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『ビューティーキャンプ』刊行記念対談

2016.04.28 公開 ツイート

美人に生まれるのは本当のところ得ですか? 中沢沙理/林真理子

美人に生まれるって、本当のところ、得なの損なの? 林真理子さんの最新小説『ビューティーキャンプ』の登場人物は美女ばかり。刊行を記念して開かれたGINGER STYLE セミナーで対談の相手を務めるのも、2016ミス・ユニバース日本代表に選ばれたばかりの日本一の美女・中沢沙理さん。世界に通用する美とはどのように培われるのか。圧倒的な美が周囲にもたらすものとは。(撮影:岡村大輔)


ミス・ユニバース・ジャパンが選ばれるまで

作家の林真理子さんは小説『ビューティーキャンプ』で美女たちの戦いを描いたばかり

林真理子(以下、林) こんばんは。今日はお集まりいただきありがとうございます。今年のミス・ユニバース日本代表中沢沙理さんです。

中沢沙理(以下、中沢) 皆様こんばんは。3月1日に開かれました日本大会にて2016年ミス・ユニバース・ジャパンに選んでいただきました。今日は皆様と楽しい時間を過ごせたらと思います。よろしくお願いいたします。

 あまりにお綺麗で、今、「おぉっ」と会場からどよめきが起きましたけれども、どうですか? 日本代表に選ばれる自信はありました?

2016 ミス・ユニバース・ジャパンの中沢沙理さん

中沢 100%の自信はなかったんですが、ずっと以前よりミス・ユニバースに憧れていて、特にこの半年間は集中して取り組んできましたので、自分の可能性を信じてとにかくベストを尽くそう。そう思って臨みました。

 今回私は本を書いた仕上げとして初めて日本大会の審査員を務めましたが、大会は一次審査、二次審査とありまして……。

中沢 全国47都道府県からそれぞれの代表が集まり、一次はダンス審査と、大会前に行われた2週間のビューティーキャンプでの生活態度などの結果で、まずは46人から16人に絞られました。

 47都道府県のうち、唯一棄権が出たのが、私の故郷、山梨。それで46人。まぁ、それはどうでもいいんですが。でもミス・ユニバースの苛酷なところは、なんといっても1位が選ばれる瞬間ではないですか。

中沢 二次審査で選ばれた5人のうちから、4位、3位、2位と発表されて、最後残されるのが1位と5位。

 二人が手を取り合い向かい合って、その時を待つ。今回、中沢さんと向かい合った方はとても背が高くて。

中沢 182センチくらいありました。

 中沢さんがとっても華奢で小さく見えたので、世界大会に行くのは背の高い子かしらと思ったんですけど。選ばれて、どんな思いでしたか。

中沢 びっくりしました。身長が高い方が世界大会で有利だと多くの人が思っていらっしゃるでしょうし、それでも「選ばれたい」という気持ちが自分の中にありまして。ひらすら祈ってました。

 最後にああやって二人が向かい合うってイヤなことじゃないですか。

中沢 12月から少しずつトレーニングが始まって、ファイナリストはライバルでありながら仲間でもあったので、最後は誰が選ばれても「おめでとう」と言えるようでありたいとはずっと思ってました。


実際のビューティーキャンプは小説より苛酷??

『ビューティーキャンプ』はお読みいただいているかしら?

中沢 もちろんです。

 この小説はミス・ユニバースの舞台裏を取材して、「ビューティーキャンプ」という2週間の非常に苛酷な、アスリートのような合宿の模様を描きましたが、実際に体験してどうでしたか?

中沢 小説と近いものがありました。実際、朝7時のジョギングから始まって夜中までダンスレッスンがある。体力的にも精神的にも大変でした。

 小説にはエルザという美の伝道師が出てきて、美しい人たちに向かって、「あなたたちは今まで美しいことで辛い目に遭ってきたでしょう」と問いかける。小中学生くらいだと「首が長い」「背が高い」と苛められ、高校生くらいになると「色目使ってる」「イヤらしい」と責められる。中沢さんはそうした経験はされたのかしら?

