人気お笑い芸人の見取り図・盛山晋太郎さんが初めてのエッセイ『しばけるもんならしばきたい』を刊行! 2020年から約5年間つづったエッセイでは、日々テレビで活躍する盛山さんが、どんなことを考え、どんな風に過ごしているのか、その一端を覗き見られる一冊になっています。また、書籍化に当たり、2025年の盛山さんが当時の自分を振り返って書いた「いまがき」も収録。さらにさらに、約8割のエッセイには、盛山さんによる挿絵もついています。
そんなエッセイ集から、試し読みをお届け。常々盛山さんが語る、劇場の魅力について、綴っていただいた一篇です。お読みの皆さんも、もしまだ劇場に行ったことがないという方は、今年はぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか。
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劇場
(小説幻冬2021年4月号掲載)
死ぬまで劇場に立っていたい。この世界に入ってからずっと劇場に育ててもらった僕からしたらそう考えるのは当たり前のことだ。これからもしもジャスティン・ビーバー級に忙しくなったとしても、劇場には出続けていたいなと思う。相方が先に死んだとしても、遺骨を組み立て横に立てかけて、漫才をしてやろうとも思ってる。そもそもジャスティン・ビーバーは単価がとんでもないだろうから稼働量でいったら忙しい部類に入るか怪しいところやな。それはさておき。
テレビで披露される漫才は、いわば完成された漫才。特に現代のコンプライアンス社会においては、よりお利口さんな漫才でないとダメなんだと思う。スポンサーさんがついてくださっているから他社の商品名がないかをチェックしたり、差別的な用語がないかのチェックがあったり。放送時間が決まってるからしっかりと尺も守らなければいけなかったり、そうじゃなくても編集をされたり。とにかく「お茶の間に放送できる漫才」をしなくてはいけない。
しかし劇場は違う。完全に生なのだ。ライブなのだ。その劇場の雰囲気、ステージごとに変わるお客様の空気感、コンビによって違う出囃子、テレビほど豪華ではないがネタだけに集中できるようなセット。平気で規定のネタ時間は押すし、時にはお客様と会話のラリーを交わしたり、前のコンビの被せがあったり、テレビじゃ絶対にできないネタをやったり。いかにもライブ感満載なのが劇場公演。わざわざ時間とお金を割いて足を運んでくれた皆様になんとしても楽しんでもらいたいのが芸人だから、どんな手を使ってもお客様に「楽しかったなー笑った笑った」と満足して帰ってもらいたい、大切な空間である。
そんなことは興行をするからには当然の話であって、飲食店などの他業種の方もきっとそうだ。
かといってテレビで披露する漫才が劇場より下なんてことは微塵も思っていない。カメラを通して映像で観る「テレビ」だからこそ面白いネタもたくさんある。劇場の客席からでは観られない複数のカメラでの視点や、お金をかけたセットと衣装、洗練された編集、この面白さは劇場公演では表現できない。
では何が言いたいかというと、お笑いの楽しみ方の一つとして「劇場に直接足を運んで公演を観に行く」という選択肢を皆様の引き出しに入れておいてほしいのです。
一度YouTube の生配信で「お笑いはテレビで観るものだと思ってた」といったコメントを頂いた。とても驚いた。生粋の大阪生まれ大阪育ちの僕は小さい頃からNGKによく連れていってもらっていて、漫才を観に劇場へ行くのが当たり前だったが、世間の皆様からしたらお笑いはそういう認識なのかと目から鱗だった。勝手に自分の物差しだけで測っていたことを反省。劇場の発展、盛り上がりしろがまだまだあるかと思うと、俄然楽しみになった。

そういえば昔、ネタ番組でこんなことがあった。
NHKさんのネタ番組に、超若手だった僕ら見取り図が2分ネタの枠で出演できることになった。NHKさんでネタをやらせてもらったのは、たしかそのときが初めてだったと思う。
当時、僕はツッコミで「首ちぎったろか!」というワードを面白がってよく使っていた。確かに過激な言葉ではあるが、今より時代が色々と緩かったこともあって劇場ではウケていた。
そのセリフが入ったネタをしようとリハーサルに挑んだが、そこはさすがのNHKさん。「ちょっとそのツッコミは過激ですね」とディレクターさんから指摘が入り「申し訳ないんですが、『首どついたろか』に変えてくれませんか?」と言われた。
それだとニュアンス変わるけどなぁと思ったが、テレビなんて滅多に出られない若手なので爽やかに「了解しました!」と返事をし、注文通りに変更してリハーサルを続けた。
するとまたディレクターさんが「うーん。やっぱり暴力的だなぁ」と考え出し、「そのセリフ、『首を殴ってやろうか!』に変えてください」と言うのだ。
なんやその女王様みたいなセリフは……と思ったが、やはりどんな手段でもテレビで漫才をしたい気持ちが勝ったので、もちろん断ることもなくその通りに行うと、またディレクターさんに止められた。そこから20分ほどあーだこーだと変更させられ、結局本番で僕がツッコミセリフで言わされたのは、
「おでこを叩いてやるぞっ!」
だった。
いや変更されすぎやろ。なんか可愛くなっとるがな。わざわざ言わんでもツッコミでおでこ叩く人もおるし。
そういうのも含めてテレビは面白い。後々エピソードとして話せますし。片や劇場は、ちんちんがお客様の前で出てしまうハプニングもあるのでご了承ください。最近、僕の同期はズボンを脱がすというネタで、相方のパンツごと脱がせてしまって思いっきりちんちんが出てました。めちゃくちゃ笑いました。完全に見せてしまったお客様、本当に申し訳ありません。
テレビと劇場、お笑いはそれぞれの楽しみ方で堪能してください。僕は「一生会える芸人」宣言をしてますので、死ぬまで劇場にいさせてもらいます。また皆様をお待ちしてます。
コロナ禍。しばけるもんならしばきたい。
2025年盛山のいまがき
最近は若手どころかNSCに入ってくる子ですら劇場史上主義になってきた。未来のNGKのトリ争いが西宮神社の福男選びくらい熾烈になってるやん。ちょっと待ってよ。スーパーTikToker とかを目指せよ。
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見取り図・盛山晋太郎さんのエッセイ『しばけるもんならしばきたい』の試し読みをお届けします。











