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葬式は、要らない

2025.06.29 公開 ポスト

「宇宙葬」でも葬式費用は大幅節約に! お墓も不要の「無宗教葬儀」が流行っている理由島田裕巳(作家、宗教学者)

葬式に200万円――そのお金、本当に「必要な弔い」のために使われていますか?

宗教学者・島田裕巳さんが日本人の死生観や葬儀の歴史をたどりつつ、葬式の「常識」を根本から問い直すベストセラー『葬式は、要らない』より、一部を抜粋してお届けします。

樹木葬・宇宙葬・手元供養

一般の家庭では日頃、読経や題目をあげる習慣がないため、自前で仏教式の葬式をあげることはできない。

そのとき選択肢として浮上するのが最近徐々に増えつつある無宗教式の葬式である。特定の寺と壇家関係を結んでいなければ、僧侶を呼ぶ必要もないわけで、戒名料や布施に意義を見出せない人たちが無宗教式を選択している。

どのような形式を選択するにしても、最後は、火葬した遺骨をどこに埋葬するのかが問題になり、そこに墓の選択といった事柄が生じてくる。

その点で、最近では、従来の形式の墓を建てないという選択肢も生まれている。散骨もその一つだが、他に「樹木葬」や「宇宙葬」「手元供養」といったやり方をとる場合も出てきている。

樹木葬では、墓石を建てる代わりに植樹し、その下に遺骨を埋葬する。一般の墓地は、霊園として開発され墓石が林立することで自然を損なうことになるが、樹木葬なら、霊園は樹木に覆われる。その点では近年のエコ志向に合致している。

宇宙葬は、カプセルに入れた遺骨を人工衛星に乗せて宇宙に打ち上げるものである。なかには月に送られた例もある。対象が海や山から宇宙に変わっただけで、散骨の一種としてとらえることもできる。

手元供養は「自宅供養」とも呼ばれ、遺骨を墓に埋葬せず、手近なところに置いて供養するものである。遺骨は、納骨容器やペンダントにおさめるのが一般的だが、プレートや人工のダイヤモンドなどに加工することもある。

ペンダントやダイヤモンドなら、普段から身につけていることも可能で、故人に対して強い思いを抱き、亡くなってもずっと寄り添っていたいと願う人々には歓迎されている。

宇宙葬ですら100万円しかかからない

重要なのは、新しい葬式のやり方をとった場合、費用がそれほどかからない点である。直葬の費用は多くても30万円ほどで、僧侶に読経を頼んでも50万円以内でできる。もっとも簡素な形式を選んで、近親者だけが集い、会食もしなければ10万円程度で済む。

これは現在(編集部注:2013年当時)の平均の葬儀費用231万円に比べて格段に安い。少額でできるということは、これまでの葬式がいかに贅沢であったかを示している。

家族葬も、会葬者を呼ぶ場合よりはるかに安く済む。会葬者がいないのだから、香典返しの面倒もなければ、形だけの飲食の提供も必要ない。

散骨や樹木葬なら墓に金はかからない。葬儀費用の平均231万円に墓の費用は含まれない。人を葬る上で、節約しようと思えばいくらでもその余地がある

宇宙葬の費用は100万円である。決して安くはない。ロケットを使って宇宙に打ち上げるのだから、かなりの大事である。それでも一般の葬儀費用と比較するなら、はるかに安い。100万円で葬式を出すとすると、今の標準からすれば、かなり質素なものになる。それからすると、宇宙葬でさえ決して贅沢とは言えないのである。

要するに、私たちの生活が変わり、それにつれて死に方も大きく変わりつつあるのだ。

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この続きは幻冬舎新書『葬式は、要らない』でお楽しみください。

関連書籍

島田裕巳『葬式は、要らない』

日本人の葬儀費用は平均231万円。これはイギリスの12万円、韓国の37万円と比較して格段に高い。浪費の国アメリカでさえ44万円だ。実際、欧米の映画等で見る葬式はシンプルで、金をかけているように見えない。対して我が国といえば巨大な祭壇、生花そして高額の戒名だが、いつからかくも豪華になったのか。どんな意味があるのか。古代から現代に至る葬儀様式に鑑みて日本人の死生観の変遷をたどりつつ、いま激しく変わる最新事情から、葬式無用の効用までを考察。葬式に金をかけられない時代の画期的な1冊。

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葬式は、要らない

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島田裕巳 作家、宗教学者

1953年東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任。主な著作に『日本の10大新宗教』『平成宗教20年史』『葬式は、要らない』『戒名は、自分で決める』『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』『なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか』『靖国神社』『八紘一宇』『もう親を捨てるしかない』『葬式格差』『二十二社』(すべて幻冬舎新書)、『世界はこのままイスラーム化するのか』(中田考氏との共著、幻冬舎新書)等がある。

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