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『弱いつながり』紀伊國屋じんぶん大賞1位記念対談「観光を考える」

2015.02.27 更新 ツイート

後編

『弱いつながり』は「コンビニ的日本からの脱出」がテーマだった!東浩紀/瀬口盛正

「紀伊國屋じんぶん大賞2015」の第1位を受賞した東浩紀さんの『弱いつながり 検索ワードを探す旅』。受賞を記念してのクラブメッドの瀬口盛正社長との対談後編は、日本の温泉旅館とリゾートの違いから、日本人の考える便利さへの違和感へと話題は展開していきます。(構成:小西樹里 撮影:菊岡俊子)

日本の温泉旅館は忙しすぎないか

 ネットはお金がかからない娯楽です。収入の少ない人ほど使うので、ネットの意見はどうしても低所得者側に寄る。そしてなぜか日本では、所得が低いひとほど、むしろ職業原理に縛られて「働くこと=美徳」だと思っているひとが多いんですよね。ネットにはそういう価値観が溢れています。

瀬口 Twitterもそうですよね。そこに好かれないといけない。

 Facebookもそうで、巨大な相互監視システムみたいになっています。「おまえ、休暇取ってるの?」って。会社でも休暇が取りづらく、その外でもプライベートを監視されている。日本人は、何もしないで休むのが本当に苦手ですよね。温泉でゆっくりしようと思っても、日本の旅館はなにかと忙しい。

瀬口 彼らのスタイルにコントロールされてしまいますね。

 チェックインした瞬間に、夕食は6時半か7時かとか、お部屋でとるか大広間がいいか。そんなの知らないよと思うんですけど(笑)。あれはぼくは窮屈に感じます。その点、海外のリゾートホテルはビュッフェだから自由ですね。

瀬口 まずリゾートの面積が違う。すごく大きい。

 面積は決定的です。

瀬口 クラブメッドの石垣島のホテルは東京ドーム全体が4つ入ります。それだけの空間や一人になれる場所があるのは大きいですよね。

 日本の旅館は作り方がそもそも小さいんですよね。

瀬口 日本庭園自体がそうですから。

 大きさは重要です。人間は存在しているだけで音を発するし、五感を刺激する存在感がある。それをシャットアウトするのは距離しかないと思うんです。僕は家族旅行ではできればスイートに泊まるようにしています。というのも、旅行行ったからといって、普段ズレている生活をきっちり合わせることはできないでしょう。ひとり夜中に目が覚めたときに、妻子と同じベッドルームしかないときのつらさといったら。そういうのを我慢していると絶対ケンカが起きる(笑)。部屋の広さは、休暇を家族と平穏に過ごすための重要な条件だと思いますね。

瀬口 非日常ですしね。

 あと、老舗旅館で小学生の子どもとごはんを食べることの困難さ……。やはりビュッフェはすばらしい(笑)。

瀬口 日本人はビュッフェが好きですよね。うちも世界各国の料理を出すんですけど、日本人のお客様が喜ばれるのは、お部屋の広さや新しさではなくて、食べ物の種類の多さです。

 日本人は他の国の人たちと比べて舌が肥えているのでは?

瀬口 お客様の満足度評価というのがあるんですけど、日本人のお客様はとても厳しくて満点をつけない。どんなにハッピーでも真ん中より少し上の6点です。外国の方は喜ぶと10点をすぐつける。食べ物以外もそうだけど、それ以外も、食べ物の質だけじゃなくて調理法まで入ってくる。日本中のお客様の満足度を高くするのが世界中のホテルチェーンの課題なんです。

 減点法なんですね(笑)。

瀬口 働く側は細かい質問に答えられないといけないので、コールセンターの処理の時間が日本は3倍です。

 

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東浩紀

一九七一年東京都生まれ。作家、思想家。株式会社ゲンロン代表取締役。『思想地図β』編集長。東京大学教養学部教養学科卒、同大学院総合文化研究科博士課程修了。一九九三年「ソルジェニーツィン試論」で批評家としてデビュー。一九九九年『存在論的、郵便的』(新潮社)で第二十一回サントリー学芸賞、二〇一〇年『クォンタム・ファミリーズ』(河出文庫)で第二十三回三島由紀夫賞を受賞。他の著書に『動物化するポストモダン』『ゲーム的リアリズムの誕生』(以上、講談社現代新書)、『一般意志2.0』(講談社)、「東浩紀アーカイブス」(河出文庫)、『クリュセの魚』(河出書房新社)、『セカイからもっと近くに』(東京創元社)など多数。また、自らが発行人となって『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』『福島第一観光地化計画』「ゲンロン」(以上、ゲンロン)なども刊行。

瀬口盛正

株式会社クラブメッド代表取締役社長。1965年生まれ。米国ニューヨーク大学歴史学部卒。スイスIMD経営修士号修了。15歳の時にバックパッカーとしてヨーロッパ一人旅に出る。米国、スイス、メキシコで20年近い海外生活の後、現在は東京をベースに年間120日出張で各国の現場に赴く。2000年に㈱博報堂を退社。欧州に渡りMBAを修了した後、オランダ系多国籍企業に就職し日本やメキシコの社長を務める。2011年より現職。http://moriseguchi.com/

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