中沢 直接的に苛められることはありませんでしたが、身長が高くて目立っていたので男の子は全然来てくれませんし、男の先生と話していると女の先生がイヤな目で見てくるとか、そういうことは確かにありました。

 いくつくらいで、“自分っていけてる"って自覚するものですか?

中沢 はっきりした自覚の記憶はないのです。でも自信をもっとつけたいと思い始めたのは中学生の時でしょうか。中1で165センチはありました。

 「沙理ちゃん綺麗」って、みんなから言われたでしょう。

中沢 「かわいいね」と言われたことはありますが、「調子に乗り過ぎちゃダメ」と母にずっと言われてまして。褒められた時は、素直に「ありがとう」という気持ちでいました。

 中沢さんは今歯科医を目指していて、勉強にも励んでいる。それはただ綺麗な人と言われるのがイヤだからとか?

中沢 そんなことはないんですが、単純に身体や人に興味があったので勉強を続けてきたら、ここまで来ました。


美しすぎる女は男からも女からも敬遠される

 先ほど控え室で意地悪な質問をしたんですよね。ミス・ユニバースのファイナリストレベルに綺麗だと逆にモテないんじゃないかって。私も小説を書くにあたってたくさんの元ファイナリストたちから話を聞いたんですが、みんな本当に綺麗で。ある時、青山で取材して、皆さんが店の外まで見送ってくれたんですけど、他にも女の人がたくさんいる中で彼女たちだけに光が燦々と当たっている感じだった。すごい輝き。でも、彼女たちの半分以上は外国の方と結婚している。これだけ綺麗だと、日本人の男性は怯えちゃうんじゃないかな。だから、ファイナリストレベルになると、男性に対して実はあまり得してないような。

中沢 男性からちやほやされた経験は本当にないです。

 モテないなんて、信じられない。高校は共学?

中沢 共学で、理系コースだったので3分の2以上が男の子でした。それでもクラス内で付き合うってこともなく。大学も理系で1クラスで6年間ずっと一緒なんですが、やっぱりなにもないんです。

 学校に行く時はヒールを履いたりなさる?

中沢 履きます。ヒールを履くと180センチを超えてしまうので、男性と歩く時は履かないようにとも思いますが、気を遣うのもしんどくて。

 このレベルでの美しさだと、声をかけづらいのかしら。小説『ビューティーキャンプ』のエルザは「美しさは不当に貶められている」と言います。聡明さや優秀さは努力して身につけたものだから賞賛されるけど、「美人」「かわいい」は生まれつきだから評価されにくいと。「どうせ美人だからうまくいったんでしょう?」みたいな言われ方はされたことあります?

中沢 「笑っておけばなんとかなるよ」というお言葉をいただいたことがあって。半分は褒めて下さってるのかなと思いながらも、中身をきちんと見てほしいという気持ちもあります。

 ビューティーキャンプでは協調性とか前向きであるとか、そうしたことも審査対象になるんですか?

中沢 そうですね。50時間ほどの講義には常にカメラが入ってまして、先生方からの評価もあるので、全く気を抜けませんでした。少しでもイメージが下がると上げるのが難しいので。その他大勢にならないよう、自分のカラーを他の人に伝えるためにはどうしたらいいか、ということをずっと考えていました。

 大会本番ではスピーチ審査もあるんですよね。中沢さんが本番で受けた質問は?

中沢 あなたの人生にもっとも影響を与えた人物は誰ですか? という質問だったので、ずっと憧れていた女優のオードリー・ヘップバーンについて話しました。誰が見ても美しい女優ですが、晩年にはチャリティー活動をされてまして。外見だけではなく行動でも多くの人を魅了したところに惹かれています。

 スイスのローザンヌに旅行した時、案内の方がどうってことのないお墓の前で車を停めてくれて。それがオードリー・ヘップバーンのお墓でした。あの方は顔もほとんどいじってなくて。あえてシワなどもそのままにしてて、白人の女性にしては珍しい。ところで中沢さんは女の友達は多いのかしら?

