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裏表がありすぎる人

2026.02.12 公開 ポスト

危険な裏表人間を見抜き、距離を取る技術―職場で消耗しないための《心の防衛法》榎本博明

職場の人間関係で、なぜか自分だけが消耗してしまう――その原因の多くは「裏表がありすぎる人」にあります。なぜ裏表のある人は、上司に本質を見抜かれにくく、評価されやすいのか。

彼らの心理メカニズムと行動原理、そして心をすり減らさずに対処するための具体策を示した、『裏表がありすぎる人』。本書から、一部をご紹介します。

*   *   *

相手の二面性の特徴を見極める

裏表の激しい人物による思いがけない被害に遭うのを避けるには、かかわりのある周囲の人たちの言動を日頃からじっくり観察し、見極めることが大切である。

ある一面だけを見ていてもよくわからない。自分の前では感じがよくても、陰で悪く言われたり、軽んじるような扱いを受けていたりすることもあり得る。それこそが裏表人間の特徴なのである。

自分と二人だけのとき、同僚みんなと一緒のとき、先輩の前、後輩の前、上司の前、取引先の前など、場面により態度が変わるからといって問題だというわけではない。それは当然のことだし、むしろ場面によって態度を調整できない方がおかしいことはすでに解説してきた通りだ。

だが、そのギャップが不自然だったり、激しすぎると感じたり、場面間で矛盾する発言が目立つと感じたりするようなら、その人物は信用できない裏表人間の可能性が高いため要注意だ。

前章で危険な裏表人間のチェックポイントをあげたが、それらを念頭に置いて、じっくり観察するようにしたい。その際、冷静さを失わないことが大切だ。もち上げられれば、だれだって嬉しい。あからさまなお世辞でも、つい気持ちが舞い上がってしまう。でも、そんな心の状態では、相手を見抜くことはできない。それこそ危険な裏表人間の思うつぼだ。

気持ちが舞い上がりそうなときこそ、冷静さを失わないように自分に言い聞かせる必要がある。気持ちが舞い上がっていると、相手の言動のわざとらしさを見逃してしまう。

危険な裏表人間による被害を防ぐには、気分で動かず、頭で動く、つまり感情反応より認知反応を心がけることが大切となる。

難しいのは、だれが危険な裏表人間なのかがはじめからわかっているわけではないため、警戒すべき人物がわからないことである。

常に警戒していたら、だれとも親しくなれないではないか、そんなのは淋しい、と思うかもしれない。でも、せめて最初のうちはじっくり観察すべきだろう。いきなり気を許すのは無防備すぎる。

人間観察を楽しむつもりで、まずは冷静に、少し距離を置いて観察することが大切だ。

そして、チェックポイントを踏まえて観察しても、とくにおかしくなければ、徐々に心理的距離を縮めていけばいい。だが、少しでも疑念が生じたら、巻き込まれないように、表面的なかかわりに徹するようにしたい。

けっして深入りしない

第4章では、危険な裏表人間を見分けるためのチェックポイントをさまざまな角度からみてきたが、それらを踏まえて、この人は危険かもしれないと思うことがあれば、心理的距離をしっかり保ち、けっして深入りしないように心がける必要がある。

心理的距離を保つというのは、かかわりをもたないということではない。

その危険かもしれないと思われる人物が、職場の人であれば、まったくかかわらないというわけにはいかない。同じ部署であれば、しょっちゅう目の前にいるわけだから無視するわけにはいかないし、他部署であっても職務上のやりとりがあればコミュニケーションを取る必要がある。

それは危険な裏表人間に限らない。性格や価値観が合わなくても、嫌なヤツだと思っても、同じ職場にいる以上、かかわりをもたないわけにはいかない。だからといって、みんなと友だち感覚で仲良くつき合う必要はない。とくに気の合う相手以外は、ただの同僚であって友だちではないのだから。

職場は仕事集団であり、仲良し集団ではない。職務上必要なやりとりはしても、気を許して親しくする必要はない。

学校時代を思い返せば、同じクラスの仲間といっても、全員と仲良くつき合っていたわけではないだろう。深いつき合いの相手もいれば、表面的にかかわるだけの相手もいたはずだ。

それと同じで、職場で日常的にコミュニケーションを取る相手でも、職務上必要なやりとりや場の雰囲気を良好に保つための最低限のコミュニケーションで十分であり、お互いの心の内面を共有する必要はない。

ゆえに、「この人は、ちょっと危険かも」と感じたら、表面的なかかわりに徹し、たとえ相手が内面を吐露してきても、適当にかわしながらつき合えばよい。仕事仲間としての最低限のかかわりは必要だが、それ以上に心理的距離を縮める必要はない。ましてや個人的に親しくつき合う必要などまったくない。

