏡・大腸内視鏡で診察し、改善させることを生きがいにしている。著書に『医者が患者に教えない病気の真実』『病気が長引く人、回復がはやい人』『おなかの弱い人の胃腸トラブル』『腸内細菌の逆襲』(すべて幻冬舎)などがある。

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