中沢 私はかわいい女の子が好きで、みつけるとすぐに声をかける方です。

 かわいい女の子同士でつるむ?

中沢 そういうわけじゃないんですけど。いろいろな方と知り合いたくて、キャリアを積んでる方から、専業主婦になってお子さんもいらっしゃる方までいます。

 モデルさんって同じくらいの美しさの人たちと一緒にいるのが楽で、普通の人とは群れないって、ご本人たちからお聞きしたことがあります。

中沢 確かに特殊な仕事なので、お互いの環境を言い合えるという意味では落ち着きます。でも私の場合は好奇心の方が勝ってるかもしれません。

 今日びっくりしましたが、まだ22歳? この威厳。この落ち着き。2012年のミス・ユニバース日本代表の原綾子さんにお目にかかった時、彼女も若いのに、辺りを睥睨するような威厳があって。女王のようなオーラを発していた。ビューティーキャンプで身につくものなのかしら?

中沢 ビューティーキャンプを始めとするミス・ユニバースの活動を通じて、考えはぶれないようになってきたとは思います。


完璧な肉体美は偏見をもはねのける

 この間の日本大会を見てると、舞台上の皆さんがすごく楽しそうで。水着姿だけど、羞恥心なんて皆無。音楽に合わせてリズムにのって、「私を見て」って歩く。ターンする姿も、一朝一夕で作れるものではなくて圧巻でした。
そんなことと比べるなと言われそうですが、昨夜テレビで女芸人たちが、それこそ恥ずかしげもなくお腹を見せて笑いをとっていて。
その対極がミス・ユニバースなわけですが。贅肉のひとかけらもないボディに、完璧に伸びた脚とくびれ。イヤらしい目で見ることができないくらいの肉体美。80年代にミスコン批判がありましたけど、そうした偏見をはねのけるほどでした。

中沢 私自身、普段は肌をだすことに抵抗があって、女友達と行く温泉さえイヤなんですが、今回ミス・ユニバースに参加するにあたって、水着に着替える時間が限られており、そんなことにこだわっている場合じゃなくて、全員の裸を見飽きるくらいに吹っ切れました。苛酷な2週間の最後の締めくくりだから、舞台の裏で「みんなで盛り上げよう」と円陣を組んで臨みました。

 今後は歯医者さんのお勉強も続けていく?

中沢 軸は変わってません。勉強は最後までやりたいですし、それに加えてミス・ユニバースという新しいブランドや知識を取り入れて美容と健康も伝えていけるようになりたいです。もともとファッションが好きなので、メークや服の着こなしなども発信していきたいと思ってます。

 今日のメークはご自分でされたとか? 今日の方が、大会の時より綺麗。

中沢 大会時はプロのメークさんにミス・ユニバースらしいメークをしていただきました。今はミス・ユニバースのブランドイメージと、2016年の新しい私にしかない魅力を伝えられるメークを研究中です。


強くてゴージャス。世界で通用する美とは

 数年前の日本大会ではたかの友梨さんが審査員でした。「あの子かわいいですね」と言ったら、「確かにかわいいけど、世界大会でどうなんでしょう」とおっしゃって。それが印象に残って小説で使わせてもらいました。難しいですね。世界が求める美しさは強くてゴージャス。日本人はそういうのがわりと苦手のようで。

中沢 今回、本を読ませていただき、そのシーンはとても印象に残りました。実際のキャンプ中でも、かわいらしくて日本人が好きそうなタイプの方もたくさんいて、でも目標は世界なので、世界でどうアピールできるかを、私も小柄な方ではありますが、ずっと考えてます。

 中沢さんはアジアンビューティーだからアジアとか日本を前面に出すのはどうですか。

中沢 日本人として育ってきましたので、日本の良さをアピールすることは大事だと思ってます。日本と日本人女性の良さを伝えていきたいです。

 これまでだと知花くららさんは日本人だったら誰もが好きなタイプで、その後の森理世さんは強烈な個性を放って世界一の美女になった。世界に通用する美を手にするのは大変なこと。

