
主役二人のイチャイチャも良いけど……
過ちを犯した人間は二度と笑ってはいけないのか?
被害に遭った人間は常に悲しそうな顔でなければいけないのか?
凄惨な事件の解決に動いている人間達は恋人との甘い時間を過ごしてはいけないのか?
決してそんなことはない。
過ちを償う中で、ふと笑みを浮かべる瞬間もあるだろう。
悲しい過去を背負いながらも、未来への希望に満ちた表情を浮かべるだろう。
新たな事件の被害者が出ている中でも、恋人との時間は甘いひと時となるだろう。
……そう、全然良いのだけれど。4話終盤、浩暉(志尊淳)におんぶされた万琴(岸井ゆきの)の“好き好き責め”には流石に「5つめの事件の被害者が出ている可能性高いぜ? イチャついてる場合か?」と思わず突っ込まざるを得なかった。
主人公の二人よりも私の方が事件解決に必死なのかもしれない。
待っていろ、真犯人。
(↓1話~3話 伏線描写まとめ動画)
そんな浩暉と万琴の戯れも相変わらず存分に楽しめた第4話。
開幕早々、万琴の部屋のシーンでは誰もが一度は経験したであろう恋人同士のリアルな戯れ。
彼への愛情が溢れすぎている岸井ゆきの氏の演技と、彼女からの愛情とは少し温度差を感じる、絶妙なあしらい加減を醸し出す志尊淳氏の演技が光っていた。
あの浩暉の様子に「顔以外は俺もあんな感じだな」と感じた男性視聴者も少なくないだろう。ミステリーパートは勿論、本格恋愛ドラマとしての側面も見事に両立させているこのドラマの強みを感じた一幕だ。
そんな本格恋愛ドラマには欠かせない恋の当て馬枠も、このドラマでは最高の働きをしている。
白洲迅氏演じる刑事、小峰正聖だ。
彼がこの恋の物語における当て馬枠だろう。
当て馬というのは、ドラマや漫画などの恋愛作品において、“主人公の気持ちを揺るがせる本命以外の相手”を指す。
決して蔑んでいるわけではない。正聖が万琴の気持ちを一切揺るがしてない現在、ピンとこない人はドラマ「花より男子」の花沢類(小栗旬)を思い出していただきたい。
そんな本作の愛すべき当て馬、小峰正聖が第4話では出走する音がした。
これまでの連載では浩暉と万琴の恋愛にフォーカスしてきたが、今回はどこか応援したくなる正聖の気持ちに寄り添っていきたい。
殺人の容疑者にも敵わない……悲しき当て馬
言うまでもなく万琴に想いを寄せる正聖。その恋心は高校時代から募らせ、大人になった現在も消えないでいる。
わかる……わかるよ、正聖。
友人関係が壊れてしまうのが怖くて、なかなか気持ちを伝えられなかったんだよな。
気持ちを伝えてしまえば、以前のような関係には戻れないかもしれない。関係が崩れるくらいなら、いっそこの気持ちを押し殺してでも側にいることを選ぶ……そんな思いで過ごしてきたのではなかろうか。
そんな正聖には、あの秋元康先生が作詞し、お笑い芸人のネプチューンが歌う「イッショウケンメイ」という曲を送りたい。遠くから見ている恋なら諦められるのに、恋した相手が側にいることに葛藤する儚い恋心を歌った曲。私も何度この曲を聴き、社会人時代に好きになった同期を思って泣いたことだろう……。
気になる人はぜひ聴いて欲しい。
しかし、奇しくもこの連続殺人事件がその止まっていた正聖の一歩を踏み出させた。
5月5日、新たな殺人事件が起こるとされる現場付近で張り込みをしていた万琴。そんな万琴の前に、刃物を持った人物が現れた。その刃物使いの奇襲に、意外にもその腕力で交戦する万琴。
その腕力はどこから……?
