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裏表がありすぎる人

2026.02.02 公開 ポスト

なぜ裏表の激しい人ほど、上司に可愛がられるのか…陰口を言う人が評価されてしまう残酷な理由榎本博明

職場の人間関係で、なぜか自分だけが消耗してしまう――その原因の多くは「裏表がありすぎる人」にあります。なぜ裏表のある人は、上司に本質を見抜かれにくく、評価されやすいのか。

彼らの心理メカニズムと行動原理、そして心をすり減らさずに対処するための具体策を示した、『裏表がありすぎる人』。本書から、一部をご紹介します。

*   *   *

陰では上司をこき下ろす

裏表の激しい人物として、多くの人が思い浮かべるのが、本人の前では調子のいいことを言ってもち上げながら、陰で悪口を言うようなタイプである。

そのような構図は、同僚同士でもしばしばみられるが、とくに多いのが、上司に対していつももち上げるようなことを言い、自己愛をくすぐって喜ばせながら、陰ではこき下ろすようなことばかり口にする、といったものである。

そのような同僚に呆れるという人たちに、陰で上司をこき下ろすセリフを例示してもらったところ、つぎのようなものがあげられた。

「あそこまで無能なヤツが課長かよ。どうなってんだ、この組織は」

「あんなバカ上司のもとで働いてるとバカがうつりそうで怖い」

「自分の上司がアレだからね。ほんと恥ずかしいよ」

「あいつ、太鼓もちで出世しただけじゃないか。実力不足もはなはだしい」

「ちょっともち上げると、すぐにいい気になって自慢話をしたり、ほんとに単細胞で笑えるわ」

「自分が無能なのに気づかないなんて、ほんとに愚かだね。バカは自分がバカだって気づかないって言うけど、まさにそれだね。うちらから尊敬されてるって本気で思ってるんだからね。お世辞に決まってるじゃない」

「参ったね、あんなに長時間、相手させられるなんて。もううんざりだよ。いい気になって話しやがって。いい加減にしろって」

調子がいいばかりか、辛辣しんらつな態度に呆れ、うんざりするだけでなく、恐ろしくもなるという人がいたが、たしかにこのようなセリフを聞くと、あまりの辛辣さに驚かざるを得ない。

しかも、上司の前では調子よくもち上げるようなことばかり言うため、上司は自分が尊敬されていると思い込んでいるわけだから、よけいに恐ろしくなる。

やや横暴なところがある上司に日頃から反感をもっている人も、「あの辛口にかかったら、ふだん偉そうにふんぞり返ってる上司も形無かたなしだと思うとスッキリする面もあるけど、自分も陰で何を言われてるかわからないと思うと、あまりの辛辣さに背筋が寒くなった」と、その人物の辛辣さを警戒する気持ちを口にする。

このような人物は、自分のポイントアップのためには、裏表をうまく使い分けて相手をもち上げるだけでなく、ふだん親しげにつき合っている同僚をおとしめるようなうわさを平気で流したりするので、うっかり心を許すと痛い目にいかねない。

なぜか上司に可愛がられる

このような裏表人間が、なぜか上司から気に入られ、可愛がられるのだから、ほんとうに嫌になる、とこぼす人もいる。実際、そうした構図は多くの職場でみられる。

裏表の使い分けの激しい人物をみていると、どうにも気分が悪いものだ。

そのような人物の言動を苦々しくみている良識ある人たちが不思議に思うのは、そんな裏表人間が、その見苦しさにもかかわらず、案外うまく出世していくことだ。

陰で悪口を言われている上司が、そんなことは夢にも思わず、「いいヤツだ」と言って気に入っている。自分が陰でこき下ろされているなんてつゆ知らず、表面上もち上げられて機嫌よくしている。

その上司のことを本気で尊敬している自分よりも、陰でこき下ろしている同僚の方が、その上司から気に入られ、何かと目をかけられているのが、何とも悔しい。そのように言う人も少なくない。

だまされている上司があまりに哀れで同情するが、ここまで冷酷に裏切って平気な彼が怖い、という人もいる。こんなヤツにだまされるなんて上司も愚かだなと思うものの、人の裏の顔ってなかなかわからないものなんだなあとしみじみ思ってしまう、という人もいる。

実際、おべっかを使う部下が誠実な部下よりも気に入られるといったケースは、どの職場でもよくみられるものだが、そこには先に指摘した自己愛に加えて、上司という立場に必然的に伴う不安も関係している。

