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特集:沖田×華『蜃気楼家族』 special対談

2019.07.20 更新 ツイート

合わないものは合わない

【家族が苦しい】家族も縁を切ったっていい、よね?〔再掲〕沖田×華/荻上チキ

「小説幻冬」で「父よ、あなたは…」を好評連載中の沖田×華さん。ここで話されているお父上の強烈エピソードは『蜃気楼家族(1〜6巻)』でたっぷり楽しめます。もしかしたら、もっと“深刻”に語られることかもしれない話が、沖田さんのマンガでは「笑い」時々「しんみり」のジェットコースターで、強くたくましく進化。こちらの対談も、どこか肩の荷をおろせるようなものでした。

*   *   *

(構成:幻冬舎plus編集部 撮影:植一浩)

 

“家族だから”に縛られない

沖田 「蜃気楼家族」を描き始めた当初は、まったく人のことを考えずに描いていたんです。いろいろこと細かに描いたほうがウケるかな、と考えていたくらい。親は親だし、家族はもうバラバラなんだから、好き勝手なこと描いても誰も傷つかないと思って、そのまま描いてたんです。

 まあ、私は私なりに親を大事にしてると思っているんですけど、ああいう漫画を勝手に出したとか、そういうことを含めて、娘としての評価は最悪ですね(笑)。魚津市民の一人としても最悪。まったくの欠陥人間でダメダメです。

 ただ今は、だいぶ状況が変わりまして。たとえば、弟も結婚して子どもが生まれて、家族を作り始めた。私たちが家族を作る側になったんです。そうしたら、やっぱり変わってくるんですね。とくに弟は、こいつこんなにまともだったっけと思うくらい。今、家族の中で弟が一番まともになってる。

荻上 環境は人を変えると。

沖田 そうそう、変えるなあというのがあって。自分も常に変化していってますが……。親父ははっきり言って、まるっきり変わってないですね。しかもさらにパワーアップしてる(笑)。近づけないですね。 

 

話題の男、沖田隆。(『蜃気楼家族1』第1話「中華屋の娘」より)


沖田 いろいろ仕事をいただくようになった中に、以前、ノンフィクション系のテレビのお話がきたことがあったんです。全体に暗い筋書きで。さらに、親父と私を会せよう、会せよう、とするから断りました。

荻上 うわ、何考えてんのかな。

沖田 何のために私が東京に出てきたと思ってるんですか、と。ここまで距離が離れてないとうちはダメなんですよ、と。
 

荻上 和解すると思ってるのかな。

沖田 和解するわけない(笑)。話してわかるような親じゃないんです。そんなだったらとっくの昔に仲良くなってます。

荻上 テレビとしては、「感動の和解!」みたいなのを撮りたかったんでしょうね。

沖田 ありえん、ありえん。ドラマじゃないから、そんな都合のいいこと。

荻上 アホすぎる筋書きですね(笑)。

沖田 そうですね。でも本当に、娘への執着が半端なくて、父親のほうが会いたいと言ってくる。もう諦めてほしい。会いたいだけじゃ絶対済まないし。酒が進めばやっぱり手とか出る(笑)。もうそれが見えちゃってるから、やめましょうと。

荻上 絶対会わないほうがいい組み合わせというのがあるわけですよ、この世の中には。「DVする親」を、「破天荒」とか「やんちゃ」とかで済ませるのもいかん。

『未来をつくる権利 社会問題を読み解く6つの講義』荻上チキ著(NHK出版)誰もがよりよく生きるためには、どのような社会を目指すべきか? その旗印になるのが「権利」だ。「縁を切る権利」「身体拡張する権利」「社会と接続する権利」など、未来の「権利」を考える異色の「社会問題」入門講座開講!

――荻上さんが出された『未来をつくる権利』というエッセイの最初にあげられている項目は、「縁を切る権利――暴力から身を守る」ですよね。

沖田 アハハハ(笑)

荻上 いやほんとに。×華さん、暴力とつながりすぎているところがあるから。

沖田 そういえば、『蜃気楼家族』を描いていることが親父にバレたのが、2年ぐらい前だったんです。そのとき、東京に来るとか言い出して、「もし親父がダンプで幻冬舎に突っ込んできたらどうしますか」「『娘を出せ』とか言い出したらすごいですよね」と担当編集のSさんと盛り上がって、「でも、本が売れるかもしれない」とか(笑)。結局、来てませんけど。

荻上 間違いなく新聞に載りますよね。「漫画家の沖田×華さん(本名○○、35歳)が都内で云々」。

沖田 父親がダンプで幻冬舎に突っ込む(笑)。

荻上 家族だから合うという幻想は早く捨てていただきたいですね(笑)。

沖田 合わないものは合わないよって(笑)。

荻上 10年、20年嫌な目に遭い続けて、今になって和解してお涙頂戴なんて、まあ無理ですよ。無理なものは無理。「家族だからそういうことも思っちゃいけないのかな」などと思う必要もない。「生活保護をもらう前に、家族に頼ったらいいじゃないか」と簡単に言う職員とか、そりゃ公務員の窓口で働ける人は、さぞいい教育を受けたのだろうけど、じゃあ、1回その家族と代わってみろと(笑)。

 家族の絆といった言葉を云々したところで、どうしても一緒にいられない、いたくない相手というのは存在する。そのことをもっと認めてほしいと思いますね。

(最終回へ続く)

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沖田×華 漫画家

1979年、富山県魚津市生まれ。作品は10年間の連載を経て完結した『蜃気楼家族』(全6巻、小社)の他、累計400万部の大ベストセラーとなり、2018年NHKでドラマ化された『透明なゆりかご』(現在7巻まで、講談社)、「やらかし」シリーズ(最新刊は『こんなに毎日やらかしてます。』ぶんか社)、『お別れホスピタル』(現在は1巻、小学館)などがある。2018年『透明なゆりかご』で第42回講談社漫画賞(少女部門)を受賞。2018年12月末発売の小説幻冬から新連載「父よ、あなたは…」が始まる(幻冬舎plusでも順次、公開予定)。

荻上チキ 評論家・編集者

1981年生まれ。評論家・編集者。「シノドス」編集長。政治・経済から社会・風俗、文化・思想まで、幅広い領域で現代の問題と向き合い、取材・評論活動を展開する。著書に、『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』(幻冬舎新書)、『彼女たちの売春』(扶桑社)、『セックスメディア30年史』(ちくま新書)、『社会的な身体』(講談社現代新書)ほか。編著に『経済成長って何で必要なんだろう?』(光文社SYNODOS READINGS)ほか。TBSラジオ「Session-22」のメインパーソナリティーを務めるなど、多メディアで活躍する。

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