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恨みそずい

2006.04.15 公開 ポスト

最終回

優しい芸能界光浦靖子/大久保佳代子

 

光浦靖子さま
 前略 芸能界は「こんな楽してこんなにお金もらえるの?」って思ってないですよ! 芸能界、全然びびってますよ。
 めちゃイケ行く時だって、フジテレビのあの円球を見上げる度に、「あの円球落ちて来ないかな。軽いケガ位の事故とか逢わないかな」とか、なんやかんや行かなくてよい不可抗力な理由考えたりして足が重いんです。「やったー! 今日はタレントさん~」なんてウキウキだったことなんかないです。
 違うの! たまたま去年1回だけ思ってしまった仕事があったんです。花火大会のラジオ中継のゲストで呼ばれた時です。花火大会をラジオ中継ってまず「?」でしょ。で、打ち合わせ時、担当ディレクターが「基本、アナウンサーが花火の種類等説明し実況中継しますから、たまに振られたら、感想言ってくれればいいです。」と。時間かつかつで、放送中2回だけ振られました。
「きれいー」
「でかいー」
 終了~。
「なんも喋ってませんが大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。毎年ゲスト呼んでも、時間なくてね。」
 普通に花火見物で終わってお金いただいちゃった稀なケースがあったんです。んっ? 石塚さん(ホンジャマカ)ならこの2回も確実に笑いにするって? そーなの。それが出来たらもう少し仕事増えてますよ。

 芸能界、特にこのお笑いの世界ほど、実力社会はないと思います。子供の頃抱いた芸能界のイメージは、ダークな世界。女はプロデューサーに抱かれて仕事をもらうのが当たり前。ホテルのキーをもらったら、覚悟を決めなければいけない。芸能界に足をつっこんで、一応12年間くらい経ちますが全くないですよ。私より、全然どっぷり芸能界にいる光浦さんもないでしょ?
 クリアーな世界です。かつ笑いをとった人が評価されるというシンプルな世界。
 クリアー&シンプル。
 だけど、コレが難しいことこの上ない。求められている役割を理解し、自分のキャラクターに添って場の空気を呼んで、タイミングよく動き笑いにする……。難しい。
 まず自分が何を求められているか分からない。一時、叶姉妹って面白いなって思って発言とか研究したんですよ。大衆性を出してギャップで笑わせるパターンがあって「美香さん、丸正に行くわよね」とか。確かに芸能人が、意外に一般人と同じだと好感ももたれるしいいなぁ……。私もポイントカードは常に10枚もっていますとか言えばいいのかなぁ……。
 ね? 全く自分をわかってないでしょ? さすがに、「やばいギャップゼロじゃん。」ってすぐに気付きましたけど。
 ビジュアルは中の下ランク(今日は冷静に判断)でオーラは全くなく、取り立てて何か才能がある訳でもない、私のような者がテレビに映っていいのかって話ですよ。
 最近ちょっと慣れましたけど、収録したテレビを見るのが嫌で嫌で。黙ってても、まだ成立するグラビアアイドルならまだしも、(いや、最近のグラビアアイドルは喋りが立たないと生き残れないか)普通のおばさんが、何もしないのにテレビで出ちゃってホント申し訳ない。
 一度、あまりに映りたくなく、他のタレントさんの後ろに回り映らないようにしていたら、ディレクターに「大久保さん、もっと前の方へ」と注意されました。本当に前に行きたくなかったので「いいです。私ここで…」と言ったら「いいですとかじゃなくて、こっち来て!」と半切れされたことがあります。
 確かに、社員旅行の集合写真なら「私、ここでいいわよ~」でも許されるけど、オファーがあって出演してるのに、映るの拒否って職場放棄もいいとこです。
 芸能界、自分が商品です。
 使い勝手が悪ければすぐ捨てられますし、同じ様な商品は2つ必要ありません。かぶらない何かを見つけていく隙間産業です。
 レイザーラモンHGのハードゲイ、確かにいなかった。
 叶姉妹、デヴィ婦人、林家ペーパー子の並びとか見ると、商品を陳列してるなと思いますもん。自分の商品価値を分かって、かつ毎回きちんと提示するって凄いことです。
 まず、私の場合、自分の事が一番分からない。分かっても、それを自信持って毎回アピールし続ける精神力諸々がない。芸能人、特殊な才能です。
 一般の会社、私の勤務先ももちろん実力主義です。鼻くそほじってて給料もらえる訳ではありません。数字をあげる営業マンが昇格し、給料も上がります。ただ、扱う商品が別に存在するのと、成績が悪いからって、直ぐクビとはいかないかな。