中沢 世界大会は80カ国くらいから集まってきて、国によって美の基準もバラバラ、肌の色も違う。そんな中で単純に日本人が見て顔がかわいいとかスタイルがいいというだけでは世界で目立てない。内面も含めて世界基準で誰もにいいと思っていただけるようにならなくては。

 日本の男性は狭量で、自分よりも背が高い女性とか強い個性を持つ女性を敬遠する傾向があって。そうした男性と合わせ鏡にある日本の女性はいつまで経っても「かわいい」を第一に考えるところがあると、『ビューティーキャンプ』の書評にありました。

中沢 日本の男性が望むのは、自分の一歩後ろをついてくる気の優しい女性なのかなと思いますし、そういうふうに実感する場面もたくさんあります。でも世界で、日本でももちろんそうですが、活躍するためには、自分を出していかないといけないと思ってます。そうしないと成長も難しいのかな、と。

 私が取材でお会いした日本人男性と結婚した元ファイナリストたちの多くが離婚されてましたよ。男性側が受け止めきれないんでしょうね。でもいいじゃないですか。世界に羽ばたいて外国の方と結婚するというのも。

中沢 そうですね。結婚願望はありますので、世界でいろいろな方と出会える機会が今後あるとすると楽しみです。


起き抜けの白湯とストレッチ、フルーツの効用

 これだけの美しさを保つために気をつけてらっしゃることがあれば、最後に教えて下さい。聞いても無駄なような気がしますけど(笑)。お肌のためにやっていることとか?

中沢 日焼け止めは、春先も冬も、肌に負担のない範囲でつけてます。

 ダイエットはなさったりする?

中沢 ビューティーキャンプの時は体力的に厳しくて、一日三食プラス補食を2回とか食べてました。もともと食べることが好きで、東京で美味しいものを探すのが趣味です。小さい頃は新体操と水泳、中学高校はバレーボール部、今はヨガを中心にジムに通ってます。ダイエットをやるというより、運動して食べる感じです。

 この間対談で堀北真希ちゃんにお会いしたら、中学時代にジャージ姿のところをスカウトされたそうで。ジャージ姿から今日の彼女の美しさがわかるなんてすごい。中沢さんもスカウトされたとか。

中沢 高校時代にたまたま東京に遊びに来ていた時でした。

 どこを歩くとスカウトされるのかしら?

中沢 表参道です。

 ヒエー。やっぱり綺麗だったんでしょうね。普段はお水などにも気をつけてらっしゃる?

中沢 水分をたくさん摂ろうとは思ってます。起き抜けに白湯を一杯飲んでから動くようにしてます。その後軽くストレッチして、フルーツを少し食べる。それはこの5、6年続けています。

 世界大会に向けてそろそろ準備も本格的に始まりますか? 数年前に取材の一環で、ラスベガスで行われた世界大会を見に行きましたが、中南米の人たちの応援がすごかった。彼らは世界一になると一族郎党がお金に困らないくらいのお金持ちになれる。日本だと賞金もないそうですけど。
プレッシャーをかけるわけじゃないですが、そのくらい国を懸けてやってる人たちとの競争は大変ですね。ぜひ頑張っていただきたいです。

中沢 楽しんでやりたいと思います。

 ここにいる皆さんも応援してます。頑張ってください。
(おわり)

 

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『ビューティーキャンプ』刊行記念対談

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中沢沙理

1993年滋賀県生まれ。2016ミス・ユニバース日本代表。現在、都内の医療大学に通う。身長171センチ。

林真理子

1954年山梨県生まれ。82年エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』でデビュー。86年『最終便に間に合えば/京都まで』で直木賞を受賞。95年『白蓮れんれん』で柴田錬三郎賞を、98年『みんなの秘密』で吉川英治文学賞を受賞。週刊誌や女性誌の連載エッセイも人気で『野心のすすめ』は大ベストセラーとなる。近著は『中島ハルコの恋愛相談室』『マイストーリー 私の物語』など。

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