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変わるコンビニ、変わらない青のり

2025.06.17 公開 ポスト

寄生虫「さなだ虫」の生き様から、現代人が失ったものを見つめ直す。ブリーフ&トランクス伊藤多賀之(シンガーソングライター)

1ヶ月ぶりの、ブリーフ&トランクスの伊藤です!
今回はブリトラの記念すべきデビュー曲「さなだ虫」を掘り下げたいと思います。
今回の内容、まあまあグロいので、お食事中の方はご注意くださいね(笑)。

“そもそもサナダムシって知ってますか? お腹の中にいるんです”

 

今の時代、「サナダムシって何?」と思う方もいるでしょう。
ネットで検索すれば画像が出てくると思いますが、食事中はやめた方がいいです(笑)。
たまに魚に付いてる寄生虫「アニサキス」とかの、人間に寄生するバージョンの虫です。
昭和時代、「小腸にサナダムシがいる」と病院で言われたとか、
「お尻からサナダムシの頭がニョロっと出てきた」とか、
そういうことがよくあったみたいなんです。想像するだけで怖いですよね。

“まさか「さなだ虫」でデビューすることになるとは…”

そんなグロい生き物をタイトルにしたこの曲は1998年にリリース。
当時の人気ラジオ番組などでも取り上げられ、
全国的に「なんだこいつら!?」と話題になって有線などにもリクエストが殺到していたらしいです。
歌詞を一文字ずつ交互に歌うという変な手法を取り入れた曲なので、
ライブでは演奏がなかなか難しい曲ですが、27年経った今もずっと歌っています。

ブリーフ&トランクス「さなだ虫」

作詞・作曲:伊藤多賀之

君が食べたものを少し食べてる 僕はさなだ虫 ごはん ありがとう
誰かが履いてくれるのを待っている 僕はゾウリムシ 友達 ミカヅキモ
都会で高く売られてすぐに死ぬ 僕はカブトムシ メスは 持ちにくい
プリンのマネして食卓にたまにいる 僕は茶碗蒸し 銀杏 残される
さなだ虫 さなだ虫 さなだ虫… 2メートル
(「さなだ虫」歌詞引用)

タイトルは「さなだ虫」ですが、曲の中でサナダムシの事を歌っているのは意外と一瞬です。
ゾウリムシやカブトムシ、いろんなモノの目線になって見た時の風景を、
静かなアコースティックギター1本だけで淡々と歌っていましてね。
一般に言う「華々しいメジャーデビュー曲」としては、
明らかに派手さも何もない、カラオケでも絶対盛り上がらないような曲がデビュー曲になるなんて、
僕もスタッフも誰も想像していませんでした。
今や懐かしい8cmのシングルCDで、カラオケも入っていたんですけど、
静か〜なギター演奏だけが入っている、前代未聞のカラオケ音源となり、
スタッフ一同「こんなショボいカラオケ聴いたことないわ!笑」と爆笑した思い出。
「さなだ虫」を選んだ当時のレコード会社のプロデューサーのセンスと勇気には今でも脱帽しますね(笑)。

“「さなだ虫」誕生秘話”

この曲を作ったのは僕が20歳の頃、西暦1997年頃です。
僕は子供の頃から痩せ型で、何を食べても全く太らない体質で、それが悩みでもありました。
当時、身長182cmに対して、体重が52キロしかなく、
腕も細すぎて、病的で痛々しいからと、事務所から「半袖禁止令」が出ていた程です(笑)。
デビュー当時の写真を見ると、真夏でも常に長袖を着ているんですよね。
暑くてたまりませんでしたが、裏ではそんな事情があってのことでした。
ある日、お風呂上がりの鏡越しに、痩せている全裸の自分を見た時、
「あれ?もしかして僕、お腹にサナダムシいるんじゃないの?」とふと思いまして、
その瞬間「さなだ虫」の歌詞とメロディーを思いついて、この曲が生まれました。
実際、僕のお腹にはサナダムシはいなかったんですけど、
後に、小腸の病気である難病「クローン病」と診断され、
とんでもない闘病生活が待っていた…という話もありますが、
それはとても長くなりそうなので、またの機会に…ゆっくりと…
(…おっと、なんというタイミングか、
ちょうど6/21土曜14時から幻冬舎本社で「ブリトラおしゃべり集会2025」ってことで、
トークイベントが開催されるじゃないですか!その機会にお話するのもアリですね!)
そんなこんなで今は健康ですこぶる元気なのですが、
過去の痩せていた自分がいなかったら、「さなだ虫」が生まれることもなく、
デビューできていなかったかもしれませんので、
難病を患ったのも運命だったのかもしれません。いい意味で。