 自分が商品……だからか芸能人の人はみんな自分をしっかり持ってます。いい意味でマイペース、悪い意味で自分勝手。たまに「やっぱ芸能人ってちょっとズレてんなぁ」って思います。
 めちゃイケメンバーに入れてもらってすぐの時です。ロケバスでの長時間移動とかがホント辛かった。到着まで、「ご歓談したり御自由にどうぞ」が一番困る。まだ雰囲気にも慣れてなく、正直「やべー、ナイナイが目の前にいるよ」とか、素人丸出しで緊張していた頃です。メンバーの雑談に参加なんかできるはずもなくお得意の狸寝入りで時間が経つのを待っていました。
 そんな時、マイペースな雛形あきこさんが「大久保さん、眠たいんですか?」と。えー、寝てるのに~(寝てるフリだけどさぁ)。寝てる人に「眠いんですか?」って質問はどうよ。無視するのも何なんで「いや、大丈夫です」と眠いなか起きたふりしました。
「仕事忙しいんですか?」えー、仕事ってどっちの仕事? OLの仕事は最近忙しいけど「月末は〆があるので、残業残業でね」って言ったところで絶対興味ないだろうし。
「まぁ忙しいと言えば忙しいし…」
 モゴモゴしてると、
「今度、一緒に御買い物行きましょうよ。私の行っているエステいいですよ。行きましょうよ。」って。
 えー、私、普段、溝の口とかで買い物してる人だよ。エステって? 1ヶ月半に一度、美容院位しか行かないんだけど。お金は幾ら持ってけばいいのよ? 勿論、その後具体的にお出かけ計画が進む訳もなく、会話は中途半端に終わりました。翻弄され、一人ぐったり疲れました。
 でも、ちょっと仲良くなって分かったんですが、雛形さん、ホント何の他意もなく思ったことをそのまま口にしてるだけなんですよね。
 良い意味で裏表ない、悪い意味で何も考えてない。ホント、想像と違って芸能人は良い人が多いと思います。噂に聞くいじめなんて、遭ったことも聞いたこともないしみんな優しいです。仕事の性質上、当日現場で会って、別れてという「その場限り」に近い環境のせいもあるのかな。初対面なのに、本番では突っ込んだり突っ込まれたりぐっと近い距離になり、終わったら「お疲れ様でした」とさっと離れていく。そのせいか、一人芸能界の友達はできませんが、人見知りの私も、慣れたのか最近はこの関係性は嫌じゃないです。むしろ、会社より楽かも。
 一般の会社だと、仕方ないかな、会社辞めない限り同じ人間関係がついてまわります。同じ人と毎日、同じ環境で同じ仕事していたら、やっぱり嫌なとこ見えてきます。仕事帰り、サラリーマンもOLも一杯飲んで、上司の愚痴も言いますよ。
 芸能界、これまた、特殊な人間関係です。

 冷静に考えたら、今の状況って凄いことです。憧れの芸能界で、仕事してるんですから。子供の頃、芸能界には憧れてたけどまさか自分が、テレビに出られるとは全く思ってなかったです。出るのは無理だけどテレビの世界に関わりたいからADになろうと考えた事もありました。今の状況をホント幸せだと思わないといけないです。
 かなり前、光浦さん、私に言ったの覚えてます? 私が、多分テレビの仕事が上手くいかなかったからだと思うのですが、弱音吐いたんですよ。
 単純に慰めて欲しかっただけなんですよ。
「もう駄目だ~向いてないんだよ私。もう辞めたいわー」
 そしたら、光浦さん、
「辞めれば? 辞めないくせに、そういうこと言うのって本気でこの仕事やってる人にホント失礼だよ」と。
 厳しい。予想外の厳しさにちょっとびっくりして
「おっ~おう~厳しいぜ~でへへへ(卑屈笑い)」
 またへらへらしてしまいました。
 でも、おっしゃる通りです。この世界、テレビ出たくて死ぬ程がんばってる人山程います。
 それ以来、辞めたいは言ってません。「死にたい」を良く言う様になりました。
 この前も、結構仲良しだと思ってた友達の前で、「もう、死にたいよ~。生きてても楽しい事ないし」って言ってみたら(もちろん慰めが欲しいからですよ)「死ねば? 死ぬ気ないくせに言わないでよ。あんたよりもっと、辛い病気の人や環境の人はいるよ。」と。
 何でしょう? 慰めてもらえないです。
 私ってそんな甘えて見えるんでしょうか?

「才能無いから、センス無いから……」
 もう飽きた。思い飽きた。そんなのとっくに気付いてることです。でもこの芸能界にいるなら、いたいならその上で、どうするかを考えないと。
 この世界「はったり」でもいいから、虚勢はるのも大事。「はったり」も強い精神力無いときかせられないですからね。
 芸能人と言えども、同じ人間ですよ。
 みんな、うんこしてSEXして「明日燃えるゴミ出さないと」とか考えたりしてるんだから。私とほぼ同じだ。びびらず、私にだって出来る事はあるはず。
 最近、ほんのちょっとですが純粋に、
「私がやることで、人が喜んでくれたらいいなぁ。」
と思うようになったんです。
 ええ、遅いですよ。スロースターターもいいとこです。
 でも、なんか最近追い風じゃないかと。私の出た5月公開の映画「嫌われ松子の一生」も、観た人から、「大久保さん一番存在感ありました。主役の中谷美紀さんよりあったかも。」って言われてしまい、
自分でも分からないけど映画向きなのかなと。
 嘘ー! はったりです。
「大久保さん、ちょっと出てましたね。」って言われただけでーす。
 こういうはったりをね、日々言って行こうかなと……。
 うん? これ大事か?
 私より、どっぷり芸能人の光浦さん、芸能界の住み心地はいかがですか? 厳しい世界で、よくやってると感心します。

 PS.私の事、厄病神って言うな!


敬白 大久保佳代子

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恨みそずい

小学校以来、20年の付き合いで、お互いのことを骨の髄まで知り尽くしたお笑いコンビ「オアシズ」の光浦さん(芸人)と大久保さん(芸人兼現役OL)が、互いに宛てた手紙のなかで、ミソジの憂いを明け透けに告白!恋愛、結婚、出産から仕事、老後まで、尽きない憂鬱を乗り越え、幸せを手にすることはできるのか!?

 

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光浦靖子/大久保佳代子

光浦靖子
1971年愛知県生まれ。東京外語大学卒業後「オアシズ」でデビュー。数々のバラエティ番組に出演する一方、コラム等の執筆活動も。

大久保 佳代子
1971年愛知県生まれ。千葉大学卒業後「オアシズ」でデビュー。テレビ、ラジオの他、舞台にも数多く出演。現役のOL。

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