何回か攻撃を防ぐ万琴だったが右肩を切られてしまう。
あの場で殺されていてもおかしくない、とても危険な状況であった。
負傷した万琴の肩を抱いた恋人の浩暉と救急車に向かって歩く中、パトカーで駆けつけた正聖は浩暉に構わず万琴を抱きしめた。恋人が隣にいる中でのハグ。
隣に浩暉がいるとか、そんな細かいことを考える隙もないくらいに正聖は万琴を心配していた。
愛しいから、生きていてよかったからハグをする。打算的な部分は一切なく、直感的な行動に思えた。
そして万琴を失う恐怖を感じたこの一件が、正聖の万琴への気持ちをより強いものにし、その後の告白未遂へと繋がったのではないか。
浩暉は事件現場に残された足跡のものと同じ靴を履いている。
以前は現場付近の防犯カメラにも映っていたし、過去の殺人事件との繋がりも。
そんな危ないやつを愛しい万琴の横には置いていられない。私でも「その男やめておきな!」って絶対に言う。絶対に。
それくらいにドラマの中では浩暉=真犯人の状況。しかも万琴が危険な目にも遭った。
“万琴は側で俺が守る”との気持ちになったのか、長年募らせた思いをその拳の中に握り、正聖は万琴への気持ちを口にする。
正聖「俺、お前のこと……」
万琴「浩暉は誰よりも優しい人だよ」
言わせてあげて。
せめて告白はさせてあげてよ万琴。あんなに被せなくても。
ここは気心知れた相手からまさかの気持ちを伝えられて、「えっ……ずっと友達だと思ってたのに……意識しちゃうんだけど///」となってこそ、浩暉と正聖の恋のバトルは白熱するのではないのか。
ここまで殺人犯チェックメイトな浩暉を前に、真面目に働いて良い男な正聖が為す術もない異常事態。
今後、劇中で実は浩暉が殺人犯ではないという流れになっていくのは明白だろう。
そうなると万琴の中での浩暉に対する靄も晴れ、万琴は余計に“浩暉LOVE”になる。(勿論、今でも万琴は浩暉のことを信じているようだが)
正聖の出る幕はもうないのだろうか。せっかく当て馬っぽい行動をやり出したのに……。
正聖は花沢類になれないのか……。
前回の記事で述べた浩暉が当てはまるモテ男の条件、ギャップに関しても「元のイメージが悪いのに実は……」という悪い方から良い方へのギャップであった。いわば加点式である。
正聖に関しては、元が良すぎるため何か悪い面が見えたら“ただ悪い面が露呈しただけの人”になってしまう。減点式である。
「ギャップを使えば正聖も……!」と思った途端にギャップの頂にいる浩暉とはスタート地点が違うことに気づいた。すまん、正聖。
一晩では正聖がここからまくれる状況を思いつくことはできなかった。
それこそ浩暉が真犯人として逮捕されれば話は別だが、それでも万琴は浩暉を待つかもしれない。
正聖は詰んでいるのか……?
ぜひ読者の皆様には正聖がこの恋に介入できる方法を考えていただきたい。
私は正聖と万琴がくっついてほしいとは思っていないのだ。
せめて当て馬としてその馬力を発揮してほしいと思っているだけなのだ。
でもこの恋にもじもじし続けて終わる正聖も、それはそれで可愛らしいのかもしれない。
史上初!? 謎の男が実行犯の可能性
まさかの正聖スペシャル回となってしまった今回の連載だが、第4話は考察も大きく進展した。
浩暉がコインロッカーから血のついた服を引っ張り出し、警察に対しては「普通ってなんですか?」「普通は殺人犯の息子じゃない」と言って、不適な笑みを浮かべる……。
まさか浩暉は本当に殺人に関与しているのか?
主人公が殺人に関わっているはずがないという常識をいよいよ崩しかねない展開になってきた。そして相変わらず浩暉の父:貫路(萩原聖人)は謎の男すぎる風貌でうろうろし続けている。
「普通の服でいた方が怪しまれないよ!」と誰か伝えてあげてほしい。しかしそんな貫路と浩暉が手を組んで現在の殺人を行っている可能性もあると思えてきた。
浩暉の母親が殺害された事件の真犯人が実は貫路ではなく、その真犯人を炙り出すために二人が手を組んで連続殺人を繰り返しているとしたら……。
母親が殺害された事件と同じような殺害方法、そして“ホルスの目”という注目される形で事件を起こすことで当時の真犯人を刺激し、母親を殺した本当の犯人を表に出そうとしている可能性も私は考えている。
「謎の男として登場した人物は大抵事件には関わっていない、少なくとも真犯人ではない」ことが考察ドラマの常識としてある。
しかしこの「恋は闇」は、恋愛とミステリーのバランスも含めていつもの考察ドラマとは一線を画す作品だ。
今までの常識は通用しないのかもしれない。
浩暉も“普通”と言う言葉に違和感を覚えていたように、普通ではない展開を考えるのもワクワクする。
著者:ケメ・ロジェ
ドラマイラスト:サク
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3人組ドラマ考察系YouTuber 6969b(ろくろっくび)による考察記事の連載がスタート!
今話題のドラマの真犯人は?黒幕は?このシーンの意味は?
物語を深堀りして、噛むようにじっくり味わっていきます。