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あなたとわたしの生存確認日記

2026.03.22 公開 ポスト

流れ流れて、いまは弘前(2月23日)―まわりみち文庫、良き。燃え殻

2026年2月23日

昨夜は打ち上げに打ち上げを重ね、最後、ウトウト寝てしまった。完全に無理ができなくなってきている。大橋さんは、そのまま朝の四時までひとりで酒を飲んでいたらしい。大橋さんは無尽蔵の体力を持っている。

『GERONIMO』でのトークイベントの風景

朝、本八戸駅から電車に乗ろうとしたら、大橋さんにバッタリ会ってしまった。ふたりで温かいお茶を買って、一時間に二本の電車がくるまで、しばし昨日のイベントの感想を言い合った。するとそこに、昨日来てくれたお客さんが、ひとり、ふたり現れる。疲れが抜けておらず、ああ、くらいの挨拶しかできなかった。申し訳ない。

 
パンを温めている大橋さん

仕事はどっさりあるが、東京での打ち合わせ、ラジオ収録は水曜日までないので、どこでやってもいい。八戸線の路線図を見ていたら、『鮫』という駅がある。

俄然行ってみたくなり、八戸駅から新幹線で東京に帰る大橋さんとは真逆の電車に乗った。こちらが電車に乗る姿を、大橋さんはずっと写真で撮っていた。変わった人だ、と言いたいとこだが、大橋さんが電子レンジで、「温め」をしている様をこちらもガッチリ撮っていたので、痛み分けか。

***
車内で『鮫駅』についていろいろネットで調べてみるが、まったくわからない。ただ、基本なにもないことだけはよくわかった。とりあえず海を見よう、それだけは決めた。

駅前にサメ

鮫に着くと、まず人が全然歩いていない。ウミネコの「ミャア、ミャア」という鳴き声だけが、ずっと聞こえていた。昨日、八戸は夜でも暖かたったので、冷たい海風がかなり堪える。

どこの道をどう曲がっても、人と出会わない。時刻は午前十一時を少し回ったところ。

『コメコ食堂』という店が、突然営業している。突然、と思わず言いたくなるほど、それ以外の店がシャッターが閉まったり、十年くらい前にラーメン屋だったのかな? みたいな建物や、靴屋? な建物などがあり、「やってる!」だけでも十分ビビった。

店内はもちろん客は自分ひとり。まだ若い女性店主がひとりでひとりで切り盛りしている。ミニ海鮮丼と磯ラーメンを注文。磯ラーメンは貝で出汁を取っている、とメニューに載っていた。味は、ほどほど、と言っておきたい。ただ、営業しているだけでも奇跡だ。感謝だ。奇跡分を加味すると、食べログ4.0だ。本当の食べログで調べたら、3.0だった。うーん、そんな感じだった。

***
このままでは、ぶらり旅が失敗で終わってしまう、と焦り、『八戸』まで戻って、そこから新幹線で『新青森』へ行き、在来線に乗って、『弘前』まで来た。

『鮫』を経験しているので、『弘前』は大都会だ。TSUTAYAすらある。併設されたスタバで、コワーキングをしているサラリーマン、OLすらいた。大都会だ。

TSUTAYAの本棚で、平然を装いながら、自分の本があるか、チェックしてみた。あった。それも文庫はすべてあった。小説『これはただの夏』は平積みされていた。頑張れ! 『これはただの夏』。応援のため、一冊買おうかと思ったが、やり過ぎな気がして思いとどまった。

***

駅前に『まわりみち文庫』という小さな書店があった。たぶん店長セレクトの本が、ビッシリと並んでいる。残念ながら自分の本は置いてなかった……。『まわりみち文庫』にサクッと置かれることが次の目標となった。そして思わず、トルーマン・カポーティの文庫を一冊買ってしまった。アンタ、カポーティなんて読むのかよ! と自分にツッコミたくはなった。なったが、いい感じの佇まいの書店は、思わず一冊買ってみようかな、という気にさせる。

『まわりみち文庫』恐るべし、だ。弘前に行った際は、立ち寄ると面白いかも。

今日は弘前に一泊することにしたので、この日記を書き終わったら、もう一度『まわりみち文庫』に立ち寄る予定。そのあと、地元の居酒屋のどこかに入って、軽くお酒を飲みつつ(本当に軽く)、刺身的なものをつまみたい。そしてホテルに戻って、原稿をやる。つもり。いや、やる。では

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(アイコンイラスト:大橋裕之)

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燃え殻

1973年生まれ。2017年『ボクたちはみんな大人になれなかった』で小説家デビュー。同作はNetflixで映画化、エッセイ集『すべて忘れてしまうから』はDisney+でドラマ化、『湯布院奇行』が朗読劇化(原作)、『あなたに聴かせたい歌があるんだ』がコミック化とHuluでドラマ化(原作と脚本)された。著書に小説『これはただの夏』、エッセイ集『それでも日々はつづくから』『ブルー ハワイ』『愛と忘却の日々』ほか多数。

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