
先日、阪神タイガースがセ・リーグで優勝した。
これは僕の生活においてかなりの出来事ではある。
ただ2年前が18年振りの優勝だっただけにそれに比べると衝撃という面では劣るが、嬉しい、いや、死ぬほど嬉しい事に変わりはない。
ただ、たまに冷静になった時に思う事がある。
「何故、こんなに嬉しいのか。」
知らない同性の人が頑張ってスポーツやって、勝ったら嬉しい。負けたら悔しい。
おかしい話である。
まだ日本代表を応援するなら理由は分かるが、相手は大半が同じ国の人で、僕が阪神タイガースを応援し始めたのが「おとんが応援してたから」というのも、なんとも形容しがたい理由だ。
僕はいつだって阪神タイガースの試合がある時はその事ばかり考えてる。
賞レースの当日でもスマホで試合を観るし、デート中でも観る。
こっそりどころか堂々と観る。
これは相手には本当に申し訳ないが、僕の生活の一部、いや、中心なのだ。
何故こんなに夢中なのかを不思議に思う理由が、二つある。
一つ目、全くお金を賭けてない所だ。
これにお金が賭かってたら話が早い。
勝ち負けを気にする理由に直結するし、応援するのもただただ自分の為である。
でも、不思議なのが一銭もお金が動いてないのだ(野球賭博という例外はあるらしいが)。
そして勝ったら『よっしゃー!』と声が出るくらい喜んでしまい、負けたら『うわぁぁぉ!!!!』と言葉にならない怒号をあげたりしてしまう。本当に不思議である。
これが競馬やボートレースなら凄く分かりやすいのだが、こっちは「好きだから」という理由しか無い。
そして二つ目、プロ野球選手は、僕からすると同性である。
同性というか、まぁ、恋愛対象の性別ではない。その人達をひたすらに観てる。
『すげー』とか『さすがや!』とか言って、その人のグッズとか勝ってる。
どうなりたいとかじゃない。別に直接会いたいとも思わない。これが不思議だ。
異性アイドルとかの追っかけになって、握手会とかライブとかグッズを買ったりするのならまだ理解出来る。推し活というやつの動機はまだずっと分かりやすい。
ただ、僕は同性を応援してる。
昔で言うと父親くらいの選手、今で言うと15歳以上も下の選手を。
冷静になると本当に意味が分からない。お金も賭けず、恋愛対象にもならない。
一体どの欲を満たしてるのか不思議だ。
少し話を逸らすと、僕はギャンブラーは少し可哀想だと思ってる。
「本当に楽しい遊びを知らないのかもしれない」とさえ思ってる。
だって、お金を賭けなくてもこんなに楽しい世界があるのに。と。
野球に興味の無いギャンブラーが急に野球を観戦し出したら、勝手に僕は危険な匂いを察知している。『金を賭けよう』とか言い出す可能性があるからだ。
楽しむ感覚がぶっ壊れてて、純粋に楽しいものを汚そうとする。
プロ野球は金を賭けてその日だけ楽しむ為にある訳ではない。
何十年も同じチームを応援し、一生を懸け懸けてめるコンテンツなのだ。
だから贔屓のチームを乗り換えたりする事は基本的に無い。
弱かろうが、強かろうが、ただただ応援する。
これがまた妙である。
むしろギャンブラーでない人の為にあるとさえ思う時がある。
僕はギャンブルを全くしないかと言ったらそうではないが、「本当に楽しい遊びは金を賭けなくても楽しい」と思ってる。だから極力やらない。
そうだ。書いていて、何故こんなに夢中なのか不思議に思うの三つ目の理由を思い出した。僕が阪神タイガースを応援してる不思議な理由の三つ目。
阪神タイガースは、弱かったのだ。
非常に弱かった。他球団のファンが笑ってしまうくらいに。
いや、僕らも笑っていたかもしれない。めちゃめちゃ負けてた。
僕はその弱い弱い阪神タイガースのファンになった。これは他球団のファンとも違う部分である。
分かりやすく比較するならば、巨人ファンとは全然違う。
巨人ファンは「強い」という理由でファンになってる人が大半だと思う。
長嶋・王の時代の常勝時代の巨人軍をはじめ、基本的に巨人は強かった。強いから好き。という人が多かった。だからそいつらとは気が合わなかった。
そいつらというのは、僕が子供の頃から絡んできた「関西の巨人ファン」
意外と思われるかもしれないが、僕が住んでた京都市では、阪神ファンと巨人ファンの人数はあまり大差がなかった。
まぁ、6:4で阪神の方が少し多いくらいだったように思う。
少年ながら、強いから好きってなんやねん。と思ってた。
関西人のくせになんで巨人やねん。とも思ってた。
そして……色々、思ってた。あと78個くらい不満があった。
謎のトレードや度が過ぎた補強が行われる度に、子供ながらに闇を感じてもいた。
あと関西の巨人ファンは強い事に胡座をかいて、ちゃんと試合もチェックしてなかった。『昨日巨人勝ったらしいな』、『巨人そろそろ優勝しそうらしいやん』とか言われた。
そして『なんでこんな弱い阪神なんか応援してんの?』と阪神ファンは馬鹿にされていた。その度に僕は『応援してるとこが強いって偉いのか? 馬鹿なのかこいつは。金があるから強いだけだろ』とか思ってた。『あとこいつとかこいつとか、巨人の選手じゃなくて他球団の4番バッターだろ。そいつらのお陰で買って何が嬉しいんだ』とか思ってた。あと、『◯ね』とか思ってた。
僕は関西の巨人ファンと本当の意味で仲良くなった事はない。
これはもう宗教の違いだ。
分かり合える事は無いと子供ながらに思っていた。
日本のプロ野球の「楽しみ方」が違うんだ。
どちらも楽しいと思うが、違うんだ。僕はこっちの方が楽しいんだ。
だから少年時代の僕は最終的に巨人ファンを「親友にはなれない枠」に入れてしまっていた。それと同時に「バトルロワイヤルとかあったら近寄らない方が良い枠」にも入れてしまっていたかもしれない。アンチ巨人というより、アンチ巨人ファンだったのだ。
えー
ちょっと火がついてしまった。
話を戻すと、プロ野球を応援するという事はとても健全というか経済的というか、コスパが良い。これは個人的な感覚だが、ギャンブル防止にも繋がる気がする。
だってこんな、一見何の得にもならないことで熱狂出来るんだから、お金を賭ける理由が無くなる。実は脳汁を出す事にお金は必要無いんだ。
人によっては、本当に意味が無い事だと思う。だって意味が分からないんだから。
『なんでそんなに嬉しいの?』『なんでそんなに悔しいの?』と言われても、すぐに返事が思い付かない。
そして「応援」とか言っちゃってるけど、みんなその辺のだいたいの人よりお金持ちなんだ。なのに「応援」って。
僕は、自分にもし子供が出来たら、野球をやらせたいとか、どんな音楽を聴かせたいとか、ましてやお笑いを好きにならせたいとか、全く思わない。
一つだけ。
なんとか、「阪神ファンになってほしい」と思う。
勉強も出来なくても、スポーツが出来なくても、モテなくても良い。
ただただ、健康な阪神ファンになってくれ。