オシャレな空間には憧れる。でも、その加減が難しい。オシャレすぎる場所に身を置いていると、自分が余所者(よそもの)になってしまったようで落ち着かなくなってしまう。そんな性分だから、年下の友人に「K5ってホテル、めちゃくちゃオシャレですよ。泊まってみては?」と言われたとき「そうだねぇ」と微笑みつつも、ためらいが走った。K5。シンプルで尖っていて、やけに今っぽい響き。あたしには無理……。
だけど、あれこれググっているうちに「もしかして、ありかも」と気持ちが傾いてきた。まず場所がよき♡ かつて「日本のウォール街」と言われた日本橋兜町の中心、東京証券取引所のお隣なのだ。1923年竣工の銀行の別館ビル「兜町第5平和ビル」をリノベーションしたのだという。歴史を重ねた空間にはえもいわれぬ余白や厚み、そして温かみがある。デザインを監修したのはストックホルムの建築ユニット「クラーソン・コイヴィスト・ルーネ」。北欧モダンと和の融合は気おくれしてしまうほどオシャレではあるが、写真ではわからない空気がそこにあるはず。そう信じ、いざK5へ。
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暮らすホテル

遠くへ出かけるよりも、自分の部屋や近所で過ごすのが大好きな作家・越智月子さん。そんな彼女が目覚めたのが、ホテル。非日常ではなく、暮らすように泊まる一人旅の記録を綴ったエッセイ。










