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直撃!スペシャル『天童荒太さんからのメッセージ』

2000.07.01 公開 ツイート

第三弾

【Webマガジン幻冬舎】での読者のみなさんからの質問・感想に応えて。 天童荒太

  私が提示した質問に対し、とても素晴らしいお答えが、幾つも寄せられました。
 心から御礼申し上げます。どうもありがとうございます。
 これほど沢山のお答えが寄せられるとは、思ってもみませんでした。しかも、すべてのお答えが真摯で、誠実なものばかりです。
 最近つらい事件がつづき、人間の<悪>の部分にばかり焦点があてられた報道が多く、心がしぜんに沈みます。けれど、お寄せいただいたお便りやメールには、人としての美しさや誠実さ、温かさ、まじめさなどが溢れ、「人間の美徳」というものが、ひしひしと感じられます。若い人に対し妙に風当たりが強い情報ばかり、目につくけれど、真剣に生きることに悩み、人と一緒に生きることを懸命に考えている、若い人々がとても多いということを、社会はもっと積極的にアナウンスすべきだと、つくづく思います。
 担当編集者も、予想以上の反響に、とても喜んでいる様子です。
編集者に一言、添えてもらいましょう。 
「みなさん、本当に多くのメールをありがとうございます。このWebマガジン幻冬舎では、今後もみなさんのご意見を反映できる場所作りをしていきたいと考えています。今後ともよろしくお願いします」
 すべての回答を、皆様に読んでもらいたいと思っていました。
 ただ現在、そのシステムがないそうです。すべてが無理なら、一部だけでも、読んでもらいたいと思いました。私と編集者だけが独占しているのは、もったいなさ過ぎるお答えが、幾つもあるからです。
 胸が熱くなるような、お答えもあります。深い悲しみを抱えた方もいらっしゃいます。
 皆さんに、そうした方々の、喜び、悲しみ、苦悩、勇気、願いといったものを、理解してもらえたら、そして共有してもらえることもあるなら、素晴らしいことだと思います。
 そしてまた、これらの回答をもとに、皆様方が、さらに想いを深めたり、個々の考えを検証・発展させたりされるなら、『永遠の仔』という種子からふいた<芽>が、どんどん成長してゆくことになると思われ、本当に嬉しいことです。
 以下に、回答の一部を掲載させていただきます。
 ご紹介させていただいた方々には、重ねて、感謝申し上げます。
 なお、今回ご紹介できなかった方々の回答についてですが、前回申し上げた通り、決して読んでいないということではありません。編集者から届いたものは、すべて拝読させていただいています。そのうえで、いまはまだ、私や編集者のあいだで温めておいたほうがよいと思えるものは、そばに大切に置いています。
 また、私がインターネットを使用していないため、編集部とのやり取りにおいて、時間的なずれがあります。最近お寄せいただいたメールに関しては、まだ拝読していない場合もございます。あわせて、どうかご理解ください。

 

< 天童荒太さんから >

『救い』ってなんでしょう。
どういう状態になれば、人は本当の意味で『救われた』と言えるのでしょうか。

『幸せ』ってなんでしょう。
どういう状態にあれば、人は本当の意味で『幸せになった』と言うのでしょうか。

 


< お寄せいただいた回答 >

「幸せは、人に与えられるものではなく、自分自身で切り開いていくものだと私は思います。そして、自分で作った道を進んでいくことで、なにかしら自信が湧き出てくるような気がします 。そして、そのことを他人に認められたりすることや、必要だと感じてもらえることで、自分の居場所を見つけられるんではないでしょうか 。自分を必要としてくれる人がいるというだけで、気持ちがやさしくなれる・・・それが今現在の私の幸せです。
「救い」については、私にもまだ答えは出ていません。今でもまだ苦しめられる過去の出来事を引きずっている以上、完全に救われる時は未だこないと思ってます。いい最期をむかえられたときに、救われるのかもしれません。未だ答えを出さずにいるのは、ある意味逃げてるからかもしれませんが、ぶつかっていったとしても 捨ててしまっても、仮に犯罪へと発展しても、それが解決できる道だとはかんがえられないのです。私を苦しめた人の最期をきっちり見とどけたとしても、「救い」にはたぶんならないでしょう。まだ私には、答えは出ていません。」

< 米倉陽子さんより >


『救い』。私にとっては、自分のしたことで喜ぶ人がいてくれることです。
『幸せ』。自分がいて、自分の愛する人がいて、ひとりではないこと、お互いに感情を共有できること、だと思います。
だから、私は優希に、笙一郎と『幸せ』になってほしかった。
ふたりが、お互いがいることで『救われ』てほしかった。
そう思います。
原作を読み終えてから、もう半年以上たちますが、この思いはずっと変わっていないし、ドラマを見て、ますますその思いを強くしています。
『永遠の仔』に出会って、私は人間の感情の根源を垣間見たような気がします。
本能のレベルで、体中を揺さぶられるようでした。
人間の感情って、突き詰めるほどに深くて、痛いものなんだ、と、体中にしみました。
誰でも、大なり小なり、心に傷をもっているものだと思いますが、『永遠の仔』を読むことで、その傷は癒されていくはずです。
とてもとても深い愛情が、この作品の中にあふれているからです。
< 三好伸佳さんより >
 

