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真梨幸子『あの女』刊行記念

2015.04.21 更新 ツイート

ミステリは、やっぱり“女”が熱い!

プロローグ試し読み!
「このマンションには、実は、
もうひとつ“いわく”がありまして。」 真梨幸子

4月21日(火)発売の傑作ミステリー『あの女』(真梨幸子著)。真梨作品がお好きな方も、まだ読んだことがないという方も、こぞって震えがること間違いなしの面白さです!まずはこのプロローグを読んで、どんな物語が想像してみてください!

 

 この部屋は、本当にお勧めですよ。周りを遮るものが一切ございませんから、日当たり良好、特に、朝日が素晴らしいのです。朝日に照らされた街並みを眺めながらとる朝食は、それはそれは極上のひとときとなるでしょう。
 なにしろ、最上階の四十階。ここから眺める街並みは箱庭のようで、そして人は蟻のようでございます。そう、神の視点になった気分を味わうことができるでしょう。
 ご存知ですか? 人は高いところに常時いると、それだけで自信を得ることができるのだそうです。そして、知らず知らずのうちに成功者としての立ち居振る舞いを身につけるのだとか。意地悪な人は、それを「中身のない万能感」だの「偽りの優越感」などと揶揄しますが、それは、ただの妬みです。そんなことを言う人ほど、高層に上ると、尊大になるものです。
 そうですか。お気に召しましたか。
 では、早速、本契約の書類を調えましょう。
 え? 私が不動産屋になったきっかけですか?
 五年前、大学を卒業してもぶらぶらしていた私に手を焼いていた父が、知人が営む不動産屋に押し込んだんです。大学時代に宅建の資格はとっていましたので、どうせならそれを活用しろっていうのです。はじめはいやでしたね。私はそもそもサービス業には向いていないんです。宅建をとったのだって、就職活動に役に立つぞと友人に誘われてなんとなく受けた試験がたまたま合格したってだけで、不動産になんか、ひとつも興味がありませんでした。
 しかしですね、人間の特性というものは分からないものです。私はどうやら、不動産屋に向いていたようでした。自分でも驚きなのですが、仕事が苦にならないんです。むしろ、楽しいんですよね。アルバイトもいろいろしましたが、どれも一ヶ月もすると鬱状態になるほど仕事がいやになったのに。しかし、この仕事には、どうしてか、〝やりがい〟を感じてしまうのです。天職?……そんな大袈裟なものではありませんけどね。
 さて。では、本題に戻りましょうか。……ああ、その前に。
 お話ししておかなくてはならない項目がございます。

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真梨幸子

一九六四年宮崎県生まれ。多摩芸術学園映画科卒業。二〇〇五年『孤虫症』で第32回メフィスト賞を受賞しデビュー。『殺人鬼フジコの衝動』の文庫が累計50万部を超える大ヒットに。一躍”イヤミス“の旗手となる。著書は『人生相談。』『あの女』『祝言島』など多数。

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