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心が疲れたらお粥を食べなさい

2020.03.06 公開 ポスト

第3回

【体と心を整える】身体を整えてくれるお粥のありがたい力。【再掲】吉村昇洋

粥には十の功徳がある――。風邪を引いたり胃腸が弱ったとき、お粥を口にすることは多いかもしれませんが、その効用をあらためて聞くと、体にも良く作用しそう。

永平寺で修行をつみ、現在、広島の禅寺で副住職を務め、精進料理のブログ「禅僧の台所」も人気の吉村昇洋さんの著作『心が疲れたらお粥を食べなさい』から、一部を抜粋してお届けします。何かとざわつく今の時期、禅的食生活は参考になるかもしれません。

お粥の10の良いこと

 私が永平寺で修行していた2年2ヶ月の間、毎朝の食事で出てきたお粥ですが、永平寺では、「お粥」ではなく、「粥」もしくは「浄粥」と呼ばれています。曹洞宗の宗祖である道元禅師(1200~1253)は、僧堂に赴いて朝食の粥や昼食のご飯をいただく作法を『赴粥飯法』という著書に示しており、ここでも象徴的に粥の文字がタイトルに使用されるほど、当時から粥の存在は大きかったとみえます。

 しかし、仏教では本来、正午前までにとる一日一食が原則であったものの、粥をはじめとする軽めの食事をとったり、空腹を和らげるために温めた石を懐に抱いたりすることもあったようで、禅寺では前者を少しの食事という意味で小食、後者を空腹感が楽になる薬の石という意味で薬石(夕食)と呼ぶようになりました。ちなみに、朝は必ず粥であることから、転じて朝食のことを小食もしくは粥と呼ぶようになり、また温めた石のエピソードは“懐石料理”の語源としても知られています。

 ここで簡単に粥に関してまとめておくと、古来の仏教では正式な食事は斎時(正午前)に食べる昼食(禅寺では中食という)のみで、あとの小食、薬石は正式な食事とはされませんでしたが、いつしか二粥一斎といって朝・夕に粥を食べたり、三度粥といって朝・昼・夕の三食とも粥を食べたりと、さまざまなバリエーションが見られるようになりました。

 また、この粥についても文献を見渡すと、普通の白粥の他に、野菜を一緒に煮込んだ瓔珞粥、小豆を一緒に煮込んだ小豆粥、五穀を煮込んだ五味粥、お茶で煮込んだ茶粥などの記述が見られ、私が永平寺で修行していたときには、さつまいもの入った芋粥、トウモロコシの入ったコーン粥、正月を過ぎて余った餅を入れた餅粥など、炭水化物に炭水化物を合わせるという荒技をやってのけた粥が特に印象に残っています。

 ところで、この『赴粥飯法』では、禅宗の寺院における食事作法の根本意義をはじめ、実際の作法について事細かに順を追って説明がなされていますが、実はこの粥について面白い記述が見られるのです。

 それは、

 粥有十利……粥には十の功徳がある

 というもの。この粥有十利という考え方は、道元禅師自身が『摩訶僧祇律』という仏典から引用していて、具体的には次に挙げる10項目を指しています。

 一、【色】体の血つやが良くなり
 二、【力】気力を増し
 三、【寿】長命となり
 四、【楽】食べ過ぎとならず体が安楽になり
 五、【詞清辯】言葉は清く爽やかになり
 六、【宿食除】前に食べたものが残らず胸やけもせず
 七、【風除】風邪を引かず
 八、【飢消】消化よく栄養となって飢えを消し
 九、【渇消】のどの渇きを止め
 十、【大小便調適】便通も良い

 このように仏の教えの中で粥のことが細かく述べられているというのも、何だか不思議なものです。それだけ粥を食べることは、仏教者にとって重要な行為だということなのでしょう。そんな粥を永平寺の修行僧が毎朝必ず食べるのは、粥のありがたい力によって生かしていただき、身体を整え、その生命の上で仏道修行を無事に励むことを願ってのことなのです。

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吉村昇洋

1977年3月広島県生まれ。曹洞宗八屋山普門寺副住職、臨床心理士、相愛大学非常勤講師。駒澤大学大学院人文科学研究科仏教学専攻修士課程修了(仏教学修士)。広島国際大学大学院総合人間科学研究科実践臨床心理学専攻専門職学位課程修了(臨床心理修士)。 曹洞宗大本山永平寺にて2年2ヶ月間の修行生活を送り、乞暇後、永平寺史料全書編纂室を経て、広島の自坊に戻る。 2005年11月より、虚空山彼岸寺にて精進料理のコンテンツ【禅僧の台所 ~オトナの精進料理~】を展開し、人気を博す。“食”を通して日常に活かせる禅仏教を伝えるほか、大学やカルチャーセンター、各種イベントにて講師も務める。 著書に『心が疲れたらお粥を食べなさい』(幻冬舎)、『気にしなければ、ラクになる』(幻冬舎エデュケーション)、『週末禅僧ごはん』(主婦と生活社)などがある。

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