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神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること

2025.08.13 公開 ポスト

8月 納涼と手書きにいそしむ

平安時代に、清少納言が食べていたかき氷って、どんな味?桃虚(神職/ライター)

かき氷の話題で、少し涼んでみませんか? 実は、平安時代からかき氷ってあったようで…。

神職さんが教えてくれる『神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること』より、貴重なお話。

*   *   *

かき氷について掘ってみたら開運につながったお話

ところで、開運行動の8番目に挙げた、かき氷について。

ばくぜんと、「冷蔵庫が発明されてからできた食べ物」と思っていませんか? 

じつは、平安時代、清少納言が「枕草子」で、「貴(あて)なるもの」のひとつとして

削り氷(ひ)に甘葛(あまづら)入れて、

新しき金椀(かなまり)に入れたる

と書いているのです。かなまり、とは金属のおわんで、そこに削った氷を入れ、甘葛というシロップをかけたもの、すなわち「かき氷」のことです。

しかし、冷蔵庫も冷凍庫もない時代、希少な氷を、どうやって夏に手に入れていたのでしょうか。

実は、天然の冷蔵庫である「氷室(ひむろ)」を活用していたのです。山間部の気温が低いところに穴を掘って作られた氷室。冬の一番寒いときに、凍った池から分厚い氷を削り出し、藁(わら)やおがくずで覆って夏まで氷室に貯蔵しておく、ということが、奈良時代から行われていました。

(イラスト:宮下 和)

元明天皇の御世、710年に藤原京から平城京へ遷都のさい、三笠山の山麓や春日野に氷室が置かれ、氷が宮中に献上される「献氷(けんぴょう)」が行われるようになったと言われています。

奈良市春日野町には、それら氷室の守護神として祀られた「氷室神社」がありますが、地域の氏神さんであるとともに、冷凍・冷蔵・製氷の技術の神様、それらの販売業の神様としても、崇敬されています。

平安時代の中期、醍醐天皇の命によりまとめられた「延喜(えんぎ)式」という50巻の法典の中に、氷室は、「山城・大和・河内・近江・丹波の5つの国の10カ所」が記載されています。貯蔵と運搬には、「氷戸(ひこ)」と呼ばれる144戸の専門の家が置かれていて、システマチックに宮中へ氷が供給されていたそうです。

清少納言は、平安時代、宮中に仕える貴族だったから、かき氷を食べることができたのです。そんな彼女が書いている、かき氷にかけたという「甘葛(あまづら)」の味が気になりますね。甘い葛(くず)ですから、葛湯のような、すこしとろっとした風味を連想しますが、植物から取った汁、もしくは樹木からとった樹液を煮詰めた琥珀(こはく)色の液体らしい、ということしかわかっていません。再現して和シロップとして売り出したら人気が出そうだな……とつい夢想してしまいます。

現代では、色とりどりのかき氷シロップが、スーパーに売られています。

「市販のかき氷シロップは、イチゴもメロンもレモンも味は一緒で、色と香料だけが違う」という話を聞いたことがあるでしょう。私もためしに目隠ししてイチゴシロップとレモンシロップを食べて、どちらが何か、当ててみようとしたことがあります。

結果は、見事に不正解でした。同じ実験をした娘はどちらもイチゴだと答え、息子はどちらもレモンだと答え、結局全員わからなかったのです。そのときみんな鼻はつまっていなかったので、もはや香料も関係ないのかもしれません。色を見て食べると、ちゃんとイチゴはイチゴの味が、レモンはレモンの味がしました。

(イラスト:宮下 和)

私たちはあのあざやかな色を見てそれっぽい匂いをかぐだけで、イチゴ、レモン、メロンのそれぞれのシロップの味を感じることができるし、ブルーハワイの青色を見るだけでラムネやトロピカル風味(これも漠然としていますが)を感じることができるのです。だとすると、五感とはひとつひとつ完全に独立しているものではなく、相互に補完しあう関係にあると言えますね。

あるいは、本来の全体としての感覚を、論理的に理解する方法のひとつとして、あえて視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の5つに分けてみただけにすぎないのかもしれません。

(つづく)

関連書籍

桃虚『神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること』

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神主さん直伝。「一日でも幸せな日々を続ける」ための、12カ月のはなし。

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桃虚 神職/ライター

1970年インド(ムンバイ)生まれ、東京育ち。 ライター業を経て、大阪府枚方市の片埜神社にて神職歴20年。 「神社新報」で連載など。筆名の「虚(とうきょ)」の、「桃」は無邪気の象徴、「虚」は素直な心を表す

最新刊に『神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること』。

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