46才の三人の娘の母です。
私にとっての『救い』は、『肯定感』です。
私は生まれつき顔面麻痺が少しあって 両親や弟達から存在を否定されて育ちました。
従弟に「悪い根性を持って生まれたからそんな顔 なんや」と親に聞いた、と馬鹿にされた事もありました。
でも夫と知り合い、夫に気に入られようとするたび 「そのままでいいんや」
と言われることで、こんなに楽に生きられるんだと 知って、固かった心の芯が芽生え始めました。
子どもを持つことに不安もあったのですが 取り越し苦労でした。
第一印象で見下した物の言い方をしたり、 同情の塊のような物腰で接する大人達と違い 子ども達や子どもの友達は、とても素直です。
私は親になって、やっと人間としての生き方を 学ぶ機会を得ました。
私は成長してる、役に立ってる、必要とされている それが『幸せ』です。
娘達にその事を伝えていこうと思っています。
「永遠の仔」の本は、夫がポケットマネーで 買って来てくれた本なんですが、宝物です。
<さんより >


Q.『救い』ってなんでしょう。
難しい質問ですね。あの三人にとっては、生まれ変われることが救われることだったような気がします。
Q.『幸せ』ってなんでしょう。 
人や自分を傷つけたりしないでいられる状態でしょうか。
また“失う”ことを恐れる時って幸せなのかな。人間て満たされるとそれを失うのが怖くなるでしょ?
< 金丸ひろみさんより >


「救い」とは、痛み、悩み、不安、恐怖、劣等感、自己嫌悪、猜疑心、そのようなマイナス因子を他人が、受け入れたり、一緒に考えたり、その心に寄り添ってくれる事だと思います。「どんな状態でも私はあなたが必要」そんな風に言われれば人は救われたと感じるはすです。
「幸せ」とは、精神面で満たされる事です。素の自分を受け入れてくれたり、素の自分を見せれる相手がいること。そういう人が自分の傍にいてくれたら人は幸せを感じるはずです。
あたしが考える「救い」と「幸せ」は似ています。どちらも、どうしようもない自分を受け入れてくれるという事が絶対条件だと思います。
< アゲハさんより >


『救い』ってなんでしょう。
あの3人で救いを得たのは笙一郎ではなかったかとかすかに思うようになりました。人を殺してしまった自分と本心にさいなまれ自己矛盾と戦い、それに勝つためには死んででも残された人たちを生かすことに目覚めたのではないかと。
優希は「私を探さないでください」と言っているようにまだ救いが見え隠れしている状態にある。
最後梁平が笙一郎の遺骨を持って双海病院に現れた時にそこの入院児に「ジラフ」という呼び名の子がいた。ところが名の由来がタバコによるやけどの斑点ではなく、首が長いというところ、何か梁平に救いが近づいていることを思わせているようでした。
いずれこの作品が後々語り継がれ、多くの人に読まれることを望むばかりです。
< 松下大圭さんより >


この場合の「救い」ってトラウマからの解放だと思います。
永い間苦しんで来たことからの解放。
「救い」本来の意味は生きる意味を見つけることだと思ってました。
「幸せ」は例えば散歩の途中に可愛い花を見つけたりの小さなものからそりゃぁもう人それぞれ色々と。自分にとって良いことや嬉しいことなどのプラスのエネルギーに接したり満たされている状態にあるとでもいうのでしょうか。
私にとっての究極の「幸せ」は自分が必要な人に必要とされることかなぁ。別に相手が男じゃなくても良いです。介護などの仕事もしてみたのですが確かに必要とされても仕事を越えた何がないとだめですね。贅沢なのかな。  
< さんより >


『救い』について
優希の場合、母親の残した遺書にある「愛している」の言葉で十分ではないでしょうか。
日本では特に、家族の中では照れくさくて使われない言葉ですから。
死んでしまったのは悲しい事ですが、私がこの場面で流した涙は切ないものではなく、よかったよかったという涙だったと思います。
ちなみに数多くの本を読んできましたが、泣いたのは初めてです。
『幸せ』について
一歩後退してみないとわからないもの。
体を壊した時にいつも、健康なだけで幸せだなあとつくづく思います。
なんか的外れなような気もしますが天童荒太さんに読んでいただければそれもまた幸せです。
< sagu1972さんより >


「幸せなんて存在しない」
これで全て片付くと思います。
それに気づくと救われる。
人はあやふやなものにしがみ付こうとする。
それを反省し、確認することで 幸せのようなものがやって来るのでは ないでしょうか。
< 匿名希望さんより >


# 作家への質問はすでに締め切らせていただきました

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直撃!スペシャル『天童荒太さんからのメッセージ』

 ※本連載は旧Webサイト(Webマガジン幻冬舎)からの移行コンテンツです。幻冬舎plusでは2000/07/01のみの掲載となっております。

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天童荒太

1960年愛媛県生まれ。93年『孤独の歌声』で第6回日本推理サスペンス大賞優秀賞作、96年『家族狩り』で第9回山本周五郎賞、2000年『永遠の仔』で第53回日本推理作家協会賞を受賞。04年『悼む人』で第140回直木三十五章、13年『歓喜の仔』で第67回毎日出版文化賞を受賞。

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