“現代人も見習うべき?サナダムシの生き様”

サナダムシは、人間に寄生する虫ということで、
歌詞にもあるように、彼らは人間の食べたものを食べて生きています。
ご主人様である人間に気づかれないように、夜な夜なこっそり食べているのでしょう。
「あ、今日は肉が多めだな、ラッキー」とか、
「うわ、今日はオレの嫌いなタマネギばっかりだな、でも我慢して食べるか」とか、
そんなことを思いながら、暗闇の中で、たった1人で生きている姿、
そしてどんどん成長して、体が長くなっていき、食べること以外の楽しみが全くない生き様、
そしてご主人様が死んでしまったら、一緒に死ぬしかない一心一体の生涯だなんて、
なんと切ないというか、ドラマがあるというか。
そんなことを想像すると、
僕はその存在がなんか可愛いなと思えるんです。
そこまでして必死に生きようとする姿に、
現代人が忘れけかている「ハングリー精神」があるような気がして、
なんか応援したくなる存在というか…。
現代人って、なんでも「めんどくさい」「無理だ」ってなるじゃないですか。
僕も含めてですけど、生まれながらに良い環境に恵まれ過ぎてて、
気合で何かを成し遂げようという精神が足りないような気もするのですが、
例えば、江戸時代なんて、東海道400キロくらいの距離を、
草履で何日も何日も歩いて、風呂も入らず、手紙1通だけとかを運んだりしてた訳ですよね。
そう考えると、サナダムシの生き様には、
現代人が失った「底力」みたいなものを無性に感じてしまいまして、
なんか愛おしいというか、飼いたくなるというか…
あれ? 僕頭おかしいですかね?
なかなか共感してもらえない価値観なのは承知していますので、どうぞドン引きしてください(笑)。

“ダイエット法として用いられたサナダムシの噂”

「飼う」といえばですけど、今僕は5歳のゴールデンレトリバーを飼っています。
犬は人間に懐きますので、
言葉は通じなくても心で会話ができているような気もしますし幸せなのですが、
実際にサナダムシを飼うとしたらどうすればいいのか。
毎日話しかけたら仲良くなれるのか。名前を呼んだらこっちを見てくれるのか。
金魚みたいに水槽で飼えるのか…。
いやいや、鑑賞するような生き物でもないし、
こちらから定期的にエサを与えるなんて、サナダムシの生き様と違うし、
やっぱり寄生状態にしないと本来の魅力が出ないと思いますね。
そうなると、やっぱり「お腹の中でこっそり暮らしてもらう」のが理想的となり、
それはそれで現実的ではないので諦めるしかありませんよね…
あ!!いや!ちょっと待ってください!!
実際に、お腹で飼っていると噂された人いました!
伝説のソプラノ歌手のマリア・カラスさん。
ダイエットのために、サナダムシの幼虫を飲んでお腹に入れたとか。
確かに、サナダムシに栄養を奪ってもらえば、
人間の体内に吸収されるカロリーも減って、ダイエットになりそう。
あくまで噂の、都市伝説のようですけど。
でも今、気になってネットで軽く調べましたら、
どこかの大学で「サナダムシダイエット」を研究してるという内容の記事もありましたので、
実際に有り得る話なのかもしれません。
サナダムシの存在は可愛いと言いましたが、自らの意思でお腹に入れるなんて、
もし僕なら、どんなにお金を積まれても断ると思います(笑)。
あと余談ですが、
ダイエットって、そんなに無理にしなくていいと僕は思ってまして。
食べたいものを食べたらいいじゃんって思想です。
実際に闘病で絶食生活を何度も経験したからか、
「太るからやめとこ」って食べたいものを我慢してる女性とかいると、
「食べたらいいのに〜!!」といつも心で叫んでいます。

“サナダムシに会える場所が目黒にある”