上司がちゃんと職責を果たすには、部下たちから尊敬される必要がある。尊敬というと大げさかもしれないが、少なくとも肯定的な評価を受け、信頼されなければ、上司として部署の人間たちを引っ張っていくことはできない。

だが、上司といえども、部下のだれよりも優秀である保証などない。上司の方が経験値は高くても、上司よりも頭がよく優秀な部下がいるというのは、どんな職場にもありがちなことだ。

ゆえに、上司は常に不安を抱えている。部下からどう思われているのか、どう評価されているのかが気になる。

そんな上司にとって、自分をもち上げてくれる部下の存在は大いに救いになるのだ。

上司は不安なものだから、あからさまなお世辞であっても、自分を立ててくれて、自分になついてくれる部下をつい可愛がってしまうのである。

立場が上の人は裏表に気づきにくい

裏表人間の本性に上司が気づきにくいのは、このように上司が置かれた立場によるところも大きいわけだが、また別の立場上の問題もある。

同僚同士だと、自分の前と上司の前とでまるで別人のように態度を変える様子をしょっちゅう目にしているため、裏表の二面性をの当たりにする機会が十分すぎるほどある。

だが、上司や他部署の上役は、自分の前の様子しか知らないため、ふだん別人のように振る舞っているのを見ることがない。裏の顔を見ていないのだから、極端な二面性に気づくことができない。

だれにも多かれ少なかれ二面性はあるものだし、人の上に立つ人間にはそのくらい見抜く力をつけてほしい、二面性を警戒する心構えをもってほしいものだと言いたくなるかもしれない。

「私も当初はそう思ってました。上司なら部下の本性を見抜く目をもってほしいって。でも、調子のいい同僚とかを見ているうちに、それは難しいかもなと思うようになりました。

上司にしてみれば、とにかく目の前では感じがいいのだから、気分がよくなるのもわかります。結局見抜くのを期待しても無駄だって思うようになりました」

このようにあきらめ顔でこぼす人もいる。

裏表の使い分けが激しいタイプは、上の人の気持ちをくすぐるような言葉を発するだけでなく、上の人に重宝がられる行動を目ざとく察知し、素早く行動に移すため、実際に上の人は助かる。

自分のために動いてくれるわけだから、裏表の二面性に気づかないだけでなく、頼りになるヤツ、自分のために献身的に動いてくれるヤツと思い、好意的に評価することになる。

結局のところ、上の人の目に映るのは、行動であって内面ではない。自分にとって役に立つ行動を取ってくれるのは、だれだってありがたい。それが打算によるものなのか、自分に心から傾倒しているためなのか、それはわからない。

ましてや、陰で自分のことをこき下ろしているのか、あるいは自分のいない場面でも自分に傾倒しているようなことを言っているのか、それを実際にしてくれたことから推し量ることなど不可能である。

考えてもわからない裏の意図は棚上げした場合、役に立つ行動を取ってくれて助かるのは事実である。そのため、動機を詮索せんさくするよりも、自分の手助けをしてくれる部下を好意的に評価することになりがちなのである。

*   *   *

人を見る目を養い、日々のストレスを軽くして心地よく暮らしたい方は、幻冬舎新書『裏表がありすぎる人』をお読みください。

関連書籍

榎本博明『裏表がありすぎる人』

職場の人間関係は、ほんとうに面倒だ。 なかでも厄介なのが、裏表の激しい人の存在である。 そうした人物は相手によって態度を使い分け、本性を見せる人と見せない人を選ぶため、被害の実態が周囲に伝わりにくい。 しかも皮肉なことに、そういう人ほど上には気に入られ、出世する。 そんな人物が身近にいると、ストレスが溜まる一方で、心がすり減ってしまう。 そこで本書では「裏表がありすぎる人」の心理メカニズムと行動原理を読み解き、彼らへの対処法を提示する。 人を見る目が一段と深まり、神経の消耗が激減する一冊。

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裏表がありすぎる人

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榎本博明

心理学博士。1955年、東京都生まれ。東京大学教育心理学科卒業。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、大阪大学大学院助教授などを歴任。現在、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした企業研修・教育講演などを行う。 主な著書に、『病的に自分が好きな人』(幻冬舎新書)、『薄っぺらいのに自信満々な人』『「上から目線」の構造』(日経プレミアシリーズ)、『ほめると子どもはダメになる』(新潮新書)、『「過剰反応」社会の悪夢』(角川新書)、『モチベーションの新法則』(日経文庫)、『<自分らしさ>って何だろう?』(ちくまプリマー新書)などがある。

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