危険な裏表人間のチェックポイントを踏まえて、少しでも危ないかもしれないと感じることがあれば、けっして深入りしないことだ。

雑談時にも安易に同調しない

危険な裏表人間は、とくに利害に目ざとく、「自分が損をする」「まずいことになる」と思えば、自己防衛のために他人を犠牲にするような行動を平気で取るので、十分に注意してかかわる必要がある。

自分の言ったことでまずいことになったと思えば、自分でなく他の人が言ったことにして身を守るための工作をする。「まずい」という局面でなくても、万が一のリスク回避のために工作をすることもある。

たとえば、自分が思っていることや言いたいことでも、

「ちょっと耳にしたんですけど……」

と言ったりする。それだけですむこともあるが、だれがそんなことを言ったのかと迫られると、

「○○さんが言ってました」

というように、まったく関係ない人の名前を出したりする。名前を出された側は、まったくいい迷惑である。そんなことは言っていないのに、言ったことにされてしまうのだから。

そのような被害に遭うのを防ぐには、そういう人物の言葉に安易に同調しないことが大切である。

うっかり頷いたりすると、向こうが言ったことなのに、こちらが言ったことにされてしまう。ゆえに、けっして頷かないように注意したい。

ただ黙って聞いているだけでも、こちらが言ったと言われかねない。ゆえに、納得できないこと、それは言いすぎだろうと思うことがあれば、

「私はそんなふうに思わないけど」

「それは勘ぐりすぎなんじゃないかな」

などと、同調しない態度をはっきり示すべきだろう。

それがしにくいなら、とにかく意見や感情を伴わない仕事がらみの話や表面的な会話以外はかわさないように、かかわりを制限することを徹底すべきだろう。

感情的に巻き込まれない

裏表の使い分けがうまい人は、人の感情を揺さぶるのもうまい。

ほめられたり頼られたりするのは、だれでも嬉しいものだが、それが人を攻略する戦略だったりする。こうすれば相手は自分に好意的になるというように、操作的な戦略でほめたり頼ったりしてくるのである。

ゆえに、このタイプとかかわる際には、感情をくすぐられても操作されないように、常に平静を保つように意識する必要がある。

また、こちらのためを思っての言動をしてくれると、とてもありがたいし、感謝の気持ちと同時に好意的な感情も湧いてくるものである。

たとえば、何かを手伝ってくれるなど、こちらが助かるようなことをしてくれればありがたいし、こちらが困っているときに励ますようなことを言ってくれると心強いものだが、それも戦略だったりするので、うっかり気を許して心理的距離を縮めたりしないように注意したい。

また、心理的距離を縮めるために、上司や取引先あるいは同僚から酷い目に遭わされていると嘆いたり、親や配偶者の酷い態度を嘆いたりと、同情を誘うような嘆きを聞かされたりすると、だれでも同情心が湧いてきて、つい好意的な感情をもってしまいがちである。

だが、それも戦略だったりする。事実とは限らない。このタイプは、いちいち相手が真偽を確かめるようなことはできないと計算ずくなのだ。

ゆえに、そのような嘆きを聞いて同情したり、一緒に腹を立てたりしていると、いつの間にかその人物に巻き込まれ、感情を支配されることにもなりかねない。

このように、人の気持ちを戦略的に操作しようという人は、人の気持ちを揺さぶるのがとてもうまく、うっかりすると巻き込まれ、相手の思うように操作されてしまうので、注意が必要である。

自分はそんなふうに身の上話を偽ったりしないから、あれが噓だとは思えないという人もいるだろうが、危険な裏表人間にとっては、事実無根の作り話で同情を誘ったり、怒りの感情を喚起したりするのはお手のものなのである。何の抵抗もなく人をだませるのだ。

自分とは価値観も生き方も違うのである。そこをしっかり踏まえて対処する必要がある。

*   *   *

人を見る目を養い、日々のストレスを軽くして心地よく暮らしたい方は、幻冬舎新書『裏表がありすぎる人』をお読みください。

関連書籍

榎本博明『裏表がありすぎる人』

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榎本博明

心理学博士。1955年、東京都生まれ。東京大学教育心理学科卒業。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、大阪大学大学院助教授などを歴任。現在、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした企業研修・教育講演などを行う。 主な著書に、『病的に自分が好きな人』(幻冬舎新書)、『薄っぺらいのに自信満々な人』『「上から目線」の構造』(日経プレミアシリーズ)、『ほめると子どもはダメになる』(新潮新書)、『「過剰反応」社会の悪夢』(角川新書)、『モチベーションの新法則』(日経文庫)、『<自分らしさ>って何だろう?』(ちくまプリマー新書)などがある。

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