さてさて、ここまでグロい話にお付き合いいただき、
そろそろサナダムシに興味を持ってくれてる方もいるでしょう。
あ、いや、僕は決してサナダムシの存在を宣伝するつもりも、布教するつもりもないのですが、
実際、東京・目黒に、寄生虫館という博物館があって、
そこには本物のサナダムシの標本とかあるんです。
そこのは確か8メートルくらいあったような。
「サナダムシの曲を歌ってるんだから一度は見とかないと!」と、
デビュー当時、一緒にラジオ番組やってた仲間と見に行ったことがあります。
実際に行ったことある人から「麺類しばらく食べられなるよ、グロいよ」と言われてて、
相当な覚悟で行ったのですが、僕は全然大丈夫でした。
あえてその日の夜、僕はパスタ食べましたし(笑)。
そしてその博物館には、サナダムシに関するオリジナルグッズとかも売ってて、
お土産に「サナダムシTシャツ」を何枚か買って帰りまして。
それをイベントライブで出演者みんなで着て登場したことがありました。
すると後日、まさかの博物館から、レコード会社に1本の電話があったんです。
「ブリトラのおかげでサナダムシTシャツがすごく売れてます」と。
「ファンの方々が、すごい勢いでTシャツを買ってくれて在庫足りません」と…。
特に何の宣伝をしたわけでもないのですけど、
みんながサナダムシという存在を面白がってくれてる雰囲気がすごく嬉しかった記憶。
今もTシャツ売ってるのかな?
もし興味があれば、ぜひサナダムシの本物を見に行ってみてくださいね。
忘れかけていたサナダムシ的ハングリー精神が、蘇ってくるかもしれません。
そして帰り道には、ぜひブリトラの「さなだ虫」をBGMに(笑)。

*   *   *

初のトークイベント 開催決定!

テーマ

“ブリトラおしゃべり集会”

これまでの楽曲にまつわるエピソードやプライベートな話、創作の裏話、そしてファンからの質問コーナーまで──。
ライブとはひと味違う、しゃべりメインの90分をたっぷりお楽しみください。

日時/場所

2025年6月21日(土)
13:30集合 / 14:00スタート(15:30終了予定)

幻冬舎本社 本館(1号館)イベントスペース

東京都渋谷区千駄ヶ谷4-9-7
(東京メトロ副都心線「北参道」から徒歩1分
 またはJR・都営地下鉄線「代々木」から徒歩7分)

チケット種別

  • 会場参加チケット 2,500円
  • オンライン参加チケット 1,500円 ※Peatixでの購入は1,700円

【購入はこちら】
https://www.gentosha.jp/article/27323/

 

◆最新ライブ情報

「ブリトライトウエキサイトナイト」
“牛の内臓スペシャル2001~2011+α”

 

 

 

 

 

【日時】2025年7月19日(土)

【場所】SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

【チケット】

・指定席:¥6,600(税込・ドリンク代別)

・VIP指定席(前方5列以内・メモリアルプレゼント付き):¥8,800(税込・ドリンク代別)

【チケット一般発売(先着)】
https://tiget.net/events/394997

 

◆リリース&ライブ情報

アルバム「ブリトラリニューアルビッグミニ」(2024年9月)

ライブ「ブリトラ完全リニューアル祭り2024」(2024年9月)

ライブ「ブリトラハモり極み祭り2025」“黄金スペシャル2012~2022+α”(2025年5月)

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変わるコンビニ、変わらない青のり

新生ブリーフ&トランクスとして再始動した伊藤多賀之が

自身の楽曲や歌詞を手がかりに、“あの頃”と“いま”の違い、そして変わらずそこにあり続ける日常の断片を綴ります。

「青のり」「コンビニ」など、ブリトラ楽曲に登場した身近な風景を見つめつつ、

移ろいゆく時代の中でも変わらない“青のり”的な何かを探しながら、

「半径5メートル以内の日常生活」を描き出していくエッセイ連載です。

バックナンバー

ブリーフ&トランクス伊藤多賀之 シンガーソングライター

1976年生まれ/静岡県伊東市出身

作詞作曲編曲&ボーカル&ギター係

楽曲テーマは「半径5メートル以内の日常生活」

 

1998年ブリーフ&トランクス(main Vo)として、シングル「さなだ虫」でメジャーデビュー

「青のり」「コンビニ」「石焼イモ」「ペチャパイ」など多くのヒット作をリリース

現在はソロ活動の新生ブリーフ&トランクスとして精力